第29回党大会への中央委員会報告
2024年1月15日 幹部会副委員長 田村智子
代議員、評議員のみなさん、こんにちは。全国でインターネット中継をご視聴のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。
中央委員会を代表して、第29回党大会にたいする報告を行います。
冒頭、能登半島地震で亡くなられた方々への哀悼の意を表し、被災された方々へ心よりお見舞い申し上げるとともに、被災された方々への支援活動、被災地の復旧・復興へと全力をつくす決意を表明するものです。
大会決議案は、2カ月間の全党討論で、全体としてきわめて積極的に受け止められ、深められました。大会決議案が力となって、党勢拡大に足を踏み出す支部・党員が広がり、「党勢拡大・世代的継承の大運動」の推進力となったことは大変うれしいことです。
中央委員会報告は、決議案の章ごとに、①全党討論をふまえてさらに解明が必要と思われる問題、②決議案発表後の情勢の進展をふまえて解明が求められる問題、③「党勢拡大大運動」の到達点をふまえて28大会期の党建設の到達点と評価、教訓を明らかにし、29大会期の党建設の目標と方針の提案――この3点にしぼって行います。
討論で寄せられた修正・補強意見については、大会の討論での意見もふまえて、一つひとつを吟味し、大会討論が終わった時点で、修正・補強した決議案を提出することとします。
「第1章 国際情勢と改定綱領の生命力」について
大会決議案が国際情勢から始まることが歓迎され、勇気と希望を広げている
まず決議案第1章についてです。全党討論では、決議案が国際情勢から始まることが歓迎されています。改定綱領の立場で、世界の本流と逆流を大局的にとらえることで、「ニュースを見て暗い気持ちになっていたが希望が見えた」「勇気がわいた」という意見が、多数寄せられています。
この間、ロシアによるウクライナ侵略戦争、イスラエルのガザ攻撃などの平和への大逆流がおこり、世界は暗闇のように見えるかもしれません。しかし、どちらの問題でも、国連憲章と国際法を守れという声が、国際社会の圧倒的多数となって広がり、そこには、20世紀に植民地支配を打ち破って独立した多くの国ぐにの力が発揮されています。また、核兵器禁止条約の第2回締約国会議の成功、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした対話による平和の地域協力の流れの発展など、大逆流とのせめぎあいのなかで、世界の本流が力強く発展しています。これらが第1章の討論で確信となり、私たちが「核兵器廃絶」「戦争反対」「ジェノサイドを許すな」と声をあげることが、戦争を終わらせ平和の世界をつくる道だと、希望と勇気が広がっているのです。
また、世界の動きを大局的にとらえることで、世界の本流に逆らう自民党政治のゆきづまりがいっそう浮き彫りになり、日本共産党のたたかいが、世界の本流を前に進めることに貢献するものだという確信が広がっています。
イスラエルによるガザ攻撃について――人道的停戦を求めた国連決議の意義
決議案発表後の情勢として、イスラエルによるガザ攻撃について述べます。
12月12日、国連総会は、国連加盟国の8割にあたる153カ国の賛成で、即時の人道的停戦を求める決議を採択しました。10月29日の人道的休戦を求める決議に棄権した日本も賛成へと態度を変えました。ガザの人道的惨状に対して「国連憲章と国際法を守れ」という理性の声は国際社会の圧倒的多数となり、イスラエルへの厳しい批判、イスラエルを支援するアメリカの国際的孤立が際立っています。
この3カ月でガザ地区では、約2万4000人が犠牲となりました。その7割は子どもと女性であり、子どもたちが「病気、栄養失調、戦闘という三重の死の脅威に直面」しているとユニセフ(国連児童基金)は警鐘乱打しています。イスラエルのネタニヤフ首相は、今年いっぱい攻撃を継続すると宣言し、ガザ地区に住むパレスチナ人を他国に「移住」させる――つまりは追放するという、さらなる国際法違反に突き進もうとしています。わが党は、ハマスの無差別攻撃に厳しく反対しますが、それを理由に無辜(むこ)の市民を大規模に殺害する戦争犯罪を行うことは、絶対に許されるものではありません。一刻も早い停戦を強く求めるものです。
日本共産党は、11月6日、声明「ガザでのジェノサイドを許すな――ガザ攻撃中止と即時停戦に向けての各国政府への要請」を各国大使館と国際機関に送付し、アメリカ、パレスチナ、イスラエルなどに申し入れを行いました。国会論戦でも、イスラエルの戦争犯罪を非難し、停戦を求めよと日本政府に繰り返し迫りました。また各地で、「ストップ・ジェノサイド」の宣伝行動や、市民の自発的なデモに参加するなど、「即時停戦」を求める流れの発展に貢献してきました。
ガザの市民は危機的状況にあり、「即時停戦」を求める世論と運動をさらに広げることをよびかけます。この問題の根本は、イスラエルの武力によるパレスチナ占領と抑圧にあり、決議案に明記した「中東問題解決の三つの原則」が打開の方向です。このことを大いに広げ、国際的な中東和平を求める運動に連帯しようではありませんか。
改定綱領の生命力について①――逆流をどうとらえるか
「どんな国であれ覇権主義は許さない」と普遍的な規定にした意義
ウクライナ侵略、ガザ攻撃という二つの大問題に対して、日本共産党は「どんな国であれ覇権主義は許さない」「国連憲章を守れ」という一貫した立場で対応してきました。アメリカや日本が、ロシアの侵略を国際法違反として非難するが、イスラエルによる攻撃を非難しないという「ダブルスタンダード」(二重基準)をとるもとで、こうした対応ができた根本には、改定綱領の世界論があります。
4年前の大会で行った綱領の一部改定では、それまでの「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択」が問われているという規定を、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、独立と主権を侵害する覇権主義的な国際秩序かの選択」が問われていると、より普遍的な規定へと発展させました。そして、「どんな国であれ覇権主義的な干渉、戦争、抑圧、支配を許さず」と明記しました。
この一部改定によって、私たちは世界を「二つの陣営」「二つの体制」という枠にあてはめてとらえる議論を全面的に清算し、「人民のたたかいが歴史をつくる」という科学的社会主義の世界観に立って、一切の図式主義を排し、世界をありのままにリアリズムでとらえる確固とした世界論を手にすることができたのです。この世界論が、世界の危機にさいして確かな羅針盤となっていることを強調したいと思います。
アメリカを「複眼でとらえる」――軍事的覇権主義とASEANへの関与
次にアメリカをどうみるかです。決議案は、アメリカの覇権主義の危険性について、ユーラシア大陸の東西で、軍事ブロック強化を進めていることを指摘しています。アメリカは、中国を「唯一の競争相手」として位置づけ、アジア・太平洋地域では、日米、米韓、米豪という軍事同盟を強化し、アメリカ中心の2国間・多国間の取り決めに各国を取り込もうとしています。同時に、国際的課題に対処するうえでASEANとの連携を求め、平和と協力の関係をインド・太平洋に広げる「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)への支持を表明しています。
ASEANは、域外の大国の関与を歓迎しつつ、大国間の対立のどちらの側にもくみすることなく、ASEANの中心性――自主独立と団結を重視する立場を貫いています。ASEANは、アメリカの側に立って中国を排除することをしないし、中国の側に立ってアメリカを排除することもしない。排除の論理でなく包摂の論理を貫く、これがASEANの立場です。
こうしてアメリカは、軍事的覇権主義という排除の論理を振りかざしながら、包摂の論理を貫くASEANへの協力を求めざるをえないという、二面的な対応をしているのです。アメリカがこうした対応をせざるをえない根底には、世界の力関係の前むきの変化、政治的・外交的・経済的に台頭するASEANの力が働いていることを指摘したいと思います。
改定綱領は、アメリカを帝国主義と規定し、「他国にたいする先制攻撃戦略」をもち、「地球的規模で軍事基地をはりめぐら」し、「世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威」となっていることを明記しています。同時に、「世界の構造変化のもとで、アメリカの行動に、国際問題を外交交渉によって解決するという側面が現われていることは、注目すべき」と述べています。アメリカの動向をこのように「複眼でとらえる」ことは、世界の逆流と本流のせめぎあいをリアルかつ正確にとらえるうえでも重要です。
改定綱領の生命力について②――世界の本流がさらに発展している
核兵器禁止条約、第2回締約国会議の大きな成果
改定綱領に照らして世界の大局を見るならば、平和を求める世界の本流が力強く発展・成長していることが明らかになります。
核兵器禁止条約は、署名93カ国、締約国は69カ国に広がり、2023年11月から12月にかけて第2回締約国会議が行われました。
この会議で、「核抑止力」論を乗り越えようという議論がさらに進んだことは大きな成果です。採択された政治宣言では、核兵器が「平和と安全を守るどころか、強制、脅迫、緊張の高まりにつながる政策手段」となっていると痛烈に批判しています。そして次回会議までに、「核抑止力」論からの脱却を訴える報告書を作成すると決定しました。また、被害者支援、環境修復についての計画をつくり、実行することを締約国に義務づけ、そのための国際協力を進めることを確認しました。大会決議案が指摘した「核兵器禁止条約の実効性・規範力」が、さらに力強く示されています。
オブザーバー参加は35カ国となり、アメリカの同盟国であるドイツ、ノルウェー、ベルギー、オーストラリアも出席しました。ドイツは、立場は異なるとしつつも「核兵器のない安全な世界に進む方法に関する議論に関わっていきたい」と発言し、ノルウェーは「建設的な対話を追求する」と表明し、参加国から歓迎されました。
一方で、日本政府は、アメリカの核抑止が必要という立場に固執し、オブザーバー参加さえも拒否しました。会議では、「日本がいないのはおかしい。不思議な国」などの発言が相次ぎました。岸田首相が「核兵器国と非核兵器国の橋渡し」と言いながら、対話や議論さえ拒否したことは、戦争被爆国として、あまりにも道理のない恥ずべき態度だと言わなければなりません。
日本共産党は、代表を派遣し会議の成功に貢献しました。2025年3月の次回締約国会議に向けて、日本政府が「核抑止力」という呪縛を断ち切り、一刻も早く核兵器禁止条約に参加するよう、全力をあげてとりくんでいこうではありませんか。
日本共産党のASEAN訪問――東アジアに"対話の習慣"を広げよう
12月に行われた日本共産党の東南アジア訪問については、志位委員長のあいさつで、訪問を通じて得ることができた認識の発展と、党の外交方針の発展方向について、述べました。
私も代表団の一員としてこの歴史的ミッションに参加し、ASEANが、長年にわたる努力によって、"対話の習慣"=対話せずにはいられないという政治的・外交的文化を育てあげてきたこと、この"対話の習慣"を北東アジアを含む東アジアの全体に広げることによって、戦争の心配のない平和な東アジアをつくろうという壮大な構想が、「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)だと得心がいきました。
インドネシアにあるASEAN本部の正面ロビーには、ASEAN加盟10カ国の旗やシンボルが並び、まさに「誰でもウエルカム」という雰囲気に満たされていました。この本部を中心に、10カ国から集まった人々が一緒になって、年間1500回もの会合を行い、アメリカや中国、日本など大国に対しても、積極的に関与し、平和の地域協力のなかに包摂しようという外交を展開している、なんとやりがいのある活動かと思えてなりませんでした。「家族の一員として受け入れあい、助け合い、支える。問題が起きても家族の協力で解決する」と、ASEANの事務次長は表現されましたが、互いに戦争をしない、武力行使も武力による威嚇もしないという東南アジア友好協力条約(TAC)を土台に、途切れることのない対話を続けてきた生きた力に、目を見張る思いでした。
北東アジアで、このような関係をつくるのには、時間もかかり、大きな外交努力を要するでしょう。しかし、ここに挑戦することが、日本国憲法の要請ではないでしょうか。東南アジアも、かつては戦争・紛争・対立が激しい地域でした。しかし、長年の徹底した対話の努力の積み重ねで、この地域を世界でも最も成功したといわれる平和の共同体に変えたのです。同じような努力を北東アジアでもやるべきではないのか。ASEANと協力して、北東アジアを含む東アジアの全体に"対話の習慣"を広げる――こういう戦略をもった外交努力が、どれほどやりがいにみち、日本にとっても平和と繁栄への希望となるか、心躍る思いです。
ASEANの実践、日本共産党の「外交ビジョン」を広く知らせ、まず日本のなかで、徹底した対話を積み重ねることで東アジアの平和を構築しよう、こうした世論を築いていこうではありませんか。
今回、私は初めて日本共産党の野党外交を経験しました。日本共産党が、長年にわたってASEANのとりくみに注目し、北東アジアの平和構築を真剣に探究してきたことが、ASEANの国ぐにの側からの共感と信頼になって、一つひとつの会談が、響き合い、意気投合し、深められていく場面を目の当たりにしました。
あらためて振り返ると、2000年の第22回党大会決定に、東南アジア友好協力条約(TAC)で結ばれたASEANについて明記して以後、わが党は、ASEANに一貫して注目をよせ、4年前の綱領一部改定で「平和の地域協力」の流れとしてASEANを明記しました。2019年にASEAN首脳会議でAOIPが採択された際にはいち早く賛意を表明し、2022年1月に提唱した「外交ビジョン」の柱にすえました。今日の日本で、このような平和外交の大戦略をもつ政党は、日本共産党だけではないでしょうか。このことを確信とし、東アジアの平和構築という大事業を推進していこうではありませんか。
「第2章 自民党政治のゆきづまりと日本共産党の任務」について
自民党政治を終わらせる国民的大運動を起こそう
岸田政権は、いよいよ末期的な状況に追い詰められています。
政治資金パーティーによる裏金づくりは、自民党全体を揺るがす一大事件に発展し、腐敗政治への国民の怒りは沸騰しています。安倍派をはじめすべての派閥が、企業・団体からパーティー券の名で金をかき集め、政治資金報告書を偽造し、裏金づくりをシステム化していた。モラルのかけらもない違法な金にまみれた政治家が政権の中枢に座り、「みっともない憲法」などと日本国憲法を敵視し、「戦争する国」づくりを進めていた。消費税を何度も増税し、暮らしも経済も壊してきた。日本の政治のかじ取りを自民党に任せていいのかが根底から問われています。
経済政策でも、自民党政治は深刻な政策破綻に陥り、「経済無策」の状態です。「失われた30年からの脱却」と言いながら、経済の停滞をもたらした従来の政策に反省もありません。国民多数が求める消費税減税に背を向け、インボイス廃止の要求は門前払い。一回こっきりの所得税「定額減税」を打ち出しましたが、「選挙目当て」「次は大増税だ」と国民に見透かされています。健康保険証の廃止・マイナ保険証への一本化も、どんなに反対世論が広がろうと、深刻な問題が明らかになろうとも強行しています。
アメリカいいなりの「戦争する国づくり」――憲法を踏み破った大軍拡への不安と批判が広がっています。来年度予算案で、軍事費は8兆円にも膨れ上がり、岸田政権は、米軍とともに敵基地攻撃をする態勢づくりに突き進んでいます。墜落事故が起きても、米軍にオスプレイ飛行停止を求めず、沖縄県民の意思も地方自治も踏みにじって米軍辺野古基地新設に暴走する――日本の平和や安全よりも、米軍優先なのかと怒りが広がるのは当然です。
国民は、すでに岸田政権を見放しています。国民とともに、岸田政権の退陣を求める怒りの声をあげましょう。同時に、この危機は、岸田政権だけでなく自民党政治そのものの危機であり、自民党政治そのものを終わらせることが、いま強く求められています。
では、どうやって日本の政治のゆきづまりを打開するのか。
第一のカギは、あらゆる分野で国民運動を起こし、自民党政治を追い詰めていくことです。日本共産党は、この大会の名において、自民党政治を終わらせる国民的大運動を起こすことを心からよびかけるものです。
①金権腐敗政治の徹底究明・企業団体献金の全面禁止を、②「失われた30年」を打開し、暮らしに希望がもてる政治を、③平和も暮らしも壊す大軍拡、「戦争する国づくり」を許さず、外交で平和をつくる、④人権後進国から先進国へ――この四つの柱で、緊急の要求にもとづく共同を広げ、一つに合流させて、自民党政治を終わらせる国民的大運動を大きく発展させましょう。それは市民と野党の共闘の再構築にとっても一番の力となるでしょう。
第二のカギは、日本共産党の総選挙での躍進です。日本共産党が、あらゆる国民運動を発展させる先頭に立って奮闘するとともに、強く大きな党をつくる仕事をうまずたゆまず前進させ、総選挙で躍進する、これこそが、日本の政治のゆきづまりを打開する最大の力となります。総選挙では、日本共産党の躍進をゆるがずに最優先の課題にすえ、その実現のために全力をあげて奮闘する決意を固めようではありませんか。
以下、四つの柱について述べます。
金権腐敗政治の徹底究明・企業団体献金の全面禁止を
自民党の政治資金パーティーによる裏金事件・疑惑は、「しんぶん赤旗」の1年にわたる調査と連続するスクープ報道をきっかけとして、自民党を揺るがす大事件となっています。
政権の中枢を握ってきた安倍派が最も巨額な裏金にまみれていたこと、自民党の各派閥で裏金づくりがシステム化していたことが明るみに出ました。真相究明を、検察の捜査まかせにはできません。誰がどれだけの裏金をつくったのか、裏金を何に使ったのか、洗いざらい明らかにさせようではありませんか。「国会での証人喚問をひらけ」「自民党の裏金づくりの全容究明を」の世論を巻き起こしましょう。
この問題の根本には、日本の政界に巣くう歴史的な腐敗構造があります。金権腐敗事件が相次ぐもとで、1980年代末以降、「政治改革」が唱えられました。ところが94年、当時の細川内閣と自民党の談合によって、「政治改革」は「小選挙区制の導入」にすり替えられ、腐敗の根源にある企業・団体献金は温存されてしまいました。政党と政党支部への企業・団体献金を「合法」とし、政治資金パーティー券の購入は「対価性がある」から、企業・団体がたくさん購入しても構わないという「抜け穴」がつくられたのです。偽りの「政治改革」を進めた勢力の責任は、きわめて重いといわなければなりません。
岸田首相などは「企業・団体献金は民主主義のコスト」と、いまだに開き直っています。しかし、自民党政治が、国民の大多数の反対を押し切って、暮らしを破壊する数々の法案を強行したのはなぜか。自民党に政治資金を提供する財界・大企業の要請にこたえているからにほかなりません。カネの力で政治をゆがめ、主権者・国民の参政権を侵害する企業・団体献金は、キッパリと禁止すべきです。
日本共産党は、パーティー券購入を含めて、企業・団体献金の全面的な禁止をはかる法案を国会に提出しました。金権腐敗政治を一掃してほしい、これは圧倒的な国民の要求です。「法案の審議・成立を」「企業・団体献金の全面禁止を」と大きな世論を起こしていこうではありませんか。
「失われた30年」を打開し、暮らしに希望がもてる政治を
《消費税減税、税金はもうかっている大企業と富裕層に応分の負担を》
税のあり方が、政治の大きな問題となっています。
自民党政治は、税金をめぐって迷走状態に陥っています。12月に決定された自民党の税制改正大綱では、過去40年間の法人税率の連続的な引き下げによって、「企業経営者が......投資拡大や賃上げに取り組むことが期待された」、しかし、「賃金や国内投資は低迷」し、一方で「企業の内部留保は名目GDPに匹敵する水準にまで増加」し、「企業が抱える現預金等も300兆円を超える」と述べ、「法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」と、まるでわが党の国会論戦のような分析で、政策の失敗を自ら指摘した記述をしています。しかし、その結論はさらなる大企業減税となっており、まさに迷走そのものです。
そもそも自民党政治は、税財政とはどうあるべきかという、根本の考え方において逆立ちした政策を続けてきました。この30年間で、大企業への減税は7回、消費税の増税は3回に及びます。消費税の導入以来の税収は累計で539兆円、同じ時期、法人税と所得税の減収は613兆円、消費税は、法人税・所得税の減収分の穴埋めにされただけでした。消費税増税は、家計消費を冷えこませ、中小企業・小規模事業者の経営を圧迫し、景気を悪化させ続けました。まさに「失われた30年」の大きな原因の一つとなったのです。法人税減税が失敗だったと認めるなら、それと一体に進めた消費税増税路線を見直し、大企業と富裕層に応分の負担を求め、消費税減税を断行すべきではないでしょうか。
大会決議案は「経済再生プラン」の考え方として、そもそも税財政の目的は何かを強調しています。格差是正、応分の負担、暮らし最優先が大原則であり、消費税は最悪の不公正税制です。消費税を減税せよ、税金はもうかっている大企業と富裕層に応分の負担を、この一大運動を起こしましょう。
《介護大改悪を許すな! 「世代間対立」を打ち破る国民的な連帯を広げよう》
岸田政権は、高齢者の医療費負担増や介護保険制度の大改悪という、社会保障の大削減に踏み出そうとしています。
介護保険による介護サービスを要介護3以上の重度者に限定する、利用料は原則1割から2割負担へ値上げする、ケアプラン作成の有料化などを、今後2~3年で行う計画の具体化が検討されています。現在、要支援・要介護と認定されている約690万人のうち、要介護3以上は約240万人、35%です。65%が介護保険のサービスから排除されることになれば、介護保険料を徴収しながら、保険による介護サービスを大多数に提供しないことになります。これでは、国家的な保険詐欺というほかないではありませんか。
これは高齢者だけの問題ではありません。高齢者介護はいよいよ家族の自己責任となり、今でも年間10万人にのぼる現役世代の「介護離職」は加速し、「ヤングケアラー」と呼ばれる、子ども・若者世代の介護負担と、学業や進路に及ぼす悪影響の問題をさらに広げてしまいます。そもそも国庫負担割合を減らしたことに、介護保険制度の根本的な矛盾があります。制度改悪を止めるとともに、国庫負担割合の抜本的引き上げを求めましょう。
政府は、介護保険をはじめとする高齢者への社会保障大削減を、世代間対立をあおって強行しようとしています。「子育て支援」の財源として、社会保険料に負担金を上乗せする――国民負担増・給付減の政策が押し付けられようとしているのです。「子育て支援」の財源確保ができないのは、大軍拡があらゆる暮らしの予算を圧迫しているからにほかなりません。2年間で増やそうとしている軍事費2・5兆円は、大学など高等教育の授業料半減と入学金廃止、高校授業料の無償化、学校給食の無償化をすべて実現できる規模です。大軍拡と子育て支援は絶対に両立しません。
政府・与党とその補完勢力、財界などがつくりだしている「世代間対立」を打ち破り、すべての世代の国民の連帯で、「大軍拡をやめて社会保障充実を」の声をあげようではありませんか。
《賃上げ・非正規ワーカーの待遇改善、労働組合はじめ幅広い連帯と共同を》
物価高騰を上回る賃上げは、切実な要求であり緊急の課題です。労働組合はもとより、幅広い国民の世論と運動で実現を迫りましょう。
日本共産党は、職場でのたたかいに連帯し、「政治の責任で賃上げを」と求めて奮闘します。一部の大企業に巨額の内部留保がたまり続ける経済のゆがみは、自民党も否定できず、内部留保を賃金に回す必要性を岸田政権も認めています。「経済再生プラン」の賃上げパッケージ政策は、膨張しすぎた内部留保を賃上げに回し、経済に還流する唯一の具体的提案です。
ナショナルセンターの違いや政治的立場の違いを超えた対話と共同を大きく広げ、最低賃金時給1500円、中小企業の賃上げへの抜本的な支援、地域格差をなくす全国一律最賃制の確立を求めましょう。また、非正規ワーカー待遇改善法の提案に、多くの共感が寄せられています。非正規ワーカー待遇改善法の提案を知らせ、実現する宣伝対話、非正規ワーカーの労働相談にとりくむ労働組合や、市民団体との連帯を広げましょう。
《気候危機打開と原発ゼロ、食料自給率の向上》
1月1日に起きた能登半島地震と津波は、世界有数の地震・津波国日本で、原子力発電所がいかに危険かをあらためて示しました。わが党は、すべての原発の廃炉を求めていますが、特に、地震によって重大なトラブルが発生した志賀原発、柏崎刈羽原発は、ただちに廃炉にすることを緊急に求めるものです。東京電力福島第1原発の事故はなお続いており、今も数万人が避難を余儀なくされ、事故収束の見通しも立っていません。原発新増設はもちろん、危険な老朽原発の再稼働を断念させ、原発ゼロの日本をつくろうではありませんか。
12月13日までドバイで行われたCOP28で、初めて「化石燃料からの脱却」が気候交渉の合意となりました。多くの抜け穴が残されており、再生可能エネルギーへのシステム転換を求める運動と、化石燃料を温存しようという勢力との激しいせめぎあいが続いていますが、そのもとでも国際社会は確実に前進しています。石炭火力発電からの撤退さえ言及しない日本政府は、世界の動きから取り残され、多くの国ぐにや市民から批判の的となっています。
「経済再生プラン」で示しているように、気候危機打開、エネルギーと食料の自給率向上は、国民の命を守る上でも、地球規模での責任を果たすうえでも避けて通ることができない課題となっています。しかも、新しい需要と雇用を創出し、地域循環型経済を推進するなど、持続可能な経済の発展に大きな力を発揮します。原発と石炭火力にしがみつく自民党政治は、この点でも「亡国の政治」と言わなければなりません。
農業、畜産・酪農、漁業という国民の食料生産を担う産業が危機的な状況に追い詰められています。資材の価格高騰対策など、緊急の要求とともに、将来にわたって希望を持って経営できる農業へと、農業政策の転換が急がれます。農業、畜産・酪農、漁業の危機打開へ、新たな共同も広がっています。自給率向上、価格保障と所得補償の抜本的拡充、農業予算を抜本的に増やすことを含めて、自治体・農業団体・消費者団体など広く国民的な懇談、シンポジウムなどにとりくみましょう。
平和も暮らしも壊す大軍拡、「戦争する国づくり」を許さず、外交で平和をつくろう
《「安保3文書」から1年、「戦争する国づくり」の危険性があらわに》
大会決議案は、「敵基地攻撃能力保有の最大の目的の一つは、米軍が主導する『統合防空ミサイル防衛』(IAMD)への自衛隊の参加にある」と指摘しています。バイデン政権は、先制攻撃を柱としたIAMD構想について、「同盟国・パートナー国との緊密な協力」と「相互運用可能」であることとしており、自衛隊を米軍のミサイル戦略に組み込むことは明らかです。
自衛隊の「常設統合作戦司令部」が新設されますが、これは、米軍のインド太平洋軍司令部との調整機能を強化するためだと、防衛省が認めています。これは、陸海空の3自衛隊を統合したうえで、丸ごと米軍の指揮下に組み込もうというものです。軍事力、情報収集力ともに圧倒的な力をもち、先制攻撃を戦略とする米軍の指揮下に統合され、そのもとで米軍が先制攻撃に着手すれば、自衛隊も自動的に敵基地攻撃を開始することになる――これは火を見るよりも明らかです。
全国で進められている自衛隊基地の「強靱(きょうじん)化」も、相手国から反撃を受けたもとでも戦争を継続するためであり、まさに、日本が焦土と化すことへの備えにほかなりません。全国各地で、長射程ミサイル配備をはじめとする基地強化、欠陥機オスプレイの配備、民間の空港・港湾の軍事利用、米軍と一体の危険な訓練などに、住民の不安と怒り、反対するたたかいが広がっています。
決議案は、「専守防衛に徹して、軍事大国にならない」「自分の国は自分で守る」という二つの大うそを暴露していますが、「戦争する国づくり」の危険な実態を広く国民に明らかにし、国民とともに運動を広げ、二つの大うそを打ち破ろうではありませんか。
《税金は大軍拡でなく国民の暮らしに使えの世論と運動を》
2024年度予算案で軍事費は8兆円に突入し、岸田政権は、わずか2年で、軍事費を1・5倍、2・5兆円も増やそうとしています。その中身も、極超音速誘導弾をはじめ長射程ミサイルの開発・量産、イージス・システム搭載艦の新たな製造、自衛隊基地の強靱化など、「敵基地攻撃」態勢をつくるための軍備大増強です。大軍拡によって、暮らしの予算は削られ、拡充は極めて困難となり、暮らしの希望は押しつぶされてしまいます。
「アメリカいいなり」の大軍拡・「戦争する国づくり」をやめて、税金は国民の暮らしに使え、教育や子育てに使えの世論と運動を大きく広げましょう。
《辺野古新基地建設――政府の暴挙に断固抗議し、「オール沖縄」との連帯を訴える》
沖縄県名護市の米軍辺野古新基地建設は、重大な局面を迎えています。12月20日、福岡高裁は「代執行」訴訟で国の言い分を追認する不当判決を下しました。この判決を受けて、政府は、新基地建設の「代執行」に踏み出しました。国が地方自治体から権限を取り上げて「代執行」を行うことは歴史上初めてであり、民主主義も地方自治も米軍のために平然と踏みにじる暴挙に断固抗議するものです。
いくら強権的に新基地建設に突き進んでも、その矛盾と破綻は明瞭です。軟弱地盤は深さ最大90メートル、工事の難易度が極めて高いうえに、さらなる地震対策も必要と指摘されるなど、辺野古新基地が完成するめどはまったく立っていません。埋め立て費用も、工事の進捗(しんちょく)率14%の段階で、すでに見積額の47%に達しており、今後、軟弱地盤の工事となれば、支出は青天井となることは必至です。
政府は、「普天間基地の危険性除去」「辺野古移設が唯一の解決法」と繰り返していますが、日米両政府が普天間基地の返還で合意した1996年から28年たって、基地は1ミリも動いていません。それは「県内移設」という条件つきだったからにほかなりません。基地の苦しみは、どこに移しても苦しみであることに変わりはなく、受け入れられない。これが28年間、変わらない沖縄県民の圧倒的民意です。政府がやるべきは、普天間基地の無条件撤去を求めて米国と交渉することであり、辺野古新基地建設はきっぱりと中止すべきではないでしょうか。大会として、「オール沖縄」のたたかいへの連帯を心からよびかけます。
《ASEANの英知に学び、外交による平和の創造を》
大軍拡を進める勢力の最大にして唯一の「論理」は、「日米同盟による抑止力強化こそ日本を守る力」ということです。しかし大会決議案が指摘しているように、抑止力の本質は「恐怖を与えること」であり、それは恐怖対恐怖――軍事対軍事の悪循環をつくりだすだけです。
ASEANで私たちが見てきたのは、こうした軍事的抑止力一辺倒の安全保障論、大国の対抗の一方の側に立って地域の対立と分断をエスカレートさせる対応を回避し、東アジアを「対抗でなく対話と協力」に変えるための外交の英知でした。
この英知に学んで、また日本国憲法9条の精神に立って、外交の力で東アジアに平和を創出しようというのが日本共産党の「外交ビジョン」です。この平和の対案を大きく掲げて、戦争の心配のない平和な東アジアをつくるために奮闘しましょう。
《安保条約の廃棄を掲げる日本共産党の役割――「二重のとりくみ」を今こそ》
「アメリカいいなり」の政治のおおもとには日米軍事同盟=日米安保条約があります。決議案は、日本共産党が、「二重のとりくみ」を進めることの重要性を強調しています。
これまで述べてきた緊急の課題については、どれも、安保条約に対する是非を超えて、要求の一致点で共同を広げることが重要です。
同時に、これらの課題の根本に安保条約があり、安保条約廃棄を求める日本共産党の役割は大きくなっています。米軍基地の被害に怒りが広がっても、安保条約廃棄を求める世論は自然には広がりません。「日米同盟基軸」を当然とする政界、財界、メディアのもとで、私たちの独自の努力が不可欠であることは明らかです。
私は、ASEAN訪問で、北東アジアでの"対話の習慣"の欠如は、軍事同盟の存在と結びついていることを実感しました。わが党が、軍事同盟をなくす立場に立って奮闘することは、「外交ビジョン」を実現するうえでもその貢献となるでしょう。
緊急の一致点での世論と運動を発展させつつ、安保条約廃棄を掲げる日本共産党のかけがえのない役割を大いに発揮して奮闘することをよびかけます。
人権後進国から先進国へ――ジェンダー平等を阻む勢力とのたたかい
この間、自衛隊のセクハラ・性暴力、長年不問にふされてきた芸能界での性暴力など、被害者が勇気をもって告発し、日本社会に大きな変化をもたらしています。当事者の方々は、組織を変えよう、性暴力を根絶しようという決意で、さまざまな困難・苦悩のもとで声をあげています。LGBTQ当事者も、愛する人と結婚したい、家族をつくりたい、自分を偽らずに安心して生きていきたいという、個人の尊厳を掲げて、裁判や議会への働きかけに積極的にとりくんできました。当事者の勇気ある行動が支援を広げ、日本のなかでも、市民社会や国民世論は大きな前進をとげています。
決議案の討論では、世界と日本の人権をめぐる大きな前進に、「震えるような感動を覚えた」など熱い受け止めが多数寄せられています。4年前の綱領一部改定で、ジェンダー平等、性的指向・性自認を理由とする差別をなくすことを、日本の民主的変革の重要な柱にすえたことが、国会・地方議会の質問でも、この課題を「あれこれの一つ」ではなく、政治の中心的課題として位置づけて、確かな前進を築いてきました。このことが大きな確信となっています。「女性の世界史的復権」の時代を前に進めるために、また、すべての人の人権が大切にされる社会の実現へ、さらに大きな前進を築いていきましょう。
同時に、選択的夫婦別姓や同性婚など重要な課題で法改正が一歩も進まない現実、変革を求める当事者への激しいバッシングが政治家によって行われていることを直視しなければなりません。ジェンダー平等をはじめ、個人の尊厳が大切にされる社会への前進を阻む勢力とたたかうこと、自民党政治を変えることなくして、現状を変えることはできません。
4年前の綱領一部改定の報告では、「ジェンダー平等の上に利益追求を置いて恥じるところのない財界・大企業の無分別と節度のなさ、明治時代の男尊女卑の価値観をいまだに押し付ける政治――この二つのジェンダー差別のゆがみをただすたたかいにとりくもう」とよびかけました。このたたかいがいよいよ重要となっています。
企業ごとの男女別賃金格差の公表によって、大企業ほど格差が大きいことが明らかになりました。コース別人事管理で正社員であっても女性の昇給昇格を抑え込む、なかには非正規雇用は全員女性という大企業もあります。ここには、女性を「家計補助的労働」と位置づけ、一方で「男性の正社員」には、長時間労働も単身赴任も文句を言わせないという「利益追求」をジェンダー平等の上におく、財界・大企業の姿勢があります。男女別・雇用形態別賃金の公表を求めるとともに、こうした問題を「間接差別」だと認識できない政治をおおもとから変えようではありませんか。
また「明治時代の男尊女卑の価値観」にもとづき、「家父長制」「家制度」こそ、日本の伝統的家族だと押し付ける勢力、戦前の日本を美化し、日本国憲法を忌み嫌う勢力が、自民党政治の中枢に座り続けてきた異常さを、怒りをもって告発することをよびかけます。選択的夫婦別姓や同性婚を実現させまいと妨害し、LGBTQ当事者の尊厳を傷つける発言を繰り返すなど、これらの勢力の害悪はあまりにも明らかです。政治の表舞台から一刻も早く退場させましょう。
以上、自民党政治を終わらせる国民的大運動について、四つの柱で述べてきました。「経済再生プラン」「外交ビジョン」「気候危機打開2030戦略」「企業・団体献金禁止法案」など、希望ある政治をつくるわが党の提案を広い市民や団体に届けて対話を広げ、国民的大運動を起こしていくことを心からよびかけます。
「国民運動と統一戦線の発展のために」に関連して
市民と野党の共闘――再構築にむけて二つの力の前進・発展を
12月7日、野党各党の書記局長・幹事長が、5項目からなる市民連合の政策要望を受け、基本的に合意したことは、市民と野党の共闘の再構築にむけた重要な一歩です。
わが党は、共闘の再構築のために引き続き可能な努力をはらいます。同時に、率直に言って、ここには困難が存在することも明らかとなっています。
共闘の再構築を進めるには、二つの根本的力が必要となります。一つは、自民党政治を終わらせる国民的大運動を、あらゆる分野で発展させることであり、いま一つは、日本共産党が、来たるべき総選挙で政治的躍進をかちとることです。
市民と野党の共闘は、2014年に安倍政権の暴走政治に抗議する新しい市民的・国民的運動がおこり、各地でスタンディングやデモ行動がとりくまれ、安保法制反対の声が国会を包囲し、そのなかでわき起こった「野党は共闘」の声が大きな力となってつくられました。同時に、2013年6月の都議選、7月の参議院選挙、翌年12月の総選挙で日本共産党が躍進したからこそ、「国民連合政府」というわが党の提案が現実の政治に響き、共闘を大きく前に進める力となりました。
共闘の再構築にむけて、いま、二つの力を前進・発展させることに全力を注ぐことをよびかけます。
自覚的民主勢力の強化――統一戦線の発展をめざして
大会決議案9項では、国民の要求運動の発展には自覚的民主勢力の役割が重要と指摘しました。全党討論で、「自覚的民主勢力とは何を指しているのか」「なぜこの役割を強調しているのか」という疑問が出されています。
党綱領は、「民主主義的な変革は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人びとを結集した統一戦線によって、実現される」と述べています。国民の運動は、多様な分野でそれぞれの要求にもとづいてとりくまれます。日本共産党は、それぞれの要求の実現とともに、日本の民主的改革――日本の真の独立、平和、民主主義を実現する改革のために、自覚的に統一戦線に結集する勢力を「自覚的民主勢力」として、その運動と組織の発展をこれまでも重視してきました。それは、基本的に、今日、革新懇運動がかかげる「三つの共同目標」に自覚的に結集する団体、個人ということです。
この間、緊急の一致点での統一戦線――市民と野党の共闘の発展をはかるうえでも、かけがえのない役割を果たしてきたのが、自覚的民主勢力でした。とくに全労連が、労働組合の潮流の違い、数十年来の「過去のいきがかり」を乗り越え、2015年2月に「総がかり行動実行委員会」という共同組織=統一戦線組織の結成と発展で力を合わせたことは、8年半の共闘の歩みを支える歴史的意義を持つものでした。自覚的民主勢力の組織と運動を拡大強化することは、共闘の再構築をはかるうえでも、統一戦線による多数者革命を成し遂げるうえでも欠くことのできない課題です。
決議案は、党が国民運動に参加するさいの「四つの原則」を提起しました。これらは、過去の大会決定でも強調されており、長年の国民運動の発展の努力から導き出された大事な教訓を今日に生かそうというものです。
1、それぞれの団体・組織の要求実現に力をつくす。要求運動はさまざまな困難にぶつかることがありますが、党員が綱領の立場で科学的な展望をもち、不屈性を発揮して努力することは運動を励まし、要求実現に貢献することになります。
2、それぞれの組織の性格と目的を尊重して、組織の前進・強化のために力をつくす。現に多くの党員のみなさんは、団体・組織の拡大強化のために積極的な力を発揮しています。このことを党の役割として位置づけ計画的・系統的に進めることが大切です。
3、結びつきを生かした党勢拡大をはかる。自覚的民主勢力の組織の発展にとっても、日本の民主的変革の展望を示す党綱領を学び活動する党員の拡大は、大きな意義をもつことになります。
4、市民的モラルを大切にする。パワハラ・セクハラの一掃をはじめ、市民に信頼される組織となることは、今日、とりわけ重要な課題となっています。
これらの活動を、党員個人の努力にゆだねずに、党として組織的に位置づけることが重要です。「四つの原則」に立って党の役割を発揮し、国民的大運動の発展、政治を変える統一戦線の発展をはかりましょう。
総選挙での日本共産党の躍進に全力をあげる――国政選挙、中間地方選挙の方針
自民党政治にかわる、新しい政治をつくる最大の力は日本共産党の躍進
来たるべき総選挙は、岸田政権のみならず自民党そのものが末期的状況となるもとで、歴史的政治戦となります。国民の怒りが集中している「金権腐敗政治」「経済無策」「戦争する国づくり」「人権後進国」の四つの大問題は、そのまま総選挙の大争点となるでしょう。
国民の怒り、世論と運動で、自公政権を解散・総選挙に追い込み、自民党政治を終わらせる総選挙にしようではありませんか。政権与党と一体となって悪政を推進し、憲法改定の発議の旗をふる日本維新の会、国民民主党を含めた「悪政4党連合」への厳しい審判を下そうではありませんか。
その一番の力は日本共産党の躍進です。党の躍進をかちとることに最大の力を注ぐことを重ねて訴えるものです。
大会決議案を力に「二つの政治姿勢」を貫いてたたかう
決議案は、総選挙をたたかう「二つの政治姿勢」を堅持することを強調しました。第一は、国民の切実な要求と結びつけて、日本の政治の二つのゆがみを「もとから変える」、わが党の綱領的値打ちを太く押し出し、綱領路線にこそ希望があることをおおいに語ることです。第二は、わが党の綱領と組織のあり方に対する攻撃を打ち破って、党への丸ごとの支持を広げ、積極的支持者をふやす政治的・組織的大攻勢をかけることです。
自民党政治は極限までゆきづまっている、国民の怒りも噴出している、しかし打開の展望がなかなか見えない。だからこそ、今日の政治のゆがみの根本を問う「こんな財界の利益最優先の政治でいいのか」「こんなアメリカいいなりの国でいいのか」という、わが党にしかできない問いかけが重要となります。「経済再生プラン」も「外交ビジョン」も、緊急の要求にこたえると同時に、抜本的改革の提案であり、「アメリカいいなり」「財界・大企業の利益最優先」から脱却する綱領路線を土台にしたものです。
また、大会決議案は、未来社会をふくめた綱領路線についても、組織のあり方についても、党の魅力として輝かせるものとなっています。反撃にとどまらず、積極的に、日本共産党そのものを生き生きと語り、堂々と日本共産党への支持を訴えようではありませんか。
「比例を軸に」をつらぬき、「650万、10%」の実現を
総選挙では、比例代表で今度こそ躍進をかちとりましょう。全国「650万票、10%以上」の獲得、11ブロックすべてで現有議席の絶対確保と議席増をかちとる、ここに徹することをよびかけます。小選挙区では沖縄1区の「オール沖縄」の「宝の議席」を必ず守りぬくとともに、小選挙区で議席が狙える党への成長・発展を戦略的目標にすえて議席増をめざします。比例代表での躍進のために、積極的に小選挙区での候補者を擁立します。候補者の半数に女性候補を擁立することをめざします。
広い有権者に、日本共産党の魅力と予定候補者の魅力を一体に伝える活動に豊かにとりくみましょう。支部や党員が「日本共産党」という候補者になって、自分が伝えたい政策、党の魅力を語ることに挑戦しましょう。
わが党は、総選挙に向けて、市民と野党の共闘の再構築に可能な努力をはらいます。共闘の前進を阻む攻撃の中心は、共産党との協力を否定する反共主義にあります。国民的大運動の発展、日本共産党の躍進によって、この障害をのりこえることが、共闘再構築の最大の力であることを重ねて強調するものです。
地方選挙で現有議席を確保し、着実に前進する
地方選挙の結果は、その自治体での地方政治に重要な意味を持つことはもちろん、日本共産党の政治的勢いを示す重要なバロメーターとなります。地方議員数は、2331人(1月1日時点)、前回党大会から331人の後退となっています。ここで後退傾向に終止符を打ち、現有を維持し、着実な前進に転じるために力をつくすことを訴えます。
地方選挙での議席後退の最大の要因は、自力の後退です。議席後退の約4割が、候補者擁立を見送ったことによるものです。党づくりの遅れの打開が急務となっています。選挙の1年前には候補者決定し、早くからの選挙準備を行うことが重要です。党中央として、「地方議員候補者決定促進委員会」を設置して、候補者決定、世代的継承のとりくみを系統的に強めていきます。
政策や争点、議席のかけがえのない役割、反共攻撃への反撃など、論戦に磨きをかけること、大量政治宣伝で圧倒すること、正確な情勢判断なども、この間の重要な教訓です。また議員・候補者の日常的な活動として、支部とともに地域での宣伝や要求運動にとりくみ、系統的に住民の信頼を高める努力、選挙の日常化の要となる後援会活動の発展など、全国の経験や教訓を生かしましょう。
今年から来年にかけて、重要な中間地方選挙が連続してたたかわれます。条件があるところでは、首長選挙でも市民と野党の共闘で勝利をめざします。
6月の沖縄県議選は、日本共産党7議席の絶対確保で、「オール沖縄」の勝利をかちとりましょう。辺野古新基地建設をめぐり、日米両政府と真正面から対峙(たいじ)する玉城デニー県政を支えるため、全国からの沖縄への支援を心からよびかけます。
7月7日投票の東京都知事選は、都政とともに国政にも重大な影響をあたえる一大政治戦としてとりくみます。
2025年の東京都議会議員選挙は、参議院選挙直前にたたかわれます。13年の都議選での躍進は、直後の参院選、翌年の総選挙の躍進につながりました。党は過去3回、連続して都議選での勝利をかちとってきました。4回目の勝利に向けて全力をあげましょう。
「第3章 党建設――到達と今後の方針」について
多数者革命を推進する強く大きな党を
大会決議案第3章の全党討論は、「多数者革命といわれてはっとした」「初心に立ち戻ることができた」「党建設の意義がよくわかり、党勢拡大に踏み出せた」など、活発かつ積極的な討論となり、党勢拡大の推進力にもなっています。8中総決定で「『革命政党』と言われて驚いた」という人も、決議案を歓迎していることも特徴です。
大会決議案は、多数者革命を進めるうえでの党の役割について、次のように明記しました。
「どんな困難にも負けない不屈性、科学の力で先ざきを明らかにする先見性を発揮して、国民の自覚と成長を推進し、支配勢力の妨害や抵抗とたたかい、革命の事業に多数者を結集する――ここにこそ日本共産党の果たすべき役割がある」
全党討論をふまえ、とくにここで述べられている「国民の自覚と成長を推進」するという党の根本的な役割と、民主集中制という組織原則の意義について、さらに解明したいと思います。
多数者革命を進める主体は、主権者である国民
まず、あらためて強調したいのは、多数者革命を進める主体は、あくまでも主権者である国民だということです。
「対米従属」「財界中心」という二つのゆがみを正す民主主義革命も、その先の社会主義・共産主義社会への変革も、社会発展のあらゆる段階で「国民が主人公」――国民多数が自らの意思にもとづいて改革を進めていく。これが綱領の立場です。
国民の一人ひとりが、自らのおかれている客観的立場、自分の苦しみの原因、それを打開する展望について「自覚」し、政治や社会を自ら変えようと「成長」してこそ、社会の変革は成し遂げられます。多数者革命には、「国民の自覚と成長」が不可欠です。
「国民の自覚と成長」は自然成長では進まない
第二に、「国民の自覚と成長」は、自然には進まないということです。
「国民が主人公」の日本をめざす綱領の立場は、客観的には、国民の圧倒的多数の利益にかなうものです。しかし、日本社会では、多くの国民は、メディアなどを使って流される支配勢力の側の情報に、日々圧倒的にさらされています。そのなかでは、「生活が苦しいのは努力が足りないから」という「自己責任」論をはじめ、政治に目を向けることそのものを阻害するさまざまな情報もふりまかれています。
このもとで、国民が、自分を苦しめている根源がどこにあるのか、その解決には何が必要かを自覚するためには、支配勢力の側の主張、変革への妨害や攻撃を打ち破る理論と運動がどうしても必要となります。まさにエンゲルスが言ったように、「長い間の根気強い仕事」が必要となるのです。
不屈性と先見性を発揮して奮闘する党が不可欠
第三に、「国民の自覚と成長を推進」するには、いま述べたような理論と運動を担い、不屈性と先見性を発揮する党が不可欠だということです。決議案では、「どんな困難にも負けない不屈性、科学の力で先ざきを明らかにする先見性を発揮し、国民の自覚と成長を推進し、支配勢力の妨害や抵抗とたたかい、革命の事業に多数者を結集する」という日本共産党の役割を強調しました。
改めて指摘したいのは、これは日本共産党の自己規定だということです。党規約第2条は、「党は、創立以来の『国民が主人公』の信条に立ち、つねに国民の切実な利益の実現と社会進歩の促進のためにたたかい、日本社会のなかで不屈の先進的な役割をはたすことを、自らの責務として自覚している」と明記しています。組織としても、一人ひとりの党員も、この役割を自覚して活動し、国民の信頼、支持、共感を広げる、そのことによって「自覚と成長を推進する」ということです。
これは、国民を上からあるいは外から導いていこうというものではありません。多様な要求の実現にともにとりくむなかで、要求を阻む政治の矛盾にぶつかる。政治の変革の必要性が国民の認識になり、革命の事業に広範な国民の支持を集めていく。こうして統一戦線に国民多数の結集を進めていくのが、わが党の役割です。
また、変革の階段を一歩一歩上るごとに、主人公である国民自身が、認識や力量を発展させていくというのが、私たちの展望です。国民は、階段を一つ上るごとに、自らの力で政治や社会を変えられるという確信をつかむでしょう。一つの階段を上れば、より根本的な変革へと前進できるという、次の展望が見えてくるでしょう。階段を一歩一歩上るごとに、社会のしくみだけでなく国民自身が変わる、成長する。この一連の過程で、国民の認識や力量の発展を推進する役割を担うのが日本共産党である――このことを自覚して多数者革命の事業に挑もうではありませんか。
民主集中制の必要性・重要性は、多数者革命を推進する役割から導かれる
民主集中制の組織原則は、多数者革命を推進するという党の役割から必然的に導かれるものです。「行動の統一ができないバラバラな党で、どうして支配勢力による妨害や抵抗を打ち破って、国民の多数者を結集する事業ができるだろうか」という決議案の提起に、「民主集中制は党の存在意義にかかわるものだとわかった」などの意見が多く寄せられていることは重要です。
一部に「時代にあわない」として、民主集中制を否定したり、弱める意見があります。こうした意見に対して、地区や都道府県の会議でも決議案・規約の立場と実践をふまえて、民主集中制の重要性を深め、みんなのものにする議論が行われていることは重要です。そのうえで私が率直に指摘したいのは、民主集中制の見直しを求める意見に共通しているのは、"革命抜きの組織論"となっているということです。革命の事業は、困難のない平たんな道をのんびりと歩むという生易しいものではありません。支配勢力による熾烈(しれつ)な攻撃や妨害を打ち破ってこそ、その前途をひらくことができる、これは、わが党の102年の歴史が証明しています。
日本共産党が前進し、国民多数が社会変革の事業に結集しようとすればするほど、それを押しとどめようとする支配勢力の攻撃が激しさを増す、私たちが「たたかいの弁証法」と呼んできたプロセスが不可避であることは、歴史が示しており、今日も、日々、私たちが体験していることです。この攻撃を打ち破って、社会変革を成し遂げるためには、民主的な議論と党の統一と団結――民主集中制の組織原則は、「時代にあわない」どころか、いよいよ重要性と必要性を増していることを、私は声を大にして訴えたいと思います。
いま若い世代が、「多様な個性を持つ人が、みんなで力をあわせていることに感動した」と党の組織のあり方への共感をもって入党する経験も生まれています。多数者革命の事業への党の責任、民主集中制で結ばれた組織の魅力を、胸をはって語ろうではありませんか。
民主集中制の五つの柱は、党のたたかいのなかで築かれた
"民主集中制が「外国からもちこまれたものではなく」というのは本当か"との疑問が出されています。決議案で述べているのは、党規約3条で五つの柱に定式化した「民主集中制」についてだということを明確にしておきたいと思います。
2000年の第22回党大会では、規約の記述を改め、上意下達だとの誤解を招きかねない表現を削除し、「民主主義的中央集権制」という表現も改め、「中央集権制」という用語を削除しました。「『民主』というのは党内民主主義をあらわします。『集中』というのは統一した党の力を集めることをさします。これはどちらも近代的な統一政党として必要なことであります」とその意味を定義し、五つの柱を定式化しました。
この規約改定は、党のたたかいの歴史を踏まえたものです。旧ソ連・スターリンの干渉によって党の分裂という最悪の危機に陥った「50年問題」を克服するなかで、民主集中制の組織原則が、党の生死にかかわる重要なものであることを学び取り、その後のソ連の干渉、中国・毛沢東派による干渉とのたたかいを通じて、この組織原則を発展させ、全党の血肉にしていったのです。民主集中制の五つの柱は、わが党自身の歴史的体験から生み出された、わが党独自のものだということを強調するものです。
党指導部の選出――なぜ今の選出方法が最も合理的か
党指導部の選出方法は、民主集中制の組織原則と一体不可分です。
全国から選出された代議員による民主的選挙によって中央委員会を選出することは、党大会の重要な任務です。選出された新しい中央委員会は、党指導部を民主的選挙によって選出します。このように集団的な指導体制を大会によって選出するところに、日本共産党の指導部選出の一番の特徴があります。
なぜこうした選出方法をとっているのか。なによりも、党のなかに派閥や分派をつくらず、公党として国民に対する責任を果たすうえで一番合理的だからです。党指導部を党員による直接投票で選ぶことになれば、候補者は自分を支持する多数派をつくるために活動することになり、必然的に、ポスト争いのための派閥・分派がつくられていく。これは他党の現実が証明しているのではないでしょうか。
支部や地区・都道府県・中央委員会のなかで、誰を支持するのかという議論が行われ、対立が生じ、主張や行動がバラバラになって、どうして国民に対する責任を果たせるでしょう。とりわけ支配勢力の攻撃を打ち破って、多数者革命を推進する日本共産党にとっては、派閥や分派をつくらないことが死活的に重要です。現在の選出方法は、「党内に派閥や分派はつくらない」と明記している党規約から必然的に導かれるものだということを強調したいと思います。
また、わが党は、そもそもポスト争いとは無縁な党です。日本共産党員は誰もが、理不尽な社会を変えよう、国民の幸福のために働きたいという初心を持って党に参加しています。出世や私利私欲のために日本共産党に入る人は一人もいません。現在の党指導部の選出方法は、こうした党の根本的なあり方とも結びついたものだということを堂々と語ろうではありませんか。
「大運動」と前大会以降の党づくりの到達点と教訓
「党勢拡大・世代的継承の大運動」と前大会以降の党づくりの到達点と教訓について報告します。
昨年の8中総がよびかけた「第29回党大会成功、総選挙躍進をめざす党勢拡大・世代的継承の大運動」を通じて、4126人の新しい党員を迎えました。福岡県と18地区が、前回党大会の党員現勢を回復・突破して大会を迎えています。新たに日本共産党員としての人生に踏み出されたみなさんを心から歓迎いたします。
世代的継承に関わって、民青同盟が2年連続で全国大会が掲げた同盟員拡大の目標をやりとげ、2019年12月からの「倍加」を達成したことは、大きな希望です。民青のみなさんの奮闘に心からの敬意を送るものです。青年・学生分野の党員拡大は、学生分野で、長年にわたる党勢の後退から前進に転じ、2021年以来3年連続で前進しており、これも貴重な変化です。
読者拡大では、11月、12月と連続前進を果たし、「大運動」の通算で、日刊紙650人増、日曜版2456人増、電子版307人増となりました。日刊紙で5地区、日曜版で4地区、電子版で47都道府県286地区が前大会現勢を回復・突破して大会を迎えていることを報告します。
一方、目標である「130%の党」、その「第一ハードル」である前回党大会時の回復・突破には、党員拡大、読者拡大とも大きな距離を残しています。「大運動」の期日は、1月末までです。「大運動」で生まれた変化を止めることなく、大会期間中も含めて、前進の流れをさらに発展させ、最後まで力をつくすことを訴えるものです。
この4年間、新たに1万6千人の新しい党員を迎えましたが、現勢は25万人となっており、党員数で長期の後退から脱することはできていません。「赤旗」読者は、日刊紙、日曜版、電子版あわせて85万人で、これも長期の後退から脱していません。党づくりは、わが党と日本の現在と未来にとって、いよいよ緊急で死活的な課題となっています。
同時に、前進への「足がかり」をつくっていることをみんなの確信にしようではありませんか。
決議案12項では、「双方向・循環型の活動の新たな開拓」「世代的継承のとりくみの意識化」の二つを、前進への「足がかり」としていますが、これに加えて、「党員拡大・入党の働きかけの日常化」がはかられつつあることをあげたいと思います。
とくに2023年の1年間の活動は、この点での重要な「足がかり」をつくるものとなりました。前大会後、新型コロナの感染の波が繰り返し襲い、党員拡大も大きな困難に直面し、入党の働きかけ数も入党者数も落ち込みましたが、この半年余の「大運動」では4万1千人以上に働きかけ、4126人の新入党者を迎えることができました。これは、「党員拡大の日常化」という面での全党の奮闘を示すものです。「手紙」と「返事」のとりくみを通じて、"困難があるからとあきらめてしまえば党の先はなくなってしまう""困難は党員拡大で突破しよう"と、党員拡大に多くの支部が真剣にむきあい、その挑戦を開始したことは、今後に生かすべき重要な教訓です。
同時に、私たちの運動は、大きな課題を残しています。それは党建設・党勢拡大が、一部の支部と党員によって担われているということです。入党の働きかけを行っている支部は毎月2割弱、読者を増やしている支部は毎月3割前後にとどまっています。これをいかにして全支部・全党員の運動にしていくかは、私たちが突破すべき大きな課題です。双方向・循環型の活動のさらなる発展を探求するなかで、その方途を全党の知恵と力を結集して見いだしていこうではありませんか。
志位委員長のあいさつでは、党建設の歴史的教訓について、過去の一時期、党員拡大が事実上後景においやられ、党員拡大の「空白の期間」がつくられたこと、党建設の方針が是正された後も、この弱点を全党の自覚とし、この弱点がもたらした困難を克服するための特別の集中した努力を行う点で、中央のイニシアチブが十分とはいえなかったことが明らかにされ、いついかなるときでも党員拡大を党勢拡大の根幹に揺るがずにすえ、自覚的なとりくみを継続的に発展させる重要性が強調されました。
同時に、客観的条件という点でも、主体的条件という点でも、いま私たちが「党勢を長期の後退から前進に転じる歴史的チャンスの時期を迎えている」ことが全面的に明らかにされました。
私は、党建設の歴史的な弱点を打開し、「歴史的チャンス」を生かして前進・飛躍を築くうえで、「大運動」でつくってきた三つの「足がかり」――「党員拡大・入党の働きかけの日常化」「双方向・循環型の活動の新たな開拓」「世代的継承のとりくみの意識化」がきわめて重要であることを強調し、同時に、党建設の運動を全支部・全党員の運動にしていくための新たな挑戦をよびかけます。三つの「足がかり」を確信に、運動を全支部・全党員へと広げ、新たな大会期を党づくりの後退から前進への歴史的転換を果たす大会期にしようではありませんか。
党勢拡大の新しい目標と方針について
前大会以降、「130%」を一貫して掲げて党づくりに奮闘したことは、大きな意義をもつものでした。この目標を機関でも支部でも真剣に討議し、挑むなかで、「130%」を達成した支部も全国に数多く生まれています。目標に正面から挑んだからこそ、前回党大会時の党勢を回復・突破してこの大会を迎えた党組織も次々と生まれました。この流れをさらに生かすことが大切です。
同時に、党の現状からみて、党勢を着実に維持・前進させること自体が、大奮闘を要する大仕事であることも明らかとなりました。
こうした到達をふまえて、新たな大会期の目標を次のように提案します。
○ 第30回党大会までに、第28回党大会現勢――27万人の党員・100万人の「しんぶん赤旗」読者を必ず回復・突破する。党員と「しんぶん赤旗」読者の第28回党大会時比「3割増」――35万人の党員、130万人の「赤旗」読者の実現を、2028年末までに達成する。
○ 第28回党大会で掲げた青年・学生、労働者、30代~50代の党勢の倍加――この世代で10万の党をつくることを、党建設の中軸にすえ、2028年末までに達成する。1万人の青年・学生党員、数万の民青の建設を、2028年末までに実現する。そのためにすべての都道府県・地区・支部が、世代的継承の「5カ年計画」と第30回党大会までの目標を決め、やりとげる。
○ 第28回党大会・第二決議で掲げた「空白の職場・地域・学園や、社会のさまざまな分野で活動する人たちのなかに党の支持をひろげ、党をつくる」「新入党員の成長が保障され、一人ひとりの初心、可能性が生きる党をつくる」「すべての党員が、党綱領と科学的社会主義を学習し、誇りと確信をもって党を語れるようになる」という目標を堅持する。
党大会は、党規約で「二年または三年のあいだに一回ひらく」とされていますが、党勢拡大の目標・期日としてここで述べている「第30回党大会まで」というのは、2年後までの目標としたいと思います。また2028年末までとは、今後5年間となります。
目標の意義について4点述べます。
第一に、次期党大会までに、すなわち2年間で、第28回党大会現勢を回復・突破することを、全党の力を総結集して、まず必ずやりとげる目標として明確にしたということです。この目標を掛け値なしにやりとげるならば、長きにわたる党勢の後退傾向に終止符を打ち、前進に転じる画期的な達成として全党の確信となり、さらなる党勢の前進・飛躍――5年間で「130%の党」への展望をひらくものとなるでしょう。
第二に、2028年末までに第28回党大会時比「3割増」を実現することは、双方向・循環型の「手紙」と「返事」の運動のなかで、全国の支部・グループが、意を決して「返事」に記した目標を尊重するものとなります。昨年1月の7中総の「手紙」にこたえ、55%の支部が中央委員会に「返事」を寄せています。「130%の党」と若い世代・真ん中世代の「党勢倍加」をめざしてつくられた「政策と計画」は、新たな大会期に生かし、発展させなければなりません。
第三に、青年・学生、労働者、真ん中世代の「党勢倍加」を、いよいよ党建設の目標と実践の「中軸」にすえ、特別の力を注ぐべき死活的課題となっているということです。この課題は、党建設のなかで生まれた歴史的弱点――党員拡大の「空白の期間」による党の世代構成のうえでの弱点――を前向きに打開する重大な意義をもつものであり、このことを全党の自覚にして、全党の総力を結集して、やりとげなければなりません。4年間の奮闘で、世代的継承の足がかりをつかんだことは大事な変化ですが、この世代の党員現勢は前大会時より後退しています。足がかりを本格的前進へと実らせ、「1万人の青年・学生党員と数万の民青」、50代までで「10万人の党」の実現に、全党が総力をあげることをよびかけます。
第四に、総選挙で比例「650万票・10%」を実現し、わが党の躍進をかちとるために不可欠の目標です。総選挙がいつ行われるかは予断を持って言えませんが、それまでに前回の総選挙時の党勢を回復・突破することは最小限の課題となります。次期党大会までに第28回党大会現勢の回復・突破にむけて党勢の上げ潮をつくる、これは前回総選挙時の回復・突破を早期に達成することと一体不可分の目標となります。
以上が党建設の新しい目標と、その意義についての報告です。率直に議論し、この党大会でみんなの決意を固めあうことをよびかけるものです。
4年間の活動の教訓と党建設の強化方向
この4年間の党づくりの教訓を生かし、どう党づくりを進めるか。大会決議案では、第28回党大会・「第二決議(党建設)」の根本精神を引き続き党づくりの土台にすえながら、七つの強化方向を示しました。これを前提として、4年間の党づくりの最も中心的な教訓にしぼって報告します。
すべての支部が「政策と計画」をもち、「車の両輪」の活動を進めよう
まず、すべての支部が、「政策と計画」をもち、要求実現の運動にとりくみつつ、党勢拡大の独自追求を進める「車の両輪」の活動に、自覚的にとりくむことです。これを、多数者革命を推進する党づくりの大道として重視しましょう。
地域、職場、学園で活動する支部が草の根から要求運動を発展させることは、自民党政治を終わらせる国民的大運動を起こす最大の貢献となるとともに、党勢拡大の条件を広げることになります。党が国民運動に参加するさいの「四つの原則」との関係でも、党支部が「車の両輪」の活動を位置づけることが大事です。
同時に、党勢拡大は独自追求なしには絶対に進みません。「政策と計画」をもって自覚的に、目的意識的に党勢拡大を追求する支部を広げてこそ、毎月入党の働きかけでは2割、読者拡大では3割の支部で担われてきた党勢拡大を、全党運動に発展させることができ、党勢を安定的な前進の軌道にのせることができるでしょう。
昨年行った「要求運動・『車の両輪』オンライン交流会」は、党づくり、世代的継承の大道がここにあることを示すものとなりました。中央として、引き続き全国の豊かな経験に学びあうイニシアチブを発揮していきたいと思います。
「党員拡大・入党の働きかけの日常化」を全支部の運動に
次に「党員拡大・入党の働きかけの日常化」です。
ここでは党機関の果たす役割がカギとなることを強調したいと思います。「手紙」と「返事」の運動で、支部が党員拡大に正面からむきあったことは、今後につながる大きな変化でしたが、党員拡大の経験がなく、「意義はわかる、でも足が出ない」という支部は少なくありません。「大運動」でも、入党の働きかけは毎月2割弱の支部にとどまっています。機関が援助し、支部が壁を突破してこそ、党勢拡大は全支部運動となります。
福岡西部地区は、今大会期155人の党員を迎え、第28回党大会現勢を突破して大会を迎えています。「大運動」では、毎月5~6割の支部が入党の働きかけに踏み出し、今大会期に党員を迎えた支部は約7割となりました。地区委員会は、なぜ党員拡大か、なぜ「3割増」か、その政治的意義を掘り下げる討議をくりかえし行い、党勢拡大を地区委員みんなの決意にしています。そして、地区役員が自ら入党の働きかけを行うことで、「そんなに難しいことではない」「入党の働きかけは、楽しい活動だ」と支部の党員が実感して、支部の「踏みきり」につなげていこうと努力しています。地区委員長は、「入党の働きかけに対する抵抗感も少なくなった。全読者を対象に広く入党を働きかけることは当たり前という雰囲気が出てきている」と語っています。
4年間のなかでも、とりわけ最後の1年間、党員拡大の活動に変化をつくりだしたのは全国共通の特徴です。この大会でも討論で学びあい、新たな目標にむかう力にしようではありませんか。
世代的継承をどう「中軸」にすえるか
世代的継承のとりくみについて、3点述べます。
《党建設・党勢拡大の全体の活動と世代的継承のとりくみの関係について》
一つは、党建設・党勢拡大の全体のとりくみを前進させるなかで、世代的継承を「中軸」にふさわしく意識的に追求する、ということです。
党員拡大の日常化が進んでいるところでは、広く入党を働きかけるなかで、若い世代、真ん中世代の結びつきも出され、この世代への働きかけが進んだことが共通の特徴となっています。第28回党大会時回復・「130%」をめざす党づくりと、若い世代、真ん中世代の「党勢倍加」をめざすとりくみはバラバラではないし、対立するものでもありません。党員拡大に大きくとりくむなかで、世代的継承を相乗的に前進させることができます。
同時に、世代的継承のとりくみは、独自のとりくみが絶対不可欠です。この4年間、中央として、青年・学生、労働者、30代~50代の真ん中世代という3分野で、系統的に会議や交流会を行い、独自のとりくみを推進したことは、世代的継承の「前進の芽」をつくりだす大きな力となったと確信します。県・地区委員会でも、3分野での独自の系統的なとりくみをすすめたところで変化が始まっています。今大会期の青年・学生分野の前進の教訓はここにあることを強調したいと思います。
《青年・学生、労働者、真ん中世代の党勢倍加の方針は、全党によびかけたもの》
二つは、青年・学生、労働者、真ん中世代の党勢倍加の方針は、青年・学生・職場の支部や党機関の専門部にだけ提起したのではなく、全党によびかけたものだということです。
大阪府委員会では、全地区に3分野の体制をつくろうと、青年・学生で64人、真ん中世代で111人、職場で99人の援助者を配置しています。昨年7月には"若い人のことは若い人で"という気分を変えようと、「ベテラン世代と党機関の役割を考える学習交流会」を開催し、若い世代、真ん中世代とともに活動してきた5人のベテラン党員の報告が感動をもって受け止められ、地区とともに自治体・行政区まで自らの課題として世代的継承にとりくむ機運が強まっているということです。
《青年・学生、現職労働者、真ん中世代自身が党をつくる力をもっている》
三つは、青年・学生、現職労働者、真ん中世代の党員自身が、党をつくる力をもっており、この力の発揮を援助しようということです。三つの分野で党をつくる主人公は、何よりも青年・学生党員、現職の労働者党員、真ん中世代の党員です。党全体のなかでは少数かもしれませんが、同世代の願いに心をよせ、要求運動でも党勢拡大でも、新しいとりくみを探究する力をもった党員です。党建設の「中軸」にふさわしく、若い党員、労働者党員をリスペクトし、その力が発揮される党へと成長することが重要です。
前大会時比300%の党員数となっている北海道・札幌中央地区の青年支部では、週1回の支部会議での学習と交流を力に、民青班の活動や若者憲法集会のとりくみを通じて青年・学生党員自身が、民青への加盟、入党を訴えて仲間を迎えています。地区が、「青年支部の支部会議には必ず参加するが、仕切ることは絶対にしない」「青年党員の拡大に青年自身が先頭にたつ状況をつくる」という姿勢で援助していることは教訓的です。
青年・学生、現職労働者、真ん中世代の党員と、この世代の機関役員、地方議員のみなさんに心からよびかけます。みなさんの世代のなかに、強く大きな党をつくり、平和と社会進歩の事業を進めようではありませんか。中央委員会は、みなさんの多様で創造的な力が発揮される党活動を全党に広げていく決意です。ともに力をあわせて、若い世代、真ん中世代の「党勢倍加」をやりとげましょう。
党の質的強化――政治的・思想的に強い党へ
次に、党の質的強化について述べます。七つの強化方向でも、学習、党費納入、支部会議など質的強化の課題を重視しています。10中総の閉会あいさつでよびかけられた、「全支部・全党員を結集する党に成長してこそ、国民の多数を結集していくことができる」――これは党大会に向けた合言葉となりましたが、第29回大会期の合言葉にして、党の質的強化をはかろうではありませんか。
質的強化のなかで、とりわけ強調したいのは、政治的・思想的に強い党をつくることです。党の100年余の歴史の教訓に照らしても、この4年間の世界と日本の激動に照らしても、情勢のジグザグがあろうと揺らぐことなく綱領的・世界観的確信をもち、現状の困難や支配勢力の攻撃に決して負けない気概にあふれ、目標にむかって団結して頑張りぬく党へと成長することが、いまほど大事な時期はありません。質的にも、多数者革命を推進する使命にふさわしい党の建設に力を注ごうではありませんか。
《党生活確立の「3原則」を重視し、決定の読了と一大学習運動を》
党の質的強化をはかるため、党建設の基本方針としてきた「党生活確立の3原則」(「①支部会議に参加する」「②日刊紙を購読する」「③党費を納める」)を重視し、うまずたゆまず全党に広げていく努力をよびかけるものです。党勢拡大を、全支部運動にするとともに、全党員運動にしようとするならば、一番の土台は、この「3原則」にあります。
あわせて、綱領、規約、科学的社会主義、党史の一大学習運動にとりくむこと、党大会決定、中央委員会総会決定を読了し、討議に参加して活動することを、政治的・思想的に強い党をつくる中心的課題として重視することをよびかけます。これは、どんな複雑な情勢に直面しても、日本共産党員が、その初心を生かし、党員として生き生きと活動するうえで欠かすことのできない課題でもあります。
現状では、大会決定・中央委員会総会の決定を読了する党員が3~4割、綱領の読了が5割、党費の納入が6割台、日刊紙を購読する党員が6割となっており、抜本的打開が求められています。「党生活確立の3原則」、決定の読了と一大学習運動で、党の質的強化へ、ともに奮闘しましょう。
《三つのスローガンで機関活動の強化を》
決議案は、「双方向・循環型で支部を援助する党機関になろう」「政治的・思想的に強い党機関になろう」「若い世代、女性役員が生き生き活動し成長する党機関になろう」という三つのスローガンで党機関の活動強化をよびかけました。
党の現状に照らせば、"力を持っている人を探して党機関を構成する"というだけでなく、"役員の成長をはかりながら党機関の体制・活動を強化する"という構えで、新たな役員を配置し、励ましあって成長する、率直な議論や相互自己批判も行って、組織として強くなることが求められます。決議案はその立場から「こういう党機関に成長しよう」という三つの柱をコンパクトに示しました。党大会現勢を突破した福岡県委員会をはじめ、「大運動」でも豊かな経験・教訓が生まれています。「わが地区・わが県をこう変える」という大志とロマンをもって、党機関の活動強化をはかりましょう。
意思決定機関における女性の比率を高めることは、党機関の強化をはかるうえで重要な課題となります。いま都道府県・地区委員会とも3割を超える女性役員が活動していますが、日本社会全体のジェンダーギャップが大きいことによるさまざまな困難にも直面しながらの奮闘だと思います。さらに比率を高めるために、会議の持ち方など、党機関の活動の改善を進めながら、若い世代、女性の役員が生き生きと活動できる党機関へと成長しようではありませんか。
《ジェンダー平等、ハラスメントの根絶にさらなる努力を重ねる》
この4年間、ジェンダー平等、ハラスメント根絶のために、各地の都道府県・地区委員会で学習会が開かれ、党内にある弱点に真摯(しんし)にむきあい、率直に話し合う気風が生まれています。しかし、この自己改革の努力は途上です。学習や率直な議論、日々の活動での不断の努力を続けることをよびかけます。
とりわけハラスメントは、被害者の尊厳をきずつけ、党員の成長を妨げ、党組織の民主的運営と団結を損なうものであり、その根絶は、党建設にとってきわめて重要な課題となっています。ハラスメントの社会的・国際的到達点を学ぶとともに、年齢や性別、経験の違い、任務の違いによって「権力的関係」が生じうることをみんなが自覚し、だれもが互いに対等な仲間として尊重しあうあたたかい人間集団をつくる努力を行いましょう。ハラスメントが起こったさいには、問題への対処を先延ばしにしたり、あいまいにしたりせず、事実と党規約にもとづいて、真摯に解決に向き合う努力をいっそう重視しましょう。中央として、ハラスメントを生まない党活動をつくるために、さらに力をつくす決意です。
「第4章 世界資本主義の矛盾と科学的社会主義」について
"21世紀の日本共産党の「自由宣言」"――「三つの角度」から明らかに
大会決議案第4章が、三つの角度から「人間の自由」との関わりで社会主義・共産主義の魅力を明らかにしたことについて、新鮮な感動と歓迎の声がたくさん寄せられています。"21世紀の日本共産党の「自由宣言」"ともいうべき文書ではないでしょうか。第4章を深めるうえで、「しんぶん赤旗」日曜版の新年合併号の特集は、その理論的内容について解明していますので、ぜひ学んでほしいと思います。
中央委員会報告として、「三つの角度」で整理した理論的意味について述べます。
資本主義批判こそ社会主義・共産主義の原点
大会決議案は、第一の角度として、「『利潤第一主義』からの自由」をあげました。「利潤第一主義」こそが、資本主義が生み出すあらゆる害悪の根源であり、「利潤第一主義」から「自由」になることによって、人間は、搾取や抑圧、貧困と格差、恐慌や不況、環境破壊から「自由」になり、「人間の自由」ははるかに豊かなものとなります。
これを第一の角度に位置づけたのは、資本主義批判こそが、社会主義・共産主義の原点だからです。社会主義・共産主義を語ろうとすれば、まず資本主義がもたらしている害悪をどうするのかから始まります。世界でも日本でも、深刻な現実から資本主義のシステムそのものを問う動きが起きています。「資本主義社会で人類の歴史はおしまいだろうか」という問いかけが、社会主義を語る出発点となります。
資本主義の害悪はどこからくるのか。生産の目的・動機が、資本のもうけの最大化――利潤をひたすら増やすことに置かれているからにほかなりません。この「利潤第一主義」は、生産手段――工場、機械、土地など生産に必要なものが資本の手にあることから生まれています。生産手段を資本の手から社会全体の手に移す「生産手段の社会化」によって、生産の目的は、社会と人間の発展のための生産へと変わる。これが社会主義的変革の中心となります。
「人間の自由で全面的な発展」――第一の角度の「自由」が条件をつくる
第二の角度は、「人間の自由で全面的な発展」です。第一の角度の「自由」は、抑圧・支配からの「自由」――その意味では消極的な「自由」ですが、第二の角度での「自由」は、自分の意思を自由に実現することができるという意味での「自由」――その意味では積極的な「自由」です。
社会主義・共産主義の社会における「自由」は、「利潤第一主義」からの「自由」にとどまるものではありません。真の自由の輝きは、その先、すなわち「人間の自由で全面的な発展」が可能となるところにあります。
第一の角度からの「自由」を得ることは、第二の角度の「自由」を得る条件になります。「利潤第一主義」からの自由――「生産手段の社会化」によって、人間による人間の搾取がなくなり、社会のすべての構成員が平等に生産活動に参加するようになり、1人当たりの労働時間は抜本的に短くなる。資本主義に固有の浪費もなくなる。
労働時間の抜本的な短縮で、一人ひとりが十分な自由時間をもてるようになれば、誰もが、自分の中に潜在する力を存分に発展させることができる。それは社会全体の発展につながり、「万人の自由な発展」につながる。第一の角度の「自由」の土台のうえに、「人間の自由で全面的な発展」がはかられる社会が花開くのです。
「自由のない社会」にならない保障を示す
第三の角度は「発達した資本主義国の巨大な可能性」です。発達した資本主義国からの社会変革は、「人間の自由」という点でも、はかりしれない豊かな可能性をもちます。資本主義の発展のもとでつくりだされる「五つの要素」――高度な生産力、経済を社会的に規制・管理するしくみ、国民の生活と権利を守るルール、自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験、人間の豊かな個性――などの成果を引き継ぐことになるからです。
旧ソ連、中国などのイメージから「社会主義は自由のない社会」という誤解が存在しています。旧ソ連や中国が、なぜ自由のない社会になったのか。革命の出発点の遅れという問題が大きく作用しました。識字率も低い、自由や民主主義もない、選挙の経験もない遅れた社会から革命を始めたら、指導者は、自由と民主主義をつくるための特別の努力が必要でした。しかし、その努力は十分にやられず、逆にスターリンによる大量弾圧が行われ、一党制が固定化されました。それは中国にも輸出されました。こうした歴史的事情が、「自由」という点で全く逆行した重大な問題点につながったのです。
しかし、日本では、決して同じことは起こりません。綱領では、将来にわたって、資本主義のもとでつくられた自由や民主主義など価値あるもののすべてを引き継ぎ、豊かに花開かせると約束しています。それは綱領上の約束にとどまるものではありません。その保障は発達した資本主義を土台にして社会変革を進めるという事実のなかにあるのです。
「自由宣言」は若者に未来を語る大きな力になっている
こうした「人間の自由」にかかわる三つの角度からの社会主義・共産主義の目的・特質は、若者にとって大きな魅力となっています。11月に開催した「若者タウンミーティング」では、党の政策とともに、未来社会論への共感が強く寄せられました。
新潟県では、「社会主義を学びたい」と10月に民青に加盟した青年労働者が、「若者タウンミーティング」や若い世代への「入党のよびかけ」を読んで、社会主義・共産主義が「人間の自由で全面的な発展」がはかられる社会であるという部分に、「ここに一番共感します」と言って、11月に入党を申し込んでいます。
11月には、高校生たちが愛知県委員会を訪ねて、「社会主義はソ連や中国のような自由がない社会だと思う。共産党はどう考えていますか」と質問したといいます。県委員会で対応した方が、決議案第4章を渡して読んでもらうと、「学校で習ってきたことやニュースで見たこととは全然違った」と、身を乗り出して話を聞いたということです。その後「社会主義について学びたい」と民青の加盟にもつながっています。
大会決議案が明らかにした社会主義・共産主義論は、自主独立の路線と61年綱領確定以来の全党のたたかい、科学的社会主義をマルクス、エンゲルスにたちかえって根源的にとらえなおす党の理論的探求、2004年の綱領改定、2020年の綱領一部改定など、理論と実践の両面での不屈の活動が実を結んだものです。このことを、先人たちへの深い敬意をこめて強調したいと思います。
決議案が示す壮大な「人間の自由」という人類史の未来への展望は、わが党にしか語ることのできないものです。この決議案で、日本共産党の魅力を大いに語り、若い世代を結集し、強く大きな党をつくろうではありませんか。
「第5章 1世紀の歴史に学び、新たな1世紀に向かおう」について
『日本共産党の百年』と二つの記念講演を学び、新たな歴史をつくる力に
第5章についてです。決議案の討議を通じて、全国で党史を学ぼうという意欲が広がっています。『百年』史は、タブロイド判で5万部、単行本で7刷・3万部の発行となっています。著名な識者からも「日本共産党の1世紀の歴史は、近代日本の100年を映し出す鏡」などの評価が寄せられました。世界史や日本史とともに党史を語れる政党は日本共産党だけだという声が広がっているのは、大変うれしいことです。
1世紀におよぶ党の歴史を学ぶことが、新たな1世紀のたたかいに挑むうえでどんな力をもっているか、『百年』史と二つの記念講演への感想をふまえて、次の点をあげたいと思います。
第一に、困難や試練に対して、どういう姿勢で立ち向かい、どう成長をはかっていくのか、大局的な展望をつかむ力となり、たたかいへの励ましとなっていることです。"今の試練も必ず乗り越えられる""時代をきりひらくチャレンジの大切さを感じる"などの感想がたくさん寄せられています。弾圧と迫害のなかでの戦前のたたかい、ソ連・中国の激しい干渉とのたたかい、61年綱領確定以来の国内の支配勢力との攻防など、「たたかいの弁証法」とよばれる開拓と苦闘の100年を学ぶことで、強く大きな党づくりに挑む決意が培われていることも特徴です。
第二に、党の綱領路線、組織の到達点を、生きた人間のたたかいの歴史のなかでつかみ、党の路線への深い確信と誇りを呼び起こしています。"先輩たちの不屈のたたかいのうえに今の共産党があるとわかった""戦前の困難な時代に女性たちが命がけで党に参加したことに感動した"など、熱い感想が寄せられています。党の政治的・理論的到達点、民主集中制の組織原則などには、いずれも先人たちのたたかいの歴史が刻まれています。このことが感動をもってつかまれており、日本共産党がどういう政党か、深く理解するうえで、『百年』史が大きな力になっています。
第三に、さまざまな反共攻撃に対して、党の真実の姿を語り、攻撃を打ち破ろうという自信が生まれています。この間、創立100周年にかこつけて、「誤りを認めない党」などの攻撃が、さまざまなメディアを使って行われてきました。『百年』史と二つの記念講演は、わが党の誤りや歴史的な制約にも事実と道理にもとづいて誠実に向き合い、国民の前に明らかにしています。若い世代からも"自信をもって語れる"との感想が寄せられていることは大変心強いことではないでしょうか。
この決議案の実践として党史の一大学習運動にとりくみ、次の1世紀にむかって新たな歴史をきりひらく力としようではありませんか。
第28回大会期の苦闘の中での成長を、新たな1世紀に向かう大きな糧に
わが党の100年余の歴史に、順風満帆な時期、坦々(たんたん)と成長した時期はひと時としてありませんでした。第28回大会期の4年間も、新たに党史に刻まれる試練の連続でした。
前大会直後から新型コロナ・パンデミックに襲われ、私たちは国民の苦難軽減という立党の精神を発揮し、命と暮らしを守り抜くために全力をあげました。この危機は党建設にも多くの困難をもたらしましたが、私たちは、党活動の新たな探求・開拓にとりくみ、党づくりを決して止めることなく奮闘しました。
2021年の総選挙では、党史上はじめて野党共闘で政権交代を掲げ果敢に挑戦しました。このたたかいは支配勢力を追い詰めましたが、それは激しい妨害と抵抗を呼び起こし、日本共産党と野党共闘にたいする熾烈な攻撃が襲いかかりました。しかし私たちは、綱領を国民に語る新たな奮闘でこたえ、いまも続くこの攻防のプロセスのもとで、今度は、自民党政治を根本から揺るがす情勢の大激動を起こしています。
22年に始まったロシアのウクライナ侵略、これに乗じた軍事力増強・憲法9条破壊の大逆流に対しても、改定綱領を力に、平和と進歩の世界の本流がどこにあるかを明らかにして奮闘し、理性的な提案と働きかけで平和の構築に力をつくしています。これは国民の希望ともなっています。
23年には、民主集中制にたいする反共キャンペーンが加わりました。しかし私たちは、この攻撃に正面から立ち向かい、党の組織のあり方を堂々と国民に示し、大会決議案の全党討論と「大運動」によって、規約にもとづく団結と統一を強め、党づくりの新たな前進の芽をつくりだしてこの大会を迎えています。
この4年間、試練に立ち向かい、苦闘と開拓をつづけ、そのたたかいを糧に新たな成長を遂げようと奮闘したからこそ、大会決議案は新たな理論的な到達を築いています。決議案をさらに練り上げ、全党が新しい1世紀に飛躍する力となる、歴史的党大会にしようではありませんか。以上で報告を終わります。