府施設廃止を市長指図
「中之島図書館を全部あけて、(民間)活用をやってもらいたい」―。橋下徹大阪市長が突然こう切り出しました。公営施設の民営化・廃止について議論した6月19日の第14回大阪府市統合本部会議のことです。
頭越しの提案
橋下市長が、存続予定のはずだった府立中之島図書館を廃止し、建物を民間活用する方針を打ち出したのです。当日の議題には予定されておらず、「本部長」の松井一郎知事の頭越しの提案。市長が府立の施設の存廃を決めるという「橋下独裁」による意思決定を象徴するような場面でした。
会議終了後、記者に囲まれて「僕らの立場からはあんなところに図書館なんか置く必要はない」と言い放つ橋下市長。松井知事は「(民間活用すると)すごいスポットになりますよ」と追従するのみでした。
橋下市長が就任直後の昨年12月末に立ち上げた府市統合本部。「事業統合」など、府市共通の重要事項を協議する場と位置づけられています。市職員1万人の非公務員化や市営地下鉄・バス民営化などの方針が矢継ぎ早に決められています。
本部会議を開くのは、橋下知事時代に府庁が部分移設した咲洲庁舎です。本部長は松井知事、副本部長が橋下市長。この2人と元経済企画庁長官の堺屋太一氏ら特別顧問が中心となって議論するかたちです。
「"大阪都"はすでに機能している。その中心が府市統合本部。橋下さんの統治機構の司令塔だ」。大阪のある行政幹部職員は、声をひそめて語ります。
「本部長の松井知事には実際的な権限がなく、決められるのは橋下市長だけ。その意向に沿うかたちで特別顧問たちが極端な公務員削減や民営化をあおっている」
厳罰規定による強権支配を狙う教育基本条例案、職員基本条例案も同様です。議会で議論する前に統合本部会議でほぼ概要が決められました。
"つるし上げ"
第5回統合本部会議(2月8日)では、府市幹部や教育長らも出席して条例案を議論。極端な厳罰主義などに当局担当者が少しでも難色を示すと橋下市長がたたみかけるように批判します。
府教育長 正直申し上げて、(職務規定違反した教員を)現場に戻さないといったことまでは考えていない。
橋下市長 職務命令を守りませんよという人を現場に戻すのか...そんなのは許せません。だからおかしいと言っている。
「まるで、つるし上げのようだった」。その光景を目の当たりにした関係者の感想です。
大阪市在住で府市の行政に詳しいジャーナリスト吉富有治さんは、こう指摘します。「統合本部は橋下さん主導での政策決定の場になっている。本来なら法的根拠を与え、議会と統合本部の関係性をもっと明確にすべき。橋下さんが発言すれば、それが決定事項になるかのような印象は、有権者や議会を軽んじていることになるのでは」
(「赤旗」2012年7月4日付)
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