議会無視で"鶴の一声"
「何が無駄かといえば府議会、市議会。これほど無駄なことはない」。橋下徹大阪市長の発言が波紋を広げています。
首長と府議、市議が府市再編の具体像について議論する場として新設された「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」での発言(第2回、5月17日)です。橋下市長は、居並ぶ府議や市議を前に「府議会と市議会で議論していることは、ほとんど同じ」と言い放ちました。
大阪府市統合本部を「独裁の司令塔」とする手法をすすめる橋下市長。その議会軽視ぶりは目に余ります。
「橋下さんの手腕は評価している」という維新の会の府議も「本来、議会で徹底的に議論していくべきことが、統合本部の段階で決まってしまっている気がする。重要なことを決定する場合でもわれわれにはあまり説明のないことが多い」と不満をにじませます。
市長を中心に
府市統合本部の意思決定の仕組みは、こうです。
まずは本部会議で橋下市長を中心に政策議論を実施。そこで決まった方針をもとに府市で「プロジェクトチーム」(PT)を設置して調整や案づくりをすすめます。さらにPTのもとに「大都市制度」「広域行政・二重行政」などについての「タスクフォース」という名の特別チームを設置し、府市一体となってさらに具体化を検討します。
橋下市長の意向が、またたくまに府市の事務方によって具体的なかたちとなっていくというシステムです。
これほど強大な権限を発揮する統合本部ですが、その設置は条例化するなどの議会での議論や議決を経ていません。「大阪府統合本部設置要綱」という9条からなる簡単な要綱が、設立の唯一の根拠となっているのです。
その第2条には、統合本部が取り扱う事項を広範囲にあげています。さらに「(知事と市長が)指定する事項に関すること」も含むと記述。事実上、すべての事項に権限が及んでいるわけです。
統合本部会議で府議、市議は議論に参加できません。「議員傍聴席」で聞くだけです。議員傍聴席を設けたのは6月19日の第14回から。それまでは無視されていました。
議員の議論の場としては「大都市制度推進協議会」があります。その場では「府市統合の大枠について話し合うが、個別案件など細かいことは議題にならないと思う」(府の統合本部事務局担当者)といいます。
異常なやり方
日本共産党大阪府議団の宮原威団長は厳しく批判します。「橋下市長の"鶴の一声"ですべてを決めるという異常なやり方。松井知事は、統合本部で市長の言うことを追認するだけです。府民、市民やその代表である議会を無視する独裁的手法は許せません。統合本部のもとで決められる、福祉切り捨てや民営化などの悪政と徹底的にたたかっていきます」
(「赤旗」2012年7月5日付)
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