しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

競争強いる政治介入

写真

全国学力テストを受ける中学生


写真

生野照子前大阪府教育委員長

 「2014年度には府立高校の学区が撤廃される。中学3年間の評価をはかる府内統一テストが絶対に必要になる。中1、中2のテストも必要だ」。橋下徹大阪市長は12日、府内の中学生の全学年を対象に新たな「府内統一テスト」を導入したいと表明しました。

 松井一郎府知事も「公立も広い競争になる中で進路指導の統一的な物差しになる制度が絶対に必要だ」と同調(13日)。府教育委員会に導入への圧力をかける方向です。

府内新テスト

 「強行すれば過度な競争教育の激化など矛盾の拡大は避けられません」。こう話すのは、大阪教職員組合の小林優書記長(54)です。

 「府教委はすでに11年から小6と中3を対象に府独自の学力テストを実施しています。全国学力テストが全校実施から抽出調査に変わったことに不満をもった橋下氏が始めさせたものですが、この府独自テストも今年は、学校別結果の開示による学校の序列化などを懸念した12市町が不参加を決めました。児童・生徒の参加率も55%と低迷しています」

 橋下氏のテストへのこだわりは際立っています。

 「そもそも橋下さんが教育に強く介入しだしたのもテストの結果がきっかけだったんですよ」。ジャーナリストで元大阪市教育委員長の池田知隆さん(63)は語ります。

 08年8月、全国学力テストの結果で大阪府が2年連続の低位だったことを受け、橋下氏は「このザマは何だ」と教育委員会と現場の教職員をののしりました。

 池田さんは「彼はそこから競争原理の導入をはっきりと打ち出した」と指摘します。

結び合う力を

 当時、府教育委員長だった心療内科医の生野照子さん(69)=浪速生野病院心身医療科部長=が橋下氏の教育観に一番違和感を覚えたのは、その競争中心主義だったといいます。

 「もともと子どもは競争が好き。駆けっこなんかでもしたがる存在なんです。でもごちそうでも食べろと強いられたら拷問になるのと一緒で、上から強いられた競争は子どもの伸び伸びとした走りを抑えます」

 生野さんはこれまで西成区や浪速区で、心を病んだ子らの診察にあたってきました。

 「優等生の子は、根を張らないまま形だけを整えられて、さあ伸びろといわれて折れた木のようでした。また、大阪には家庭環境そのものがしんどい子も多い。そういう子たちは自分自身を支えるだけで精いっぱいです」

 生野さんはいいます。

 「おとなが寄り添うことが必要なんです。それなのに、いまテスト競争を強めて底力のある子が育つのでしょうか。自分を信頼し、人と結び合う中で力を発揮する。そういう子どもの根をつくる教育がいま求められているのではないでしょうか」

(つづく)

(「赤旗」2012年6月24日付)

[目次]


pageup