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学力危機、本当の背景

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会見で教育基本条例案に再び反対するアピールを発表する池田知隆元大阪市教育委員長(左)ら=2月28日、大阪市役所

 「橋下さんは知事時代から大阪の学力危機の本当の背景には目を向けていませんでした。ぜんぶ教員がサボっていて、組合が悪いという方向に話をすり替えていったんです」。「教育基本条例案」に鋭い批判を浴びせてきた元大阪市教育委員長の池田知隆さん(63)はそう語ります。

悪化する生活

 池田さんの考える「大阪の学力危機」の背景とは何でしょうか。

 一つは、子どもたちの生活環境の悪化です。大阪府の貧困と格差の拡大は全国でも際立っており、2010年段階の大阪の非正規雇用労働者比率は全国34・5%に対して44・5%に達していました。生活保護の保護率は10年度で3・2%と全国平均の2倍。就学援助率は約3割、全国一です。

 「離婚率が高いうえ、持ち家率が低いので、家庭も安定しない。この中で目立つようになってきたのが、白紙の答案です。大阪全体の大学進学者数はほとんど変わらないのに、最初から学びを放棄した子が増えている。学力の二極分化が激しいのです。全国的にも同じ傾向が出てきていますが、大阪はその先取りだと思います」

 もう一つが、教員の現状です。

 「大阪の教員は、教員数と子どもの数との比較で全国平均より5429人少ない。しかも比較的困難な生徒も多い。だけど私は先生は熱心な方が多いと感じてきました」。その中で疲れ切った大阪府の教員の休職者の割合は年々増加。精神疾患による休職率は0・87%で全国平均(0・59%)を大きく上回っています(10年度)。

全国で最悪に

 大阪教職員組合の小林優書記長(54)はいいます。「橋下さんは『教育日本一』を掲げていましたが、結局やっていることは逆なんです」

 橋下府政での教育費の動きを決算ベースでみると、08年2月就任時の約7406億円(07年度)から10年度の約6464億円へと約942億円も減らされたことがわかります。

 「大阪ではこの間、必要な正規教員を採用せず、非正規教員で代替するというやり方がとられてきました。その結果、病気休職者などの代わりが長期間にわたって配置されず、授業に穴が開くという異常事態が広がっています。少人数学級でも、この4月から大阪が全国で最悪の条件の府県の一つになりました」

 前出の池田さんはいいます。

 「本来、政治や行政は、教育の条件整備を進めるとともに子どもの生活環境全体を改善するような対応策を打っていくべきなのです。首長が教育内容に介入し、学校や子どもたちをいくら競争に駆り立てても教育が良くなるはずがありません」

(つづく)

(「赤旗」2012年6月25日付)

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