73、安保・基地・自衛隊
2021年10月
安保法制=戦争法を廃止し、「戦争する国」づくりをストップする
自公政権が国民の空前の反対世論や運動を無視して、安保法制=戦争法を強行成立させてから6年余が経過しました。安保法制には、①「戦闘地域」での米軍等への兵站の拡大、②戦乱がつづいている地域での治安活動、③地球のどこでも米軍を守るための武器使用、④集団的自衛権の行使という、自衛隊の海外での武力行使を可能にする4つの仕組みが盛り込まれています。ひとたびアメリカが戦争をおこせば、世界中で、切れ目なく自衛隊が参戦する道を開くもので、この6年間、同法制下で日米軍事一体化、戦争協力体制づくりがこれでもかと進んでいます。政府・自民党からは、「台湾海峡」有事が発生すれば、安保法制が規定する「存立危機事態」(日本による集団的自衛権の行使が可能)に該当するとの発言が出るなど、その危険性は明らかです。
自衛隊による米軍防護は昨年25回にも
安保法制で可能となった、自衛隊が米軍の艦艇や航空機などを守る米軍防護は昨年、25回に達しました。はじめて実施した17年が2回ですから、まさに激増といえます。米軍などの「武器等防護」を規定した自衛隊法95条の2によれば、自衛隊と連携して訓練や警戒監視を行っている米軍が攻撃を受けたときは、自衛隊が武器を使用して反撃できます。状況次第で「平時」から「戦時」に移行する可能性をもつ非常に危険な活動です。しかも政府は実施時期や具体的内容をそのつど発表しておらず、国民が知らない間に戦闘が発生する事態になりかねません。
日米共同訓練も質量ともにエスカレート
安保法制施行をうけた2018年3月、陸上自衛隊は「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団を発足させました。それ以降、同機動団と米海兵隊による共同訓練が日本内外で相次いで行われています。オスプレイや水陸両用車で着上陸し、市街地戦闘をおこなう訓練などを繰り返しています。今年7月には、中国への対処を念頭に、陸上自衛隊と米陸軍が奄美大島で、対空戦闘の共同訓練も初めて行いました。これ以外にも、航空自衛隊と米空軍、海上自衛隊と米海軍などの間でも共同訓練が相次いでいます。空自のF15戦闘機と、核兵器搭載可能な米空軍のB52戦略爆撃機が、あるいは海自の護衛艦と米海軍の空母が並びながら訓練する姿が日常茶飯事となっており、日米共同の戦争体制づくりは着々と進んでいます。
自衛隊の空母から米軍戦闘機が発着艦――ここまできた日米一体化
防衛省は現在、海自の「いずも」型護衛艦を空母化する改修を進めていますが、今年10月3日には、「いずも」から米軍のステルス戦闘機F35Bを発着艦させるテストを行いました。同省は、テスト成功について「日米の相互運用性の向上に資するもの」と発表し、米海兵隊トップもすでに、「自衛隊のパイロットが米海軍の艦艇に着艦し、米海兵隊のパイロットが海上自衛隊の艦艇に着艦する、これが最終目標だ」と述べていました。究極の日米軍事一体化といえます。安保法制によって、「重要影響事態」などで、発進準備中の米軍戦闘機に自衛隊が給油することが可能となりました。今後、自衛隊保有の空母が、米軍の出撃拠点になるという事態さえ絵空事ではなく、ここにも日米が共同して戦争にのりだす危険性が鮮明になっています。
新たな自衛隊派兵の実績づくりも
安保法制にもとづき、自公政権は、海外派兵している自衛隊への新任務の付与や、新たな派兵の実績づくりも進めています。2016年11月には、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵していた自衛隊に「駆けつけ警護」などの新任務を付与し、自衛隊員が海外で「殺し殺される」危険が現実のものとなりました。19年4月からは、エジプト・シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団(MFO)」に、司令部要員として自衛隊員2名を派遣。安保法制にもとづく「国際連携平和安全活動」の初適用です。国連が統括しない多国籍軍への参加の突破口となるもので許されません。
――自衛隊を海外で戦争させる安保法制を廃止します。
自衛隊強化を許さず、大軍拡から軍縮へと転換する
安保法制=戦争法のもと、大軍拡が進むとともに、自衛隊が、「専守防衛」の建前をかなぐりすて、海外で戦争する部隊へと急速に姿を変えています。岸田新首相は、「敵基地攻撃」能力の保有に意欲を示すなど、安倍・菅政治を継続・強化する姿勢で、10月8日の所信表明演説では、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定に取り組むこと、日米同盟を更なる高みへと引き上げていくことを表明しました。
「敵基地攻撃」能力の保有、軍事費GDP比2%は亡国の道
防衛省は来年度予算概算要求で、5兆4,797億円と、8年連続過去最高額となる軍事費を計上しました。民主党政権最後の2012年度予算では、軍事費は4兆7,138億円でしたから、第二次安倍政権以降の膨張ぶりは明らかです。
今年度予算、来年度予算概算要求の軍事費で特徴的なのは、「いずも」型護衛艦の空母化や、長距離巡航ミサイルの保有を着実に進めていることです。政府は従来、「攻撃的兵器を保有することは、自衛のための最小限度の範囲を超えることになるから、いかなる場合にも許されず、したがって、例えばICBM、長距離爆撃機、あるいは攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されない」としてきました。いま進んでいる事態は、政府自ら国民に約束してきた「専守防衛」を根本から覆し、「敵基地攻撃」能力、つまり他国に打撃を与える能力を持つということです。「いずも」型空母には、米軍が他国への地上攻撃にも使用しているステルス戦闘機F35Bを搭載する予定で、その取得にも余念がありません。
「敵基地攻撃」に転用できる長距離ミサイルの取得にも前のめりで、国産開発の地対艦誘導弾の射程を大幅に延ばしたり、外国製ミサイルを導入することに着手しています。
自民党は今回の総選挙政策で、「弾道ミサイル等への対処能力を進化させるとともに、相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組みを進めます」とし、「敵基地攻撃」能力の保有を明記。同時に、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指します」などとしました。仮に日本の軍事費がGDP比2%となれば、現在の約2倍、11兆円に迫る額となります。もしそんなことを許せば、北東アジア地域における軍事対軍事のエスカレーションが極限に達するとともに、国民生活も完全に破たんするという亡国の道を歩むことになります。絶対に阻止しなければなりません。
米国製兵器「爆買い」、「思いやり予算」をやめる
軍事費の問題では、米国製兵器の「爆買い」も重大です。その象徴は、一機100億円以上もするF35の大量購入です。政府は2018年末、民主党政権時代に導入を決めたF35Aの42機に加え、新たに105機(F35A=63機、F35B=42機)も導入することを決定しました。これは、当時の安倍首相がトランプ米大統領の「バイ・アメリカン(米国製品を買え)」の要求に積極的に応えたもので、それが現在の軍拡の大きな要因となり、国民生活を圧迫しているのです。こんなことをつづける必要が一体どこにあるのでしょうか。
さらに、日米地位協定上も日本が払う義務のない米軍に対する「思いやり予算」(来年度概算要求で2,029億円)をこれからもつづけるのかということも問われます。1978年度から始まった同予算は、地位協定24条が、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と規定していることに真っ向から反します。米国のトランプ前大統領は、同予算を4倍化するよう要求していたとの報道もあります。現在、支出の根拠となる新たな特別協定が日米で協議中であり、総選挙の結果がその行方を大きく左右します。
――「戦争する国」づくりのための大軍拡を転換し、軍縮をめざします。
――米国製兵器の「爆買い」をやめ、暮らしの予算を増やします。
――日米地位協定上も義務のない「思いやり予算」を撤廃させます。
南西諸島における自衛隊機能強化を許さない
自衛隊の変容という点では、「米中対立」が激しさを増すなか、対中国を念頭にした南西諸島地域での自衛隊基地・機能がこれでもかと強化されていることは重大です。2016年3月、台湾に近い日本最西端の沖縄・与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊が配備されたのを皮切りに、18年3月には、陸上自衛隊に「日本版海兵隊」と呼ばれる「水陸機動団」が発足、19年3月、艦船を攻撃する陸自の地対艦ミサイル部隊、航空機を迎撃する地対空ミサイル部隊などを鹿児島・奄美大島に配備、20年3月、沖縄・宮古島にも地対艦・地対空ミサイル部隊が配備されました。これに加え、今後は沖縄・石垣島への地対艦・地対空ミサイル両部隊の配備、沖縄本島への地対艦ミサイル部隊の配備も狙っています。これらのミサイル基地には、射程を大幅に伸ばし、「敵基地」攻撃に転用できる12式地対艦誘導弾をはじめとした長距離ミサイルが配備される可能性が強まっています。
さらに、鹿児島・馬毛島を自衛隊の訓練拠点とする計画が進んでいることも大問題です。これが実現してしまえば、戦闘機の離着陸訓練、「いずも」型空母に搭載するF35Bの発着艦訓練などが行われる見込みです。また、馬毛島では、米軍の空母艦載機離着陸訓練(FCLP)の移転も行われようとしています。これらは、軍事対軍事のエスカレーションを招き、地域の緊張を高めるとともに、かりに有事になった場合、真っ先に攻撃対象となるなど危険極まりないものです。
――戦争を招きかねない自衛隊の増強に反対し、問題の平和的解決をめざします。
米軍の横暴勝手をやめさせ、日米地位協定を抜本改定します
日本には戦後76年を経たいまも、沖縄をはじめ全土に132もの米軍基地(米軍専用78、自衛隊との共同使用54)がおかれています。沖縄のような人口密集地に外国軍の大部隊が居座っている国、首都圏に外国軍の巨大基地を抱えている国は世界中で日本しかありません。しかも在日米軍基地はアメリカの世界戦略の前線基地であり、その部隊は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、その名の通り、世界中で起こる紛争に真っ先に殴り込むことが任務です。「日本を守る」ためのものではありません。いま、この米軍基地が、安保法制=戦争法の施行と軌を一にして大増強されています。
「普天間基地の危険性除去」の議論は完全に破たん
辺野古新基地建設が強行されている沖縄。政府は、「普天間基地の危険性の除去」を口実にしていますが、実際には普天間返還どころか基地被害はさらに激化しています。普天間基地所属機をめぐっては、CH53E大型輸送ヘリが2017年10月に東村高江で不時着・炎上したのにつづき、同年12月には宜野湾市緑ケ丘保育園の屋根に部品を、同市普天間第二小学校の校庭に窓を相次いで落下させて大問題となりましたが、その後も同様の事態は繰り返されています。今年8月には、MV22オスプレイが飛行中に長さ1メートル超のパネルを落下させ、一歩間違えば県民の命を奪いかねない事態を発生させました。この相次ぐ米軍機事故の背景には、普天間基地における離着陸回数が増加の一途をたどっていることがあります。昨年度の米軍機の離着陸回数は18,970回で、前年より13%も増えて過去最高となり、今年度はそれをさらに上回るペースとなっているのです。日米両政府が普天間基地の全面返還に合意したのは、1996年の橋本・モンデール会談で、それからすでに25年が経過しています。四半世紀も過ぎているのに返還されないのは、行き詰まりが明らかな辺野古への「移設」が条件となっているからです。これ以上、沖縄県民の命が危険に晒されつづけている状況が許されていいはずはありません。
問題を解決するには、辺野古新基地建設中止、普天間基地の無条件撤去しか道はありません。04年に普天間基地所属ヘリが墜落した沖縄国際大学の前津榮健学長は今年8月の声明で、「現状はなんら変わらず、むしろ悪化していると言っても過言ではない。事故から17年目の今日、危険この上ないない普天間基地を即時閉鎖し、撤去することをここに改めて日米両政府に強く要求する」と訴えました。
「一日も早い危険性の除去」という政府の言い分の破たんは明らかです。
全国の米軍基地の「沖縄化」が止まらない
米軍基地の強化は沖縄だけの話ではありません。首都東京に陣取る横田基地はどうか。2018年に米空軍のCV22オスプレイ5機が配備されましたが、今年7月には6機目が配備され、24年には10機体制となる予定です。沖縄・普天間基地に24機配備されている海兵隊のMV22オスプレイが主に部隊を輸送するのに対し、CV22は、特殊作戦部隊を敵地に潜入させたり敵地から脱出させたりすることを任務としており、日本の首都が、米特殊作戦部隊の出撃拠点化するという異常事態となっています。横田配備のオスプレイは、機関銃の銃口を下に向けたままで市街地飛行を繰り返しています。基地周辺の住民からは、「オスプレイのホバリング(空中停止)訓練は民家の間近で行われ、振動がすさまじい」「離着陸がふえ訓練はひどくなっている。政府は抗議しようともしない」などの怒りの声があがっています。横田基地でも、2020年度に軍用機が離着陸した回数は約3万4,000回で3年連続の増加となりました。イラク戦争が勃発した03年度の離発着数さえ大きく上回る状況です。さらに横田基地所属のCV22は首都圏だけでなく、全国で低空飛行訓練を行っています。昨年から今年にかけては、青森県の小川原湖上で訓練を繰り返し、何度も旋回したり、湖面すれすれまで高度を下げ、激しく水しぶきを上げながら飛行するなど、一歩間違えれば大惨事につながりかねない事態です。
横田基地に関しては、同基地所属のヘリ(UH1多用途へり)が、新宿駅周辺など都心のど真ん中の上空で低空飛行を常態化させていることも重大問題となっています。日本の航空法は、航空機の「最低安全高度」以下の飛行を禁止していますが、同行度を約300メートルも下回る東京都庁展望室(202メートル)とほぼ同じ高さで飛行するなど、甚だしい主権侵害が繰り返されているのです。
山口県・岩国基地でも機能の大増強がおこなわれています。
今年10月3日に空母改修中の海自・護衛艦「いずも」に米軍のF35Bを発着艦させるテストが四国沖で行われましたが、この同機は岩国基地所属でした。「いずも」のほうも、テスト前には岩国基地に寄港するなど、日米の一体ぶりを示しました。
岩国基地へF35Bが配備されたのは2017年ですが、米海兵隊は20年8月、F35Bを新たに16機追加配備し、合計32機体制にすると発表し、現在、配備を進めています。海兵隊が「遠征能力」を自慢する最新鋭ステルス戦闘機の大増強です。
岩国基地では18年3月までに、米軍厚木基地の空母艦載機約60機の移駐が完了。これにより所属機は約130機となり、東アジア最大の航空基地へと変貌しました。同基地は、艦載機移駐前から米軍機の低空飛行訓練の拠点にされてきましたが、移駐後はそれがさらに激化。昨年7月、広島県知事が駐日米大使らに対しておこなった要請によれば、同県における19年度の航空機騒音の発生は、艦載機移駐完了前の1・6倍に増加し、同年度の低空飛行訓練の目撃情報は、実日数193日、目撃件数1,734件となっています。
さらに岩国基地には、現在は日本に配備されていない米海軍のCMV22オスプレイが2機配備される予定です。このオスプレイをめぐっても、同基地にはすでに、普天間基地所属のMV22、横田基地所属のCV22が訓練のために相次いで飛来してきており、岩国基地の増強はとどまるところを知らない、まさに異常事態となっています。
長崎県・佐世保基地では、岩国基地にF35Bが配備されたことをうけ、2019年末に、それまでの強襲揚陸艦ワスプに代えて、同揚陸艦アメリカが配備されました。アメリカは「海兵隊のF35B統合打撃戦闘機の能力を最大限に活用することを目的」(米海軍報道資料)につくられたもので、ワスプに比べて船体の幅が広く、格納庫や航空燃料庫が充実しています。アメリカは、沖縄・普天間基地所属のMV22オスプレイも運用することから、佐世保・岩国・沖縄一体となった基地機能の強化、部隊増強の一環です。
神奈川県・横須賀基地では、安保法制=戦争法強行直後の2015年10月に新しい原子力空母ロナルド・レーガンが配備され、新型イージス艦も相次いで配備されています。同基地を母港とする米艦船は、15年まで20数年にわたり11隻体制がとられてきましたが、それ以降現在まで、13隻体制がつづいています。とくに今年は最新鋭のイージス艦5隻が新たに配備され、それ以前の駆逐艦と交代して、イージス艦11隻体制になるなど明らかに基地機能の強化がはかられています。今年8月には、米サンディエゴを母港とする原子力空母カール・ビンソンが横須賀基地に寄港しました。地元紙によれば、横須賀市長は政府に対し、この寄港が原子力空母2隻体制を意味するものではないことを確認しましたが、明確な回答はありませんでした。
横須賀を母港とする空母打撃群や、佐世保を拠点とする遠征打撃群は、イラク戦争など米国の無法な戦争で重要な役割を果たしてきました。在日米軍基地が、世界への「殴り込み」の一大拠点として強化されていることは極めて重大です。
――沖縄と本土の連帯の力で基地強化のたくらみを許さないために全力をあげます。
――危険なオスプレイは、沖縄からも本土からも撤去させます。米軍機の低空飛行を中止させます。
米軍基地は、日本国民の生命と暮らしにも重大な被害と苦痛を与え続けています。戦闘機・ヘリの墜落や米兵による殺人・強姦・放火・ひき逃げなど、米兵の犯罪、事件・事故は、日本の主権を踏みにじる大問題です。1952~2018年度の米軍による日本国内の事件・事故の件数は、政府が明らかにしているだけでも21万1,792件(72年の施政権返還前の沖縄分は含まれていない)、日本人死者数は1,095人に達しています。
米軍のやりたい放題の根底にある日米地位協定
異常な低空飛行訓練や相次ぐ犯罪など、米軍の横暴勝手の根底には、屈辱的な日米地位協定があります。米軍に、全国どこへでも部隊を自由に配備し、国内法も無視して自由に訓練するなどの特権を与えている国は、世界でも日本だけです。沖縄県はこれまでに、米軍が駐留する欧州諸国を調査し、日本と比較した結果を発表しています。米軍に国内法が適用されない、米軍基地などへの立ち入り権がない、訓練・演習の規制ができない、航空機事故のさいの捜査権を行使しないなどの日本の実態は、どれも欧州諸国には見られないものであることが明らかとなっています。横田空域のような米軍が管理する広大な空域も、欧州諸国には存在しません。在日米軍のなかでも新型コロナウイルス感染が広がりましたが、政府が世界最多の感染者数を出している米国からの入国を原則拒否する措置をとってきた下でも、米軍関係者は自由に出入国し、検疫も米軍任せとなっています。このような植民地的特権を保障した日米地位協定が、1960年の締結以来、一度も改定されていないことは、まともな主権国家ではありえない異常極まることです。
2018年7月には、全国知事会が「日米地位協定抜本見直し」を求める「提言」を全会一致で採択しています。「提言」は、「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立ち入りの保障などを明記すること」を求めています。独立国として当然の要求であり、屈辱的な現状をただすために、地位協定の抜本改定がまったなしとなっています。
――日米地位協定を抜本的に改定し、世界に例のない米軍の特権をなくします。
――在日米軍の全面撤去、基地のない平和な日本をめざします。
武器輸出、軍学共同―「戦争する国」を支える体制づくりを許さない
「武器輸出三原則」は、歴代日本政府自らが、「憲法の平和主義の精神にのっとったもの」として繰り返し国会で答弁し、国是とされてきたものでした。ところが2014年4月、当時の安倍政権は「武器輸出三原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を包括的に解禁する「防衛装備移転三原則」へと大転換させる閣議決定を行いました。「紛争当事国や国連決議に違反する場合は輸出を認めない」とはしていますが、従来の原則では禁輸対象となってきた国際紛争の「恐れのある国」が対象から外され、F35戦闘機の国際共同生産で問題となったイスラエルへの制限もなくなりました。「武器輸出三原則」撤廃に加え、「防衛生産・技術基盤戦略」の策定(14年6月)、防衛装備庁の設置(15年10月)も実施されました。軍事協力の強化と一体に、ミサイル防衛、地対空ミサイル潜水艦など大型兵器の共同の開発がすすみ、国策としての武器輸出がすすめられています。日本が「死の商人」の道を歩むことを断じて許すわけにはいきません。
武器輸出とともに、防衛省による産・官・学の軍事研究の動きが顕著になっていることも重大です。そのための「安全保障技術研究推進制度」(2015年開始)について、17年度に前年の18倍となる110億円に一気に増額されて以降、21年度まで100億円前後の予算計上を継続しています。同制度をめぐっては、日本学術会議が17年の「軍事的安全保障研究に関する声明」で「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と批判しました。現在、政府は日本学術会議に対し、研究成果が民生にも軍事にも使われる「デュアル・ユース」(軍民両用)について検討を求めています。これは、学術会議を変質させ、科学者を軍事研究に動員する体制づくりをめざすものに他なりません。
――武器輸出、軍楽共同など「戦争する国」を支える体制づくりをやめさせます。
戦前の治安立法を彷彿させる土地利用規制法を廃止に
自公政権は今年6月、土地利用規制法を強行成立させました。同法は、米軍や自衛隊の基地周辺などに暮らす住民を調査・監視し、必要があれば土地・建物の利用を制限するもの。国民が軍事施設周辺でスケッチや写真撮影をしただけでスパイ扱いされ罰せられた戦前・戦中の治安立法を彷彿させるものです。
土地利用規制法では、内閣総理大臣が安全保障上重要とみなす「重要施設」の周囲約1キロと国境にある離島を「注視区域」に指定します。「重要施設」とは、米軍・自衛隊基地、海上保安庁施設、「生活関連施設」(重要インフラ)とされます。政府は「生活関連施設」として自衛隊との共用空港、原発を挙げていますが、法律上限定がありません。しかも、誰が、誰を対象に、どんな情報を、いつ、どこで、どういう方法で調査するのか、土地・建物の利用規制の勧告・命令の対象となる「機能阻害行為」とはどういった行為なのかなど、核心部分をすべて政府の判断に任せています。首相が必要と認める場合には、公安調査庁や自衛隊情報保全隊、内閣情報調査室などから情報提供を受けることも、条文上排除されていません。既に、自衛隊のイラク派兵に反対する市民の活動が情報保全隊により監視され、公にしていない個人情報が収集されていた「前科」があります。
「戦争する国」づくりを推し進める自公政府が、軍事的安全保障の観点から市民の基本的人権を制限し、「平時」の「有事」化を推し進めることは許されません。
――戦前の教訓をいかし、土地利用規制法は廃止します。
日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係を築く
日米安保条約は、占領軍を駐留軍へと名前だけ変えて居座らせ、「全土基地方式」という世界に例のないやり方で日本を米軍の「基地国家」とし、米国の軍事的支配の鎖に縛りつけています。
オスプレイ配備強行や相次ぐ米兵犯罪など、米軍基地と沖縄県民をはじめ日本国民との矛盾はすでに限界を超えています。新ガイドラインや安保法制=戦争法による「戦争する国」づくりが強化されるなか、地球的規模の「日米同盟」の危険な侵略的変質はさらに進み、日米安保条約と日本国憲法はいよいよ両立しなくなっています。日本共産党は、国民合意で日米安保条約をなくし、対等・平等の立場にたって、日米友好条約を結ぶことを目指します。そうしてこそ、日本はアメリカの引き起こす戦争の根拠地から抜け出すことができ、米軍基地の重圧から解放され、本当の独立国といえる国になることができます。
――国民合意によって、日米安保条約第10条にもとづく廃棄の通告で安保条約をなくし、日米友好条約を結びます。安保条約は、一方の国が通告すれば、一年後には解消されます。
自衛隊と憲法の矛盾解決は国民合意で段階的にすすめる
日本共産党は、憲法9条に照らせば、自衛隊が憲法違反であることは明瞭だと考えています。しかし、憲法と自衛隊の矛盾の解決は、一挙にはできず、国民の合意で一歩一歩、段階的にすすめます。
①まず海外派兵をやめ、軍縮の措置をとります。②安保条約を廃棄しても、同時に自衛隊をなくすことはできません。安保条約と自衛隊の存在は、それぞれ別個の性格をもつ問題であり、安保条約廃棄の国民的合意が達成された場合でも、その時点で「自衛隊は必要」と考える国民が多数だという状況は、当然予想されることだからです。③安保条約を廃棄した独立・中立の日本が、世界やアジアのすべての国々と平和・友好の関係を築き、日本を取り巻く平和環境が成熟し、国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したところで初めて、憲法9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手します。
かなりの長期間にわたって、自衛隊と共存する期間がつづきますが、この期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害の発生など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守ります。