61、スポーツ
五輪・パラリンピックの改革とスポーツの多面的発展をめざします
2021年10月
五輪・パラリンピックの検証と改革を
国内外の批判の中、東京五輪・パラリンピックが強行開催されました。日本共産党は今年1月以来、新型コロナ感染症対策と大会は両立できず、「今夏の開催は中止を」と表明し、一貫して「五輪より命」「コロナ対策こそ最優先」と求めてきました。しかし、政府や国際オリンピック委員会(IOC)は7割を超える「中止・延期」の世論に耳を貸さず、感染が広がる最中に開催を強行しました。これがコロナ対策と「矛盾したメッセージ」(新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長)ともなり、国内の感染爆発、医療崩壊を招く結果となりました。
健康・命より大会を優先させたことは、「人間の尊厳保持に重きを置く」社会の実現をめざすムーブメントである五輪・パラリンピックの歴史に汚点を残しました。「選手に活躍の場があってよかった」との声がある一方、コロナのため選手のフェアな競争とはならず、参加を断念する選手も出ました。IOCなどが民意を踏まえない「歓迎されない五輪」を強行することによって、少なくない選手を苦しめる結果にもなりました。今後、公表される大会経費の膨張も懸念されます。私たちは今大会の深い検証が必要と考えます。同時に、五輪やIOCのあり方を根本から見つめ直す広範な議論を呼びかけるものです。主な論点は以下の通りです。
第1は、五輪の肥大化の見直しです。数万の関係者が集う五輪は施設建設から大会運営までばく大な経費がかかります。東京大会の経費は当初予定額を大幅に超える1・5兆円以上となり、さらに関連経費を含め大きく膨らむ見通しです。経費は開催都市の財政基盤を揺るがしています。大会規模の大幅な縮小は不可欠で、複数都市の共同開催など抜本的な改革が早急に求められます。
第2は、商業主義の過度な依存を改めることです。IOCの財源の7割はテレビ放映権料が占めています。東京大会強行の背景にテレビマネーがあると報じられています。夏季大会では、テレビ局の意向により競技スケジュールの変更や酷暑の中での開催が強要され、主役である選手を苦しめています。商業主義への依存体質の克服はIOCと五輪改革の急務となっています。
第3は、IOC改革です。IOCの非民主的な体質、財政の非公開、五輪招致を巡る買収といった問題点が広く指摘されています。IOCは民間機関とはいえ事実上、公的な役割を担う組織として、それにふさわしい組織形態や社会的なチェック機能が求められます。また、大会の招致、開催にあたり、市民・国民の意見・意向を尊重し、反映する仕組みづくりが求められます。
第4は、五輪憲章に基づく開かれた討論を保障することです。人間の尊厳の尊重、ジェンダー平等の推進、どんな差別も許さない人権と平和に根ざしたスポーツ活動など、IOC憲章の理念に立ち返り、実際の活動との乖離を埋める努力が必要となります。
コロナ禍で苦悩する地域スポーツを援助し、条件整備をすすめます
コロナ禍で地域クラブやスポーツ団体の活動が危機に瀕しています。大会が開けず、会員も減少する中、自立的な活動ができない深刻な事態です。地域クラブは市民が日常のスポーツ活動の拠点です。その停滞は、国民的なスポーツ活動の停滞に直結します。コロナ禍での自主的なクラブにたいする財政的支援策として国は昨年、スポーツ活動継続支援金を創設しました。しかし、使い道が限定され、十分に周知もされませんでした。また支援も短期間で打ち切られました。支援金の継続とさらなる改善を強く求めます。国民の経済の足かせとなっている消費税10%を5%に減税し、スポーツに親しめる社会基盤の拡充に努めます。
公共スポーツ施設の整備をすすめます
①スポーツ基本法にあるようにスポーツは「国民の権利」であり、その保障は国の責務です。現在、公共スポーツ施設の老朽化や深刻な減少がすすんでいます。しかし、国はその対策を放棄している状況です。国費によるスポーツ施設整備費は〝雀の涙〟の年間40億円ほどです。施設整備計画の策定とともに、予算の大幅な増額と地方自治体の負担軽減に力を注ぎ、多くの国民がスポーツに親しめる環境を整えます。
②「誰もが気軽に使えるスポーツ施設」をめざし、利用料金の適正化、指導員やスタッフの増員などの充実をすすめます。
③地域のスポーツ活動の拠点である学校開放施設を増やし、用器具の充実、シャワーや夜間照明の整備、スポーツ指導員の配置など、その充実をはかります。
④障害者の利用できる多機能型スポーツ施設の増設とバリアフリー化、障害者に配慮した設備や指導者・ガイド・介添え者の配置を促進します。
自然環境を守りスポーツの発展をはかります
①自然と共生するスポーツの発展のため環境アセスメントを遵守し、環境破壊を許しません。山岳自然を破壊する、無秩序で大規模な風力発電設備やソーラーパネル設置などの規制強化を求めます。生態系に重大な影響を及ぼすリニア中央新幹線の建設に反対します。
②山岳や海の遭難救助ヘリの増設とパイロットの養成をすすめます。登山リーダー養成をはかる国立登山研修所の機能拡充、気象情報や危機管理システムの整備など安全な山岳活動の確保に努めます。遭難救助や自然保護の拠点となる山小屋への公的支援を検討する。
③地球温暖化によりスポーツ活動が脅かされています。酷暑で熱中症の危険が高まり、雪不足によりスノースポーツの存続が危ぶまれています。スポーツの持続的発展のため、CO2の大幅削減は切実な課題です。「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」の実施を求めます。
暴力やハラスメント、差別から競技者を守り、不正を正す努力を尊重します
暴力、パワハラ、セクハラをなくします――「スポーツは、世界共通の人類の文化」(スポーツ基本法)であり、その破壊行為である暴力、パワハラ、セクハラなどをなくすため、スポーツ団体や選手・指導者の自主的な取り組み、学ぶ活動を応援します。この問題で国、地方自治体が積極的な役割を果たすよう求めます。
女性やLGBT、障害者――競技する女性やLGBT、障害者の人権を守る活動を重視し、指導者の配置、相談窓口の開設、啓発・学習活動など、だれもが安心して競技できる環境づくりを重視します。国の積極的な支援を求めます。
学校・運動部活動――学校の運動部活動で指導者の暴力やハラスメント、しごき・長時間練習などの問題があります。適切な指導のための講習の充実とともに、部活動での教職員の負担軽減を進めます。地域等の指導者の活用には教職員の合意や生徒の希望を尊重し、外部指導員の研修を行うことを求めます。
スポーツ団体――スポーツ団体の自主性を尊重し、国・行政による侵害や干渉・統制に反対します。