54、NPO、NGO
NGO、NPOの社会的役割を積極的に評価し、自主性を尊重しつつ支援を拡充します。新型コロナによる影響に見合った支援が必要です。NGO、NPOの活動を危うくする安保法制=戦争法や土地利用規制法など監視立法などは即時廃止します
2021年10月
NGO(non-governmental organization)は、「非政府組織」と訳されています。主に、貧困、飢餓、環境、平和、人権をはじめ、世界的な問題に取り組む市民団体で、国連憲章第71条に根拠をもっています。NPO(non-profit organization)は、「非営利組織」と訳されています。営利を目的とせず、社会的な使命を達成することを目的とした組織といえます。外務省は「日本では,海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO、国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にあるようです」と紹介しています。
NGO、NPOが果たしている役割
市民が中心となり、政府から自立して、営利を目的とせず、世界や社会、地域の諸問題を前向きに動かしたり解決するために取り組んでいるNGOやNPOは、政府や行政を監視したり、政府や行政が把握できない情報にもとづいて政策提言やアクションを起こしています。核兵器禁止条約の成立の過程や気候変動問題で、世界の諸政府とともに、NGO・市民社会が果たした役割は非常に大きなものがあります。国連が提唱したSDGsは、「市民社会及びその他の関係者との間で行われた2年以上にわたる公開の協議と関与によって」出来上がったものであり、17の目標を達成するうえで、NGO、NPO、市民社会は欠かせない存在となっています。
さらにNGOやNPOは、国内でも政治を前に動かす大きな力を発揮しています。持続化給付金、家賃支援給付金、学生支援給付金、雇用調整助成金のコロナ特例、休業支援金をはじめ、政治に働きかけて様々な要求を実現してきました。またジェンダー平等をもとめる巨大な社会的変化の受け皿にもなっています。
NGOやNPO、ボランティアは、「何かやりたい」「専門性を生かして貢献したい」「人とのつながりを大切にしたい」などの切実な思いを実現する機会ともなっています。とりわけ、コロナウイルスの感染爆発や気候変動の深刻化によって、思いはいっそう高まっています。
これまでの活動上の困難
政府や地方自治体以外の非営利の民間組織であれば、NGOやNPOに分類できます。そのなかには、任意団体も含まれます。団体名義での契約の締結や土地登記などを行うためには、法人格を得る必要があります。1998年に施行された特定非営利活動促進法によって、NPOやNGOは法人格を取得することが可能となりました(認証NPO法人)。さらに、2001年には認定特定非営利活動法人制度ができ、税制上の優遇措置を得ることができるようになりました(認定・特例認定NPO法人)。認証NPO法人は5万810団体、うち認定・特例認定NPO法人は1,210団体になっています(2021年6月末現在)。
しかし、その多くの団体や法人が、共通して資金やスタッフの確保、組織運営、活動・交流場所などで苦労しています。2018年3月の内閣府による「特定非営利活動法人に関する実態調査」では、NPO法人が抱えている問題として、「後継者の不足」(38.8%)、「人材の確保や教育」(69.9%)、「収入減の多様化」(54.2%)となっています。また、行政に望むこととして、「公共施設等活動場所の低廉・無償提供」(66・8%)、「市民・企業等が法人の活動情報を得られる仕組みなどの環境整備」(42.7%)となっています。
さらに長時間労働や、国民の暮らしの悪化がボランティア活動を妨げる理由となっています。2020年6月に発表された内閣府の調査(2019年度『市民の社会貢献に関する実態調査』)によると、「ボランティア活動参加の妨げとなる要因」には、「参加する時間がない」(51・4%)、「参加するための休暇が取りにくい」(28.3%)など、異常な長時間労働が障壁となっていることがわかります。「参加する際の経費(交通費等)の負担」(27.4%)など、国民の暮らし悪化もボランティア活動をすすめるうえでの妨げとなっています。
新型コロナウイルスが困難を加速
こうした活動上の困難に加え、新型コロナウイルスは、NGO、NPOに危機的影響を与えています。感染リスクを避けるために、活動自粛・断念や資金源である寄付金や事業収入も減少しているからです。日本財団による「新型コロナ禍非営利組織に対する影響調査」では、「自粛要請による事業実施への影響はありましたか」の問いに、79・6%が「とてもあった」とし、「少しあった」の16・5%と合計すると、実に96%にのぼります。
東京ボランティア・市民活動センターには2020年2月~2021年3月にかけて1万1,000件以上の相談が寄せられました。「コロナ禍で活動ができないことで、会費や寄付金収入、事業収入が減少してしまい、組織の維持が難しくなった」「(持続化給付金について)、そのままでは要件を満たせないことも多くあった」「多くの団体が公共施設を利用して活動していたため、緊急事態宣言等で施設が休館になったり、会場の貸し出しが終始されたことに伴い、活動場所を失う団体が多く発生した」など深刻です。
コロナ禍のもとで国民の苦しみに寄り添うボランティア活動やNGO、NPOの役割発揮が期待されているにもかかわらず、活動を縮小・休止せざるを得なくなっているのです。
役割にふさわしい支援の拡充を
日本共産党は、NGO、NPO、ボランティアの社会的役割にふさわしい支援の強化が必要であると考えます。NGO、NPOなどの自主性を尊重しつつ、行政との間で、対等・平等の立場での多面的な協力関係を確立ができるようにします。具体的には以下の政策を促進します。
NGOやNPOが存続・発展していけるように政治を切り換えます
○コロナ禍への対応を抜本的に強化します。安倍・菅政権のコロナ対応は、科学を無視した政治姿勢に終始し、国民への説明も行わず強権に頼り、「自己責任」論を持ち込んだという致命的欠陥があります。ここを抜本的に転換する必要があります。
NPO法人も持続化給付金の対象になりました(2020年9月3日)が、それまでは、会費や寄付金のみの場合は適用がされませんでした。さらに、煩雑な手続きや書類の準備に時間がかかるなど、問題は解決されずに、持続化給付金の申請は打ち切られました。コロナ禍によって緊急事態宣言が5度もだされ、自粛要請が長期化しています。二度、三度と持続化給付金、家賃支援給付金を出すなど、自粛と補償をセットで行います。
○国際的なNGOの活動にとって、人道性、中立性、公平性、公正性が活動のポイントになります。もし、自衛隊が海外派兵され現地の住民から反発をかえば、国際NGOの活動自体がなりたたなくなるばかりか、メンバーの命を危険にさらすことにもなりかねません。安保法制=戦争法はただちに廃止すべきです。
さらに、土地利用規制法によって、住民監視の活動が制限される可能性があります。こうした監視立法、住民運動を抑え込む法律を廃止します。
○ボランティア活動やNGO、NPOの活動に魅力を感じながらも、長時間労働によって時間がない、金銭的ゆとりがないなどの理由で、踏み出せない場合が少なくありません。政治の力で、労働条件の改善や暮らしにゆとりが持てるようにします。
○安倍・菅政権によって、自衛隊の日報の隠ぺい、森友問題や桜をみる会をはじめとした情報隠ぺいは後を絶ちません。行政情報の開示は政府や行政を監視するうえで欠かせません。違法な情報隠ぺいを許さず、必要な情報を簡素な手続きで公開できるようにします。
資金や活動場所の確保での支援を強化します
○人件費も含む事務局の経費への支援など、自由度・柔軟度の高い補助・助成を拡充します。NPOやNGOが使い勝手のよい小・中規模の公民館や公的施設を建設するとともに、備品もふくめて無料・低額で利用できるようにします。また、空き店舗の借り上げや空き教室の活用など、活動場所の提供を進めます。その際、万全のコロナ対策をとれるように援助を強めます。公共施設によるオンライン機器の貸与などを進めます。
○公民館などの公的施設の利用制限については、思想信条の自由、表現の自由をはじめ、憲法に保障された基本的人権を守るために、最低限のものにすべきです。利用内容を理由にしたヘイト行為や妨害行為を許さない対応を強めます。
○任意団体も含めて、NGOやNPOの認知度をあげるために、行政の広報などをつかっての紹介活動を強めます。市民団体への各種アンケートや要望を聞く会などを草の根で開催し、意見を行政に反映します。
NPO法人の活動をより推進するために法整備をすすめます
「特定非営利活動促進法」の目的は、「ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与すること」です。この目的に沿った施策を拡充します。
○インターネットや広報でのNPO法人の情報発信をさらに進めます。NPO法人の悪用にたいしては、行政として速やかに対応します。
○マイナンバー制度については、個人情報の管理をふくめ、NPO法人においても様々な困難が指摘されています。また、制度そのものにたいする不信や批判が広がっています。日本共産党はマイナンバー制度の導入に一貫して反対してきました。制度の欠陥は明らかであり、きっぱり廃止することを求めます。
○国会の審議では、NPO法人による「政治上の施策」は明確に認められています。法律の名称を「市民活動促進法」にし、法律の定義に「政治上の施策を推進する」ことを明記します。
認定NPO法人制度の大幅な改善をおこないます
NPO法人のうち優遇税制(認定・特例認定NPO法人が適用)を受けられるのは、5万1,610のNPO法人のうちわずか2・4%にすぎません。しかも、日本の場合NPOへの寄付金の総額は8,804億円でGDPの0.18%で、アメリカの2・01%、イギリスの0・75%とくらべて非常に低くなっています。設立しやすくまた、優遇税制の適用を受けやすくするための制度の抜本的な拡充が求められています。
○2020年12月に全会一致で可決・成立した「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案」の改正点である、①設立・定款変更時の縦覧期間の短縮、②情報公開時の個人情報保護の強化、③認定NPO法人の年度報告書類の合理化による事務負担の軽減などを円滑・迅速に進めます。
○個人から認定NPO法人への寄付をうながすために、寄付金控除の上限額を引き上げるとともに、適用下限額の引き下げ、拡充をはかります。また、法人からの寄付を促進するため「法人の寄付金損金算入限度額」を引き上げるなど、拡充をはかります。東日本大震災を機に新設された、救援・復興をおこなう認定NPO法人にたいする指定寄付金制度を拡充します。全国の自治体に寄付金の窓口をおくなど、市民からの寄付を受けやすくします。NPO法人などに融資して活動を支えているNPOバンクへの支援を強めます。バザー、チャリティー、公演などの非課税制度を創設します。
○認定NPO法人の認定基準を緩和して、より簡素で明確な手続きで、認定NPO法人制度が活用できるように改善します。