48、地方自治
地方自治を壊す政治を転換し、コロナから住民の命と暮らしを守り、憲法の「地方自治の本旨」にもとづく自治体のとりくみを応援します
2021年10月
いま地方自治体には、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックという長期化する非常事態のもとで、住民の命と暮らし、地域経済を守る役割の発揮が求められています。
ところが自公政権は、こうした地方のとりくみを支えるどころか、コロナ対策は無為無策のまま、新自由主義の「地方行革」を自治体に押しつけ、地方自治を壊す政策をすすめています。
日本共産党は、この悪政を転換し、地方自治体が憲法に定められた「地方自治の本旨」に則って運営され、すべての自治体で住民が安心して住み続けられるよう全力で支援します。
新型コロナなどから命と暮らしを守るため、国が地方自治体を支え財源を保障します
新型コロナウイルスの感染爆発とその長期化は、住民のもっとも身近な存在である地方自治体が住民の命と暮らしを守るという本来の役割を果たすことの重要性と課題を改めて浮き彫りにしました。
自治体の感染対策の拠点である保健所は歴代自民党政治によって、1992年には852か所あったものが、2020年には469か所に半減させられ、感染拡大への対応がまったく追いつかない今日の事態をまねいています。感染者の多くを受け入れ治療する公立・公的病院も、この間、国からの圧力で統廃合や病床削減がすすんだため、感染者が急増すると医療崩壊を起こし自宅待機のまま亡くなる人が相次ぐという痛ましい事態が生じています。PCR検査では、国の当初の消極的な姿勢で、自治体のとりくみに差が目立ち、ワクチンでは不安定な供給量によって接種が遅れ自治体や住民に混乱をもたらしました。コロナで困窮する住民の生活と営業への支援でも、国は持続化給付金を一度きりで打ち切り、生活保護制度では利用促進の障害となっている「扶養照会」を、運動におされて緩和しましたが、撤回は拒んでおり利用をためらう人をなくせていません。
自治体にとって、頻発する大規模な自然災害への対応も、住民の命を守るもう一つの喫緊の課題となっています。特に気候変動による温暖化などで、「50年に1度」レベルの大雨が毎年日本列島を襲い、河川の氾濫や土砂災害が住民の命を脅かしています。また、各地で地震が繰り返されており、南海トラフ巨大地震や首都直下地震なども予想されています。政府の災害対策予算では自治体の要望に十分こたえるものになっていません。
国は、地方自治体が新型コロナや大規模災害などから住民の命と暮らしを守ることを最優先にとりくみ、地方自治体が平時も非常時も「住民の福祉の増進」という本来の役割にふさわしく働けるよう、全力で支えることが求められています。
自治体が本来の役割を果たすためには、国の責任である財源の保障が欠かせません。国の地方財政抑制路線を転換し、非常時だけでなく、医療や介護、子育てや地域振興などの恒常的な自治体の財政需要の増加にも見合う一般財源総額の確保と地方交付税の充実こそ行うべきです。
――日本共産党は、保健所の増設と体制強化をすすめ、その財源を保障します。地域医療構想や公立・公的病院の独立行政法人化などに反対し、国の責任ですべての医療機関へのコロナによる減収の補填、感染症対策をふくむ地域医療の抜本的拡充に転換します。コロナ対策をすすめる自治体の財源となる新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金の増額や、各種給付金を拡充します。
――全国の自治体が、頻発する大雨や豪雨、地震や火山噴火などの大規模自然災害に備えたり、被災・避難した住民に安定的・継続的な支援ができるよう、国の責任で財源を拡充します。
――コロナ禍での貧困のひろがりに、自治体が暮らしを支える対策ができるよう、財源を保障します。生活保護の「扶養照会」を根絶するなど、誰もが権利として安心して使える制度にします。
――コロナ対策や災害はもとより、社会保障や地域振興への対応など、財政需要が増すばかりの地方自治体の実情に見合うよう一般財源総額を拡充します。地方交付税の財源の不足分は、臨時財政対策債の発行ではなく、交付税率の引き上げで対応します。
新自由主義の「行革」と地方再編の押しつけを転換し、安心して住みつづけられる地域づくりを全力で応援します
住民の命と暮らしを守る自治体本来の役割が果たせるよう、国の支援の拡大こそ求められているにもかかわらず、自公政権が自治体に押しつけているのは、コロナ禍に乗じて新自由主義の「地方行革」と、自治体の公的サービスを民間開放して企業の儲け先としていくことです。また、「地方創生」と言いながら、大都市圏に投資を続ける一方、地方には「集約化」と再編を押しつけています。
政府の今後の方針を定めた「骨太の方針2021」(6月18日閣議決定)は、保健所増設にはいっさい触れず、これまでの社会保障削減の継続を掲げ、行財政分野では、自治体の「集約化」をはじめ、学校や公民館などの公共施設の統廃合とPFIなど官民連携の促進などが並んでいます。しかも、コロナ禍に乗じて、「これまで進められなかった課題を一気に進めるチャンスが到来している」などとして、行政のデジタル化や2022年度末までにマイナンバーを全国民に取得させようとするなど、2015年以来の「地方行革」をいっそう徹底しようと圧力を強める方針が示されました。
この間、政府は「国際競争力の強化」の名のもとに大都市を中心とした自治体には大型開発を集中し、国際港湾の整備や、高速・高規格道路へのアクセス道路などの負担を強いています。各地で新たな大型開発や「周辺地域」の切り捨てなどが指摘されるコンパクトシティ(立地適正化計画)もすすめられているほか、規制緩和と先端技術によって住民情報をデジタル集積する「スーパーシティ構想」も全国31自治体で具体化されつつあります。近隣自治体間で公共施設・行政サービスを連携することをつうじて「集約化」を図ろうとする「連携中枢都市圏構想」など自治体間の広域化の法制化も検討されています。こうした自治体のあり方の再編の先には「道州制」がねらわれています。
こうした「地方行革」を押しつける手段となっているのが「地方創生」政策です。政府が2014年から掲げてきた「地方創生」とは、その一部に地域活性化の財源として活用し得る側面があるものの、その本質は、地方の疲弊と人口減少を加速させた失政への検証もなしに、人口減少を逆手にとって、行政サービス削減と地方の「集約化」・再編などの切り捨てを「人口減少だからしかたない」と住民に受け入れさせようとする政策です。
いま、東日本大震災以降の若者世代を中心とした地方への移住志向=「地方回帰」の現象のひろがりに加え、コロナ禍によるテレワークの導入や人の密集を避ける生活で、地方への移住が改めて見直され、東京都でも2020年5月に転出超過が記録される重要な変化も生じています。
日本共産党は、自公政権の「地方行革」と地方再編による地方切り捨てに反対し、だれもが住み続けることができる真の地域活性化策を全力で応援し、住民が主人公のまちづくりをすすめます。
――公共施設等総合管理計画にもとづく統廃合・民間委託や、コンパクトシティ、「連携中枢都市圏構想」などの「地方行革」と地方再編の地方自治体への押しつけに反対し、老朽化が課題となっている公共施設等の維持・管理・更新への対策に必要な財源を保障します。自公政権と財界がねらっている道州制導入と新たな市町村の大再編に断固反対します。
――「行政のデジタル化」は自治体独自の施策を抑制し、自治体の個人情報保護施策を制限するものです。企業のために個人情報を利活用させる仕組みづくりである「行政のデジタル化」政策は撤回し、個人情報集積の手段となるマイナンバー制度は廃止します。
――東京一極集中の政策を改め、地方移住のU・I・Jターンへ支援を拡充し、若者の「地方回帰」の流れを後押しするとともに、自治体が行う子育て支援、若者の雇用創出や正社員化への後押し、定住促進策への財政支援を大幅に拡充し、地方の交通網を維持・復活します。
――地方の基幹産業である農林水産業の「6次産業化」(第1次産業から第3次産業までを手掛ける活性化策)への支援、中小企業と小規模事業者の振興、観光産業や地域おこしなどの振興策、住宅や商店のリフォーム助成制度への支援、自然・再生可能エネルギーの地産地消など、地方自治体が取り組む真の地域活性化策を全力で支援します。
――これらの取り組みを支援するため、「地方創生」関連交付金は、地方自治体の自主性を保障し、すべての自治体を支援する使い勝手の良い制度に改め増額します。