18、少子化問題
国民のくらしを支え、人間らしい生活を保障する政治、経済、社会への転換で、少子化の克服を
2021年10月
日本共産党は綱領に「日本社会として、少子化傾向の克服に力をそそぐ」の一文を明記しています。もちろん、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかは、それぞれの女性、それぞれのカップルが選択し、決めることです。同時に、社会全体の観点から見れば、人口がこのままのペースで減少していけば、50年後には日本の人口が半分に、100年後には4分の1に減るとされています。これは、国、社会の存続にかかわってくることであり、なりゆきまかせにするわけにはいきません。
少子化傾向の克服には、人間としてのまともな労働と生活の環境を整備する、あらゆる分野で女性差別をなくしてジェンダー平等の社会に変える、生活不安・将来不安を解消する、地域社会の安定を実現するなど、日本社会のさまざまな分野でのゆがみをただし、真に持続可能な経済・社会にしていくことが必要です。
国民のくらしを支え、人間らしい生活を保障する政治・経済・社会への転換こそ、少子化を克服する道だと日本共産党は考えています。
男女ともに子育てできる雇用のルールと、まともな賃上げを
非正規雇用が増加し、若い世代の収入が低く抑えられています。派遣・契約社員には、常に雇い止めの不安もつきまといます。これでは、結婚と子育てへの希望をみいだすことはできません。
長時間労働、サービス残業が横行し、とくに子育て世代である30代、40代は、最も労働時間が長い世代になっています。人間らしく働く労働のルールを確立・徹底し、だれもが「家族的責任」を果たせるようにすることが必要です。
――非正規雇用への置き換えを進めた1990年代以来の労働法制の規制緩和を根本的にあらため、非正規から正社員への流れをつくります。
――シフト制労働者の権利を守るため、労働協約に賃金の最低保障額や休業手当の支給を明記するなどのルールをつくります。ギグワークなどの無権利な働かせ方を広げる規制緩和に反対し、権利保護のルールをつくります。
――労働者派遣法を抜本改正し、派遣は臨時的・一時的なものに限定し、正社員との均等待遇など、派遣労働者の権利を守る派遣労働者保護法をつくります。
――パート・有期雇用労働者均等待遇法の制定など、正社員の均等待遇を図るとともに、解雇・雇止めを規制します。
――中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化しながら、最低賃金を1500円に引き上げます。全国一律最賃制を確立します。
――残業時間の上限を「週15時間、月45時間、年360時間」と法定化し、連続11時間の休息時間(勤務間インターバル制度)を確保します。高度プロフェッショナル制度を廃止します。
――家族的責任を持つ労働者は、男女を問わず、単身赴任や長時間通勤を伴う転勤を原則禁止にします。看護休暇や育児介護休業制度を拡充し、そのための代替要員の確保や中小企業への助成拡充を進めます。これらの措置を、使用者が、昇給・昇格における不利益な評価につなげることを禁止します。国際的にみても著しく低い男性の取得を増やすため、「パパ・クォータ制」の導入を進めます。
――ハラスメント禁止規定をもつ実効ある法整備を進め、働く場での暴力とハラスメントを広く禁じたILO190号条約を批准します。
安心して働き、子育てできる環境を
乳幼児期は人格の基礎をつくる大切な時期です。それにふさわしい保育の体制と条件を整備することは、政治の大きな責任です。自公政権は「待機児童解消」といいながら、認可保育所の抜本的増設に手をつけず、もっぱら、詰め込みと、保育条件の規制緩和を続けてきました。子どもの命と安全を犠牲にするような規制緩和策は、進めるべきではありません。国と自治体が、保育所整備に本腰を入れることが必要です。
安心して働きながら、子育てができる環境を整備する施策を、総合的に推進します。
――認可保育所を30万人分増設し、保育水準を確保しながら待機児童を解消します。
――学童保育の増設と指導員の処遇改善により、待機児童問題の解決と、詰め込みの解消をはかります。すべての学童保育を6年生まで利用できるようにします。学童保育の保育料減免を、国の制度にします。
――身近な場所に子育て、育児相談、サークル活動などのための多様な場をつくるなど、専門的な相談・支援の場を拡充し、子育てを応援します。
――国が、小学校就学前の子どもの医療費無料制度をつくり、その土台の上に、自治体の助成制度を加え、小・中・高校生への無料化を推進します。小児救急医療をはじめ小児医療体制の整備をすすめます。
子育ての経済的負担を軽減し、安心して暮らせる社会に
お金の心配なく、学び、子育てできる社会にしていきます。
――大学・短大・専門学校の学費をすみやかに半額に引き下げ、高等教育の無償化をめざします。入学金制度をなくします。
――「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人(現在の奨学金利用者の半数)が利用できる制度として実現し、拡充していきます。すべての奨学金を、無利子にします。奨学金返済が困難になった場合の減免制度をつくります。
――学生支援緊急給付金の継続的な実施、休学や卒業延期した学生の学費補助など、コロナ対応の支援を抜本的に強化します。
――私立高校の負担の軽減を進め、高校教育の無償化をすすめます。
――「義務教育は無償」を定めた憲法26条に即して、学校給食の無償化を進めます。義務教育で残されている教育費負担をなくします。
――児童手当の18歳までの支給、児童扶養手当、就学援助の額と対象の拡大など、子育て世帯に向けた継続的・恒常的な現金給付を拡充します。
――子育て世代向けの公共住宅の整備、家賃補助制度などを特別に強めます。
――妊娠・出産にかかる経済的負担の軽減をはかります。出産一時金の金額を大幅に引き上げます。
「少子・高齢化」を口実にした社会保障削減に反対します
自公政権は、この間、「少子・高齢化」による財政危機を言い立て、医療・介護・福祉・公衆衛生などを切り捨てる制度改悪を繰り返してきました。その結果、地域医療や保健所の体制がいかに脆弱になってしまったかを、コロナ危機は明らかにしました。
日本の社会保障支出(対GDP比)は、ドイツの8割、フランスの7割の水準に過ぎません。政府や財界は、“日本では、高齢者向けの予算が手厚い一方、若者や子ども向けの予算が少ない”という世代間分断の議論を振りまいていますが、実態は、子どもも、若い世代も、高齢者も、国民全体のくらしを支える予算が、日本は少なすぎるのです。
こうした政治を転換してこそ、「少子化」を克服する道がひらかれ、真に持続可能な社会を実現できます。
「少子・高齢化」を口実にした社会保障切り捨ての攻撃をやめさせ、社会保障を削減から拡充へと転換します。