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日本共産党

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赤旗

➡2021総選挙 分野別政策一覧

6、福祉・生活保護

生活に困っている人への支援を抜本的に強化し、くらしと人権を守ります

2021年10月

生活保護を「生活保障制度」に改め、必要な人がすべて利用できる制度に改革します

 コロナ危機によって、貧困・生活困窮におちいる人が激増するなか、生活に困窮している人が制度の利用を行政によって阻まれたり、保護を利用する人の人権が侵害されたりするなど、現行の生活保護制度の問題点と矛盾が次つぎと明らかになりました。

 生活保護は、憲法25条が明記した国民の生存権をまもる“最後の砦”です。ところが、自公政権はこの9年間、社会保障費削減のため、2度にわたる生活保護費の削減を強行し、申請者の親族に対する扶養照会の強化など、保護を利用しにくくする制度改悪を連打してきました。それが、今日の深刻な事態を生んでいます。

 日本共産党は、9月22日に発表した「新経済提言」で、生活保護を必要とするすべての人が利用できる制度にするため、以下のような改革案をかかげました。

――自公政権が行った生活保護費削減・生活扶助費の15%カットを緊急に復元し、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げる。

――保護申請の門前払いや扶養照会をやめる。自動車保有禁止、わずかな預貯金など「資産」を理由に、保護利用を拒む運用を改める。

――名称も「生活保障制度」に改め、権利性を明確にし、生存権保障にふさわしい制度に改革する。

 私たちはこの立場で、生活保護制度を、国民の命・くらし・人権を守る制度として改善・強化していきます。

保護基準の切り下げをストップし、給付の改善をはかります

 自公政権は、生活扶助費の切り下げ、期末一時扶助の減額、住宅扶助基準の引き下げ、冬季加算の削減など、生活保護費の連続削減を強行してきました。

 そうした削減の実行に際し、政府は、「保護世帯」と「保護を利用していない低所得世帯」の所得や消費を比較し、「格差是正」や「均衡」の名で保護費を減らすことを常套手段としています。しかし、生活保護世帯よりさらに困窮している世帯があるなら、支援の拡充や貧困の打開に国を挙げて取り組むのが政治の責務です。生活困窮者の増大を放置しながら、「保護世帯」とそれ以外の低所得世帯に貧困を競わせあうなど本末転倒です。

 生活保護基準は、就学援助、住民税の非課税限度額、最低賃金などの基準となり、国保や介護保険の減免基準、公営住宅の家賃の減免基準などに連動しています。生活保護基準の引き下げは、福祉施策の全面的な後退を引き起こします。

 日本共産党は、削減された生活扶助基準(最大▲15%)を緊急に復元し、物価上昇や生活実態を反映させながら、憲法に規定された生存権の保障にふさわしい水準に引き上げます。期末一時扶助、住宅扶助、冬季加算などの削減・改悪を中止し、元の水準への回復と制度の改善をはかります。

 自公政権が廃止した、「老齢加算」を復活させます。

 生活保護世帯の子どもが、世帯分離をせずに大学に進学できるよう制度を改善します。

 持ち家がある高齢者に不動産を担保にお金を貸し付け、保護受給を遅らせる「リバースモーゲージ」制度など、受給権を侵害する制度改悪を撤廃します。

 現在、自公政権が検討している、給付の改悪につながる級地区分の見直し・簡略化に反対します。

「水際作戦」を根絶して、国民の受給権を守ります

 保護を申請にきた生活困窮者を、自治体の窓口で追い返す、「水際作戦」の横行がコロナ禍のなかでも大問題となりました。また、保護を申請する人に、一律に親族への扶養照会をかけるやり方が、申請を断念させたり、保護の利用を阻んだりする事態も深刻化しました。

 日本共産党は、生活保護の申請権の不可侵を法律に明記し、申請の門前払いを絶対に許さない国の立場を明確にして「水際作戦」を根絶します。

 各自治体の保護行政の状況を調査し、違法行為の根絶にむけた指導を強めます。

 親族等への、不必要な扶養照会をやめさせます。扶養照会の慎重な運用を自治体に求めた厚労省「事務連絡」(2021年3月30日)の趣旨を徹底し、扶養照会がかけられるのを怖れて、生活困窮者が保護申請をためらう事態をなくします。

 保護の利用を阻む大きな要因となっている、“自動車保有を原則認めない”という運用を改めます。

 生活困窮者の支援に取り組むNPO、NGO、受給者などの意見を聴きながら「生活保護の実施要領」を改善し、自治体に徹底します。

膨大な漏給、低すぎる捕捉率こそ改革を

 日本の生活保護で、早急に解決がせまられているのは、収入が最低生活費未満の人が生活保護を受けている割合――捕捉率があまりに低いという問題です。

 日本の捕捉率は約2割ですが、ドイツは6割、イギリスは5~6割(求職者)、フランスが9割(OECD基準)です。

 国連の社会権規約委員会は、「スティグマ(恥辱)のために生活保護の申請が抑制されている」日本の現状に「懸念」を表明し、「生活保護の申請を簡素化」すること、「申請者が尊厳をもって扱われることを確保する」こと、「生活保護につきまとう恥辱を解消する」手立てをとることを日本政府に勧告しました。これこそ、必要な改革です。

 生活保護は国民の権利であることを広く知らせる活動を、国と自治体ですすめます。

 国として捕捉率を向上させる年次目標を設定し、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと保護を受けられるようにします。

国民分断を狙ったバッシング、受給者への人権侵害を許しません

 生活保護の不正受給は支給総額1%以下で、しかも、悪質な事例はごく少数です。ところが、自民・公明・維新や一部メディアが、生活保護を“不正受給だらけ”のように描くバッシングを繰り返すなかで、生活に困窮する人が保護の申請をためらい、孤立死や心中に至るなどの悲惨な事件が起こってきました。

 一部の自治体が、生活保護利用者の“パチンコ屋通い”や“飲酒”を住民に「通報」させるシステムを導入するなど、行政が「バッシング」を煽る異常事態も続いています。

 日本共産党は、国民の人権にかけられた攻撃を、社会的連帯の力で跳ね返す、たたかいの先頭に立ちます。

人権侵害の「資産申告」、「就労指導」を名目にした保護打ち切りをやめさせます

 生活保護の利用者に、毎年、貯金通帳のコピーなど「資産申告書」の提出を強要する行政の仕打ちが問題となっています。

 厚生労働省はこの措置を、2013年の生活保護法改定にもとづくものと説明し、利用者に「申告書」を出させるよう自治体に指示する通達(2015年)を出していますが、改定法は、利用者と福祉事務所が協力して金銭管理の適正化をはかるとしているだけで、「資産申告」を強要する根拠とはなりません。

 こうしたやり方は、不正などの疑いで資産調査を行う場合も、その要件を厳格に規定してきた生活保護法の趣旨にも反します。

 日本共産党は、生活保護の利用者の人権を侵害する「資産申告」をやめさせます。厚労省の通達を撤回させ、生活保護法の主旨に即した行政を徹底します。

 “保護よりも就労指導”という行政の方針が強化されるなか、強引な保護打ち切りが横行し、そのなかで餓死者が出るなどの事件も起こっています。

 生活困窮者支援法を根拠とする「就労訓練事業」についても、保護の申請者を、最低賃金も適用されない事業に「とりあえず就労」させる手法として活用され、低賃金労働の助長、保護の打ち切りや「水際作戦」の拡大、貧困ビジネスによる悪用――などにつながりかねないことに、懸念の声が上がっています。

 日本共産党は、「就労支援」の名で要保護者に圧力をかけ、「水際作戦」や強権的な保護の打ち切りを推進する制度改悪に反対します。

生活困窮者のサポート体制を抜本的に強化します

 不正受給は、当然、なくさなければなりません。不正受給を防止するとともに、はるかに深刻な「漏給」問題を解決するには、生活困窮者の相談や申請に迅速に対応し、実情を踏まえてきめ細かく対応する体制を整えることが不可欠です。

 生活保護費にたいする国・地方の負担割合の改善などを進め、福祉行政にかかわる国の財政支出を増やします。国の責任でケースワーカーを大幅に増員し、過重な担当件数を減らすなど待遇改善をはかります。保護の申請者・受給者のなかには、生活困難や社会的孤立、さまざまな悲惨な体験から、精神的に追い込まるなど、緊急の対応が必要な人もいます。ケースワーカーの専門性を高め、生活困窮者にきめ細かな支援ができる体制を構築します。

 政府が検討している、ケースワーカーの民間委託に反対します。

 生活保護受給者を食い物にした「貧困ビジネス」が全国で横行しています。住居や食事を実態とはかけはなれた高額料金で提供し、さまざまな名目をつけて、保護費のほとんどを“ピンハネ”していく悪質業者・団体への、実効性ある規制を行なっていきます。

国をあげて貧困打開を進めます

 「コロナ危機を乗り越え、暮らしに安心と希望を――日本共産党の新経済提言」をご参照ください。

ハンセン病元患者に対する保障を充実させます

 全国には、13ケ所の国立ハンセン病療養所、1ケ所の民間の療養所があります。入所者は1001人(21年5月時点)で、平均年齢は87歳となっており、高齢化と身体の不自由が年々進んでいます。2001年の「隔離は違憲」とした熊本地裁判決、ハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづいた運動を受け、2008年6月には、療養所の具体的な維持対策を求めた「ハンセン病問題基本法」が成立しました。元患者への名誉回復、社会復帰・社会内生活支援、在園保障などについて、一日も早く、法の完全実施が実現されるよう力をつくします。

元患者家族の損害賠償をすべての対象者に

 元患者の家族も過酷な偏見差別の被害を受けてきました。補償金を支給するハンセン病家族補償法と、名誉回復を盛り込んだ改正ハンセン病問題基本法が成立(2019年11月)しました。家族補償の請求者は7221人(2021年7月時点)で、対象者の約3割にとどまります(請求期限は2024年11月21日)。請求者の少なさの背景に、今も残る偏見差別と、破壊された家族関係が横たわっています。

 厚生労働省、法務省、文部科学省は、原告団・弁護団と差別解消に向けて意見交換を開始し、相談窓口の設置や同じ立場の人が相談に乗るピア相談事業などの実施も始動します。元患者家族の対象者すべてが賠償を受けられるよう、国はあらゆる手立てをつくすべきです。

療養所の職員の増員と処遇改善をはかります

 緊急に入所者の医療・生活保障を拡充し、不足している医師、看護師、介護職員の確保・増員をはかることが必要です。入所者に対し、必要な医療の実施は、福祉施策の実施でなく、国の隔離政策により被害を受けた元患者への国に課された義務です。そして、ハンセン病問題基本法11条1項では、「医療及び介護に関する体制の整備」に加えて、新たに「充実」を規定しました。そのことからも、国家公務員の定員削減計画からハンセン病療養所を除外し、重症化している入所者の日常の支援、夜間の看護・介護体制の充実を進めます。

 2016年度から療養所と港を結ぶ官用船の一部の船員の処遇改善がはかられ、人員を補充可能な海事職として採用されています。職員の拡充や賃金などの処遇改善を行うとともに、民間委託化された航路を国直営に戻すことを求めます。

 退所者が安心してかかることのできる医療制度を確立します。賃金職員の差別的処遇の抜本的な改善をはかります。

入所者の願いに応えた地域構想・保存を

 療養所ごとに「将来構想」づくりが進められています。高齢化の中で療養所の自治会の運営が厳しくなっており、入所者の思いを代弁し施策に反映するため、療養所ごとに人権擁護委員会が立ち上がっています。➀療養所を医療機関として維持と充実をはかる、②社会との共生としての地域開放、③ハンセン病問題・人権啓発の場としていく、という全国共通した方向で将来構想づくりの具体化が進んでいます。人権擁護委員会では法律家など外部委員を充実させ、実効性のある体制にしていくことが重要です。将来構想を実行していく上でも、医師や看護師などの職員体制を維持・拡充させていくことが要となることから、国は予算を確保し、手厚い支援を求めます。

 療養所施設を保存し、療養所に併設されているハンセン病の資料館を、公的責任で運営できるようにします。全国の療養所敷地内に保育所や特養ホームが開設されており、さらに各地に広げます。障害者施設や高齢者福祉施設などを誘致することも望まれています。他施設の誘致、併設にあたっては、法外に高い借地代の改善が不可欠です。国は、自治体とともに入所者の願いを反映する療養所を実現するため、着工の予算を確保し、積極的で万全な支援と保障につとめるべきです。

 厚労省で開かれる毎年の追悼式への交通費を、代表者だけでなく、元患者やその家族に支給します。

「特別法廷」の違憲判断を受け止め、菊池事件の再審開始を

 裁判所以外の療養所などで開かれた「特別法廷」のハンセン病患者の裁判は、1948年から1972年まで95件が実施されました。ハンセン病患者とされた男性が特別法廷で裁かれ、死刑となった「菊池事件」は、再審開始を求める運動が続けられています。2020年2月、熊本地裁は「特別法廷」そのものを違憲として断罪しました。死刑判決・執行が憲法違反の手続きであり、菊池事件の再審を開始すべきです。

 特別法廷について、元患者の弁護団は国・司法から国民に向けての公式な謝罪を求めています。裁判官などへの人権研修を進め、いまだに克服されていないハンセン病に対する偏見、差別をなくし、政府がなぜ隔離政策をとったのか、その隔離政策とは何であったのか、広く国民に知らせ、二度と同じ過ちを繰り返さないための啓発活動を積極的に講じていきます。

中国からの帰国者に社会的支援を確実に行います

 さきの戦争で犠牲になった中国「残留孤児」「残留婦人」たちが、国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟に立ち上がった結果、改正「中国残留邦人支援法(新支援法)」による支援給付金などの制度が実施されています。しかし、国は、終戦間際に多くの国民を中国東北部に置き去りにし、その後も長期にわたって支援を怠ってきたことへの真摯な反省と謝罪をしていません。そのために、支援給付金の水準は、「安心した老後を送りたい」という願いにこたえるものとはなっていません。

 残留邦人の配偶者には2014年10月から支援給付金と合わせて老齢基礎年金の3分の2相当が加えられるようになりました。さらなる支援拡充を進めます。中国渡航期限(2カ月以内)の緩和などを行います。

 2世にも高齢化が始まっており、日本語も話せず低賃金・過酷な労働を余儀なくされ、生活保護に頼らざる得ない2世も多くいます。新支援法を改正して、2世も法の対象にすべきです。生活保護とは異なる老後の生活保障を行うことや、自立支援通訳の派遣などを利用できるようにして、医療や行政サービスを受けられるようにします。

 配偶者や2・3・4世も含め、国が「孤児」たちに約束した「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を、人間としての尊厳にふさわしく、確実に行っていきます。

ひきこもり、社会的孤立となっている人への支援を進めます

 15~64歳のいわゆる稼働年齢層のなかで、メディアや研究者が「ひきこもり」「孤立無業者」などと呼ぶ、社会的な孤立状態にある人たちの増加が、日本社会の直面する問題となっています。孤立・無業状態にある50歳代の子を、80歳代の親が支え、親子共倒れのリスクを抱える「8050問題」もメディアの話題となっています。

 2019年3月、内閣府は、初めて行った「中高年のひきこもり」に関する調査結果を発表し、40~64歳のひきこもりが全国で61.3万人にのぼるとの推計値を明らかにしました。

 2016年に発表された、15~39歳の「若年ひきこもり」の推計値54.1万人とあわせると、ひきこもりの総数は115万人を上回ることになります。

 これらの人たちが孤立状態に至った経緯はさまざまですが、その背景には、過度の競争教育、長時間・過密労働、職場におけるストレスの増大、弱者たたきの風潮のまん延、格差と貧困の拡大など、日本社会の矛盾があります。

 実際、「中高年ひきこもり」のほとんどは就労経験があり、職場の問題で人間不信や心の病になったり、不景気で再就職できないまま無気力になったりした人たちが多数にのぼるという調査結果もあります。

 専門家からは、ひきこもりを「自己責任」と捉えるのは誤りで、このまま現状を放置すれば、近い将来、膨大な“貧困高齢者”が生みだされ、孤独死の激増など、深刻な社会問題を引き起こしかねないという警鐘も鳴らされています。

 ところが、「ひきこもり」の当事者への公的支援は乏しいままです。関係者が努力して国が予算をつけるようになりましたが、その額は数十億円に過ぎず、経済的支援もありません。

 孤立状態にある人や家族の相談にのり、訪問・ケア・就労援助など、社会的支援の体制を国の責任で構築していくことが必要です。

 日本共産党は、国民のくらしをまもり、誰もが尊厳をもって自分らしく生きられる社会をめざす立場で、ひきこもりなどの孤立状態となっている本人と、家族への支援を進めます。

支援拠点の確立、相談窓口の明確化

 現在、全都道府県・政令指定市に79カ所の「ひきこもり地域支援センター」が設置されていますが、国の予算は1カ所当たり1,000万円程度で体制は薄く、事態の拡大に対応しきれていません。抜本的に予算を増額し、支援拠点としての体制・機能の拡充や、増設をはかります。

 ひきこもりへの対応は、自治体によって、支援の格差や、理解のばらつきがあるのが実情です。ひきこもりの人の家族が役所を訪れても、担当部署が不明確だったり、相談窓口自体がわかりやすく整備されておらず、「たらいまわし」になったり、必要な支援につなげていない実態が各地から報告されています。とくに、家族が、「世間への負い目」や焦り、不安、混乱などを抱えて自治体の窓口を訪れても、「本人が来ないと、どうにもできない」「本人の甘えや家族の育て方が原因ではないか」などと言われ、あきらめてしまうケースも少なくありません。

 ひきこもりの事案を担当する所管部署・窓口を明確化し、すべての区市町村で相談に応じられる体制を確立します。

 対応する機関の情報不足や認識不足をただし、家族や当事者の心情に寄り添い、適切で具体的な情報提供を行なう姿勢を現場に徹底します。

伴走型で継続的な支援体制を確立します

 ひきこもり、孤立状態となっている本人が抱える困難は複雑・多様で、一人ひとりの状況に応じた、伴走型の柔軟なサポートが必要です。行政とNPOや家族会などの支援機関とが連携し、ひきこもり支援のネットワークを確立し、支援体制の強化・拡充を進めます。

 各自治体に、専門性をもった相談員による訪問相談、アウトリーチの仕組みを構築します。その際、ひきこもりの本人、家族の話にじっくりと耳を傾け、実態に寄り添ってアドバイスをする姿勢を徹底します。

 多様な背景をもち、年代も経験も千差万別である、ひきこもりの本人を継続的にサポートするため、オーダーメイド型の支援ができる体制をつくります。

 自治体の担当職員を大幅に増やすとともに、本人の居場所づくり、ピアサポート、家族会の拡充をすすめます。NPOなどの支援機関と協力しながら、本人が自らの意思で参加し、他者との出会いやつながりを持つ、多様な居場所をつくります。そのために、当事者経験者スタッフ(ピアサポーター)の積極的起用と、活動への援助を行います。家族が、地域社会から孤立することを防ぎ、悩みや辛さを分かち合える場として、家族会(家族のつどい)の拡充をはかります。

 家族会をはじめ、ひきこもりを支援する機関の、自治体の福祉施策を検討する場への参画を進めます。

本人の意思にそった就労・社会参加の支援

 ひきこもりの人への就労支援にも活用されている、「生活困窮者自立支援法」にもとづく国の委託事業では、1年間という期限の設定や、サポートステーションへの数値目標の義務づけが、制度を使いにくくしていると指摘されています。一律の期限設定や数値目標の押しつけをやめ、本人の意思や状況に応じた対応ができるようにします。

 就労後も使える居場所づくり、サポートの仕組みを整備します。

 いくつかの自治体で実施されている、ひきこもりの本人が、自らの経験を活かしながら、ボランティアや地域活動に参加する「社会的役割の機会創出事業」を広げます。「就労だけがゴール」という発想ではなく、本人の意思と選択、実情に応じた援助を行ないます。

自立支援ビジネスの実態把握と規制

 ひきこもりの人の家族が、藁をもつかむ思いで、たまたまネット検索などの情報で知った自立支援ビジネス(暴力的支援団体)にすがってしまうケースが後を絶ちません。その実態は、家族と高額の契約を結び、本人を同意もないまま暴力的手法で強引に引き出して、施設に入寮させ、まともなケアもないまま“矯正”を強いるというものです。

 消費者相談による対応を強化するとともに、行政として実態を把握し、脱法的行為の摘発と規制を進めます。こうしたビジネスが横行する余地をなくしていくためにも、行政による家族への相談と情報提供、本人へのサポート体制の構築が必要です。

偏見・スティグマを克服し、誰もが自分らしく生きられる社会へ

 ひきこもりを「甘え」「怠け」などといって中傷し、無業の人たちにスティグマ(恥辱)を負わせる偏見が、日本社会には根強く残っています。ひきこもりへの偏見を助長したり、孤立状態にある人をいっそう追いつめたりするような言論が、メディアを通じて流されています。

 ひきこもる人の多くは、職場や学校で傷つけられたり、他人を傷つけるのを回避したいと望んだ結果、他者との関係を遮断せざるを得ない状況に追いやられた人たちです。無関係な他者に危害を加えるような事態に至るケースはきわめてまれです。

 ひきこもりを“犯罪者予備軍”であるかのようにいう言動の流布は、本人や家族の孤立と苦難に拍車をかけ、問題の解決を遠のかせるだけです。根拠のない不安をあおって、社会的偏見を拡大するような報道・発言はやめるべきです。

 ひきこもりの本人が、孤立状態に至った背景は複雑で多様ですが、その大本には日本社会の矛盾があります。それを「自己責任」の名で攻め立て、いっそう孤立無援に追い込む社会ではなく、困難のなかで傷ついた人を地域と行政が支え、かけがえない個人として尊重する社会こそ、誰もが安心して生きられる社会です。

 ひきこもりの本人や家族を攻撃する風潮をただし、偏見を克服するため力をつくします。

 過度の競争教育の是正、長時間労働の規制、ブラック企業の根絶、ハラスメントの禁止、社会保障の充実など、日本社会の矛盾を打開する改革を進めます。

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