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日本共産党

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赤旗

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3、年金

頼れる年金制度に......年金7兆円削減計画(マクロ経済スライド)を廃止して「減らない年金」にします。低年金の底上げと無年金問題を解決します

2021年10月

 2019年、金融庁の金融審議会が、“厚生年金だけでは足りないから2000万円の老後資金が必要”という「報告書」を出したことが国民に衝撃を与えました。「年金は100年安心」という政府・与党の宣伝がウソで、「自己責任」で老後資金を準備しないと生活ができないと、政府の「報告書」が認めたのです。

 自公政権がいう「100年安心」の中心は、「マクロ経済スライド」という年金給付の水準を減らし続ける仕組みです。実際、安倍・菅政権の9年間で、年金は実質6・5%も減らされました。金融庁の報告書をきっかけに、年金の給付が低すぎることや、それが毎年減らされることが国政の大問題に浮上しています。政府は、日本共産党の追及に対して、このまま「マクロ経済スライド」が発動しつづければ、2040年代には「7兆円」の年金削減となることを自ら明らかにしました。これが実行されれば、現在でも月6.5万円に過ぎない基礎年金の満額は約3割、月2万円分も削られ、月4.5万円の水準にされてしまいます。

 年金給付の抑制・削減、低年金・無年金を要因とする高齢者の貧困と生活不安は、この間、コロナ禍を受けて、いっそう深刻化しています。

 日本共産党は、「マクロ経済スライド」を廃止して、「減らない年金」を実現します。低すぎる年金給付の底上げをすすめ、今も将来も、高齢者も現役世代も、頼りにできる年金制度に改革していきます。

「マクロ経済スライド」を廃止し、「減らない年金」にするために、3つの改革をすすめます

 「マクロ経済スライド」は、「年金財政の収支を均衡させる」という名目のもと、毎年度の年金の改定率を、物価や賃金の伸び率より低く抑えることで、年金を目減りさせていく仕組みです。この「スライド」を今後20年続けることにより、2040年時点で本来なら25兆円となるはずの基礎年金の給付額を7兆円削減し、18兆円に抑えこむというのが、政府の計画です。年金を数十年かけて徐々に減らしていく「マクロ経済スライド」では、若い世代ほど、年金の削減幅は大きくなります。厚生労働省は、基礎年金の削減が“終了”する年を2043年と見込んでいますが、それ以後に年金を受け取る、現在41歳より下の世代は、夫婦で30年間に受けとる年金が、今より1600万円も少なくなります。

 こんな仕組みは廃止し、「減らない年金」にすることが、安心できる年金への第一歩です。そのために三つの改革を進めます。

高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やします

 いまの年金は、年収1,000万円(月収65万円+賞与)が上限で、それ以上の年収があっても保険料は増えません。年収2,000万円の人も、年収1億円の人も、保険料は年額95万5000円です。収入に対する保険料負担率は、年収1,000万円で9・15%(本人負担分)ですが、年収1億円だと0・95%になってしまいます。

 こうした保険料の低すぎる上限額によって、事実上の“徴収免除”となっている保険料額は2兆円を超えます。ここにメスを入れることが必要です。現在、年収1,000万円程度となっている上限額を、健康保険と同じ、年収約2,000万円(月収139万円+賞与)まで引き上げれば1.6兆円の保険料収入が増えます。その場合、保険料の負担増によって高額所得者の年金給付も増え、支出も増加することになりますが、アメリカの公的年金で行われているような、高額所得者の年金給付の伸びを抑制する仕組み(ベンド・ポイント)を導入すれば、給付増分を0.6兆円程度に抑え、差し引きで1兆円規模の財源を確保できます。

巨額の年金積立金を年金給付に活用します

 年金積立金は、厚生年金、国民年金、共済年金をあわせて200兆円にのぼり、給付費の4年分にあたります。ヨーロッパ諸国の年金積立金は、ドイツが給付費の1.6カ月分、イギリスが給付費の2カ月分、フランスが給付費の1カ月分未満などで、日本の“ためこみ”は異常です。ところが、自公政権は、2050年代まで積立金を増やし続け、2100年まで温存することを計画しています。

  しかも、安倍元首相が、ダボス会議やロンドンの金融街で「年金資金の改革」を約束しながら外国人投資家に“日本株買い”を呼びかけるなど、自公政権は年金積立金を“株価吊り上げ”の道具に使うことを露骨に表明し、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の運用の基本となる「資産構成(ポートフォリオ)」の国内株式の比率を大幅に引き上げてきました。その結果、年金資金の株式市場への投入枠は一気に20兆円分も拡大し、GPIFと日銀が株価を買い支えるという異常事態が続いています。

 国民の財産である年金資金を、「アベノミクスの成果」を演出するために利用し、リスクにさらしてきたのです。

 こうした異常な運用のやり方をあらため、積立金を計画的に取り崩し、高齢化のピークとされる2050年代をめどに計画的に活用していきます。

賃上げと正社員化を進めて、保険料収入と加入者を増やします

  年金の支え手である現役労働者の賃上げと、非正規雇用の正社員化で、保険料収入と加入者を増やし、年金財政を安定化させることこそ、もっとも根本的な対策です。

 最低賃金の引き上げ、全国一律の最低賃金制度の創設、中小企業の賃上げ支援予算の大幅増額、長時間労働の是正、労働者派遣法の抜本改正など、「8時間働けばふつうに暮らせる社会」にするための改革をすすめます。

減らない年金は実現できる――年金制度と政治のゆがみをただしてこそ

 政府は、マクロ経済スライドの廃止には「7兆円の財源が必要」といいますが、それは、今後20年間かけて準備するべき額であり、今すぐ7兆円が必要なわけではありません。

  高額所得者の保険料を2兆円も免除し、200兆円の積立金を温存して金融界や大企業の儲けのために流用する一方、国民の年金を7兆円も削る、「支え手が減って年金財政が大変だ」と宣伝しながら、若い世代の低賃金や非正規雇用をいっそう加速する――こうした政治のゆがみをただせば、「減らない年金」を実現していくことは可能です。

  「マクロ経済スライド」以外の、年金削減の仕組みも廃止します。

 自公政権が2016年の「年金カット法」で導入した、賃金の指標がマイナスになった場合に、年金もそれに合わせてマイナス改定する仕組み――「賃金マイナススライド」(2021年施行)を撤廃します。その他の物価・賃金指標にもとづくスライド制についても、年金の引き下げにつながる仕組みを全面的に見直していきます。

 自公政権が導入を検討している、年金の支給開始年齢の「67歳」「68歳」「70歳以上」などへの先送りをやめさせます。

低年金者の年金を底上げします

 政府は、消費税率10%増税と引き換えに、低年金者に「最大月5,000円、年間6万円」の「底上げ」を行う仕組み(年金生活者支援給付金)を導入しましたが、月5,000円をもらえるのは、年金に40年間加入し、すでに月6.5万円の年金を受け取っている人だけです。年金の加入年数が短い人は、それに応じて「底上げ」の額も減らすというのが政府のやり方です。年金額が低い人ほど「底上げ」も少額になる、こんな不合理なやり方では低年金の解決にはなりません。

 日本共産党は、年金額が基礎年金満額(月6.5万円)以下の低収入の年金生活者に、一律月5,000円・年間6万円を、現在の年金額に上乗せして給付します。

最低保障年金制度を確立し、頼れる年金にしていきます

 「減らない年金」と低年金の底上げを第一歩として、頼れる年金へと抜本的な改革を進めます。

 日本の年金制度には、どんな人にも最低限の年金額を保障するという仕組みがありません。そのため、現在、政府の推計でも26万人の無年金者がおり、若い世代の雇用と賃金が壊されるなかで、将来さらに多くの無年金者が生まれかねないことが問題となっています。

  公的年金制度のなかに、最低保障の仕組みがないのは、先進国では日本だけです。国連の社会権規約委員会からも、「最低年金を公的年金制度に導入すること」がたびたび勧告されています。

  全額国庫負担で、すべての高齢者に月5万円を保障し、その上に、払った保険料に応じた額を上乗せする年金制度に抜本的に改革します。これにより、国民年金の満額は、現在の月6.5万円から8.3万円に引き上がります。厚生年金の受給者も、月9万円、月10万円などの給付が低い人から、平均程度の人まで底上げをしていきます。

  最低保障年金の導入に足を踏みだせば、低年金・無年金の増大、年金制度の「空洞化」、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度が抱えるさまざまな矛盾を抜本的に解決する道が開けます。

 これを実現するのに必要な財源は5~6兆円規模となり、大企業・富裕層の優遇税制をただすだけでは確保できません。賃上げを実現しながら、所得税の累進強化など、消費税に頼らない税制改革によって確保します。

「消えた年金・消された年金」問題を、一人たりとも被害者を残さないよう、一日も早く、国の責任で解決し、年金行政の在り方を転換します

 5,000万件を超える未解明の年金記録の発覚(2007年)に端を発した「消えた年金」問題は、引き続き、約2,000万件の記録が解明できない状態が続いています。

 「消えた年金・消された年金」問題は、国が引き起こした問題であり、被害者には何の責任もありません。日本共産党は、“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で、国が解決に責任を果たすことを求めます。

 年金記録が消えたり、消されたりしていないかどうか、一人ひとりの受給者・加入者にわかるよう、国が管理・保有している情報をきちんと提供するとともに、相談・問い合わせ、記録の照会・訂正、未払い分の支払いのスピードアップなどに対応できるよう、体制の抜本的強化を図ります。

  この問題に対する国の責任放棄や“幕引き”を許さず、「分限免職」した職員の再雇用をはじめ、問題解決の体制をとり、解決に責任を持つことを求めます。

 「消えた年金」の発覚を契機に、記録の不備や行政側のミスで、年金が支払われていなかったケースが、本人や遺族の申立により次々と発覚しています。2017年9月には、情報システムの不備や事務処理のミスにより、1991年以後、元公務員の妻など約10万人に、総額598億円の「振替加算」が未払いだった事実も明らかとなりました。

 「消えた年金・消された年金」「年金の未払い・不払い」の大本には、国民の年金受給権をまもることには無関心で、保険料徴収と納入率アップのみを至上命令にするという年金行政のゆがみがあります。年金・社会保障は国民の権利であり、行政は国民の権利を守るために仕事をするという基本原則を、行政機関の上から下まで徹底することが必要です。この立場で、年金行政の抜本改革を進めます。

パート、派遣、契約社員など非正規雇用で働く人たちの厚生年金加入の権利を保障します

 厚生年金など社会保険に加入することは、本来、非正規雇用も含めた労働者の権利です。法人又は従業員数が常時5人以上の事業所は、正社員の4分の3以上の時間を働く労働者をすべて厚生年金に加入させる義務を負っています。ところが、この義務を果たしていない事業所が少なくありません。派遣社員も、派遣元企業に社会保険加入の義務が課されていますが、責任逃れや違法行為が蔓延しています。

 2012年の法改定で、①従業員数501人以上の企業、②週の所定労働時間20時間以上、③月額賃金8.8万円以上、④雇用期間1年以上という要件を満たす人は、厚生年金の対象とされました。さらに、2016年の法改定で、従業員数500人以下の事業所も、労使合意によって、上記②③④の要件を満たす人の、厚生年金加入が可能とされました。こうした改善措置を実効あるものとするためにも、低賃金や重い保険料負担の解決、低すぎる給付の引き上げなどが必要です。

 日本共産党は、最低賃金の抜本的な引き上げに向け、中小企業の賃上げを支援し、社会保険料の事業主負担分を減免する政策をかかげています。こうした中小企業に対する支援を進めながら、違法・脱法行為をなくし、非正規雇用で働く人たちの社会保険加入・厚生年金加入の権利を守るための施策を推進します。

公的年金等控除改悪など“高齢者増税”を阻止し、「天引き」をやめさせます

 自公政権が2015年に閣議了解した「社会保障改革」の「工程表」には、公的年金等控除のさらなる縮小など、“新たな高齢者増税”を検討する方針が明記され、経済財政諮問会議や財政制度等審議会で議論がすすめられています。

  かつて、小泉政権が強行した「高齢者増税」――公的年金等控除の縮小や老年者控除の廃止は、低所得の高齢者に増税を強いるとともに、国保料(税)・介護保険料など他制度の保険料や自己負担に波及して、“雪だるま式”の大負担増を引き起こしました。

 「下流老人」「老後破産」などの言葉がメディアの話題となることにしめされるように、高齢者の貧困が重大な社会問題となっています。そうした貧困と生活不安は、コロナ禍のなかでいっそう深刻化しています。

 高齢者には増税・負担増の追い打ちでなく、負担軽減こそ必要です。日本共産党は、65歳以上の公的年金等控除の最低保障額を2005年の「高齢者増税」以前の水準に戻すとともに、所得500万円以下の高齢者について老年者控除を復活します。

 介護保険料や住民税の年金「天引き」の強制をやめさせ、各人の希望で、普通徴収などに変更できるようにします。

「積立金方式」を看板にした制度改悪に反対します

 この間、財界の一部や日本維新の会などから、年金財政の「積立方式への移行」が叫ばれています。その中身は、公的年金を、民間保険会社の年金保険と基本的に同じ仕組みにするというものです。

  そうなれば、国民が受け取る年金は「自分で積み立てた金額+運用益」にとどめられ、老後の生活資金は「自己責任」で確保することが求められます。年金の保障に対する国の責任、事業主の保険料負担の責任が後退する一方、今でも貧しい年金給付はいっそう貧しくなっていきます。また、若い世代は、自分の老後の積立をしながら、現在の高齢者も支えるという「二重の負担」を強いられます。高齢者にとっても、現役世代にとっても、いいことは何もありません。

 日本共産党は、「積立方式化」の名で年金支給を削減し、公的年金への国の責任を後退させる制度改悪に反対します。

社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危機におとしいれる共通番号(マイナンバー)の中止を求めます

 各分野の政策55、「デジタル化問題、個人情報保護、マイナンバー」参照

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