「行き過ぎ」承知の上
国家公務員法(国公法)と人事院規則を引き写す形で、大阪市職員の政治活動を制限する今回の条例案。地方公務員法(地公法)では制限対象外の、▽政党機関紙の配布▽政治的意見を有する文書の発行、配布、演劇の演出なども条例案には盛り込まれています。
「国公法には、制限(する政治活動)が広すぎる部分がある」
これは橋下徹市長の認識。20日の市議会財政総務委員会で、日本共産党の山中智子議員の質問に答えたものです。
それを言えば
同日夜、市長退庁時の囲み取材でも、本紙記者との間で次のような一問一答がありました。
記者 市長は「国公法には行き過ぎの面がある」と話したが、具体的にはどの行為か
市長 漠然とした感覚。それを言えば条例案がおかしいということになる
橋下市長は、国公法に「行き過ぎ」があることを承知した上で、それを引き写した条例の制定を推し進めているのです。これほど論理が破綻した、でたらめな政治姿勢はありません。
山中議員の質問に橋下市長は次のような答弁もしました。
「(国公法の政治活動をめぐる裁判では)高裁判決は二つに分かれている。最高裁が違憲と判断すれば、条例は見直さなければならない」
国公法に憲法上の疑義があることを、十分知っているのです。
東京高裁は、支持政党のビラを配布した国家公務員を2004年に起訴した堀越事件には無罪を、世田谷事件(05年)には有罪の判決をだしました。
時代遅れの法
現在の国公法は、米占領下の1948年、国家公務員の労働基本権と市民的政治的自由を制限する目的で、連合国軍総司令部(GHQ)が命令(マッカーサー書簡)して制定された法律。「3年以下の懲役」といった罰則まであります。
50年制定の地公法では、国公法の「行き過ぎ」を反省し、制限する政治活動を大幅に縮小し、罰則をはずしました。
国連規約人権委員会は2008年、日本政府に対して厳しい勧告をしています。
「政治運動やその他の活動を、警察や検察官、そして裁判所が不当に制限することを防ぐために、表現の自由や公的な活動に参加する権利を不合理に制限している法律を撤回すべきである」
山中議員は、以上のような事実を指摘し、市長に迫りました。
「60年以上前の国公法はすでに時代遅れになっている。世界標準の考え方は、表現の自由は公務員を含むすべての人に保障すべき―というものだ。国連規約人権委員会から『撤回すべきである』と勧告された国公法を引き写した条例案は撤回すべきだ」
(「赤旗」2012年7月23日付)
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