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2025年4月15日(火)

主張

刑事デジタル法案

歯止めない個人情報収集・監視

 政府は、企業や個人にスマートフォンやインターネット上の膨大な電子データ(電磁的記録)の提供を罰則付きで命じられる「刑事デジタル法案」(刑事訴訟法改定案)を衆議院で早々と採決しようとしています。憲法の適正手続きの保障を侵害するものです。

■本人が知らぬ間に

 現在、スマートフォンの中や、電子データを扱う事業者のもとには、通信や移動の記録、購入履歴、インターネットの閲覧履歴、SNSの投稿などの大量の個人データが蓄積されています。

 現行でも捜査機関は本人に知られることなく、事業者が保有する大量の電子データをUSBメモリーなどの記録媒体に複写・ダウンロードして個人情報を入手しています。

 今回の法案は記録媒体への複写の手間なくオンライン上で直接、データそのものを取得できるようにします。事業者に、捜査機関に提供したことを漏らさないよう義務づける無期限の秘密保持命令も可能となり、違反した場合の罰則も創設されます。

 捜査機関は、本人に知られず、現状よりも速く大量のデータを収集・蓄積・利用することができます。事件と関連がない大量の情報が捜査機関に収集される危険性が極めて高まります。

 現状でも、犯罪と無関係の個人情報が集められ、プライバシー侵害が起きています。

 岐阜県警大垣警察署は、風力発電計画について勉強会などをしていた市民4人を監視し、個人情報を収集していました。名古屋高裁は警察の活動は違法と断じ、情報の抹消を命じました。警察の情報収集を規制する立法の必要性も指摘しましたが、いまだに厳格なルールはありません。

 今回の法案も、犯罪と関係のない個人や団体の情報を捜査機関が収集・蓄積するのに何の歯止めもなく、消去義務の規定、捜査機関の乱用への罰則もありません。

 通信の秘密を侵す盗聴法でさえ、個人情報収集への不服申し立ての機会を保障するため当事者への事後通知が必要なのに対し、この法案で設けられる「電磁的記録提供命令」では本人に通知されません。

■人権をさらに侵害

 電子データの性質上、事件と関連がある情報だけを特定して取り出すのは困難で、令状は包括的で無限定な提供命令になる危険性があります。

 最高裁は「(従来)裁判官は厳格に令状審査を行ってきた。電磁的記録提供命令の令状審査においても変わらない」と説明します。しかし、衆院法務委員会の参考人質疑で日本共産党の本村伸子議員の質問に、複数の参考人が、令状があっても事件と関係ない個人情報が包括的に差し押さえられているとのべています。

 法案は、オンライン証人尋問や盗聴の対象犯罪の拡大など捜査機関の利便性や権限を拡大する一方、国民の権利保障や弁護活動に資する制度は盛り込んでいません。

 人権のさらなる侵害は許されません。廃案にすべきです。

 国民・住民の権利、利益、自由を守るため、捜査機関の情報の収集・保有・利用の乱用防止、消去などのルール作成と独立した第三者機関を設置する立法措置こそ必要です。


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