2025年4月8日(火)
きょうの潮流
「もはやアメリカが片手を背中に縛られたまま競争する必要はない」。1971年8月15日、ニクソン米大統領が突然発表した「新経済政策」に世界は大混乱に陥りました▼当時の米国はベトナム戦争への出費や貿易収支の悪化で赤字体質に。ドルの信認が揺らぎ、深刻な通貨危機に直面していました。そこで打ち出したのが、ドルと金の交換停止と輸入品に10%の課徴金をかけることでした▼第2次大戦後のドルを基軸とする通貨体制は崩壊。世界の通貨は安定を失い、投機にさらされる時代に突入します。米国に頼ってきた日本も突き放され、特に中小企業は大きな打撃を受けました▼ニクソン・ショックと呼ばれたアメリカの一方的な大転換。それを思い起こした人もいるのでは。週明けの東京株式市場。平均株価が一時2900円以上も急落する世界同時株安の様相でした。トランプ・ショックです▼国際ルールや各国との取り決めを勝手に破り、報復を引き起こしているトランプ関税。米大手金融機関の試算では、世界経済が後退するリスクは60%まで上昇したと。雇用を守り、生活への影響を食い止める対策が急がれます▼トランプ政権への抗議デモは全米をはじめ世界各地で。効率化の名のもと、政府職員の大量解雇や公共サービス削減を進める実業家のマスク氏を批判する声も広がります。「世界のみなさん、本当にごめんなさい。良識のあるアメリカ人より」。デモにはこんなプラカードも。手を携え、暴挙を許さない闘いをいま。