2025年3月27日(木)
きょうの潮流
雨や風の音、動物の鳴き声、好きな人への思い…。薄い竹の板に付けたひもを引っ張って鳴らした音を、口の中で共鳴させることで表現する「ムックリ(口琴)」。木材を人間の形のようにくりぬき、中には魂が宿るという弦楽器「トンコリ」▼いずれもアイヌ伝統の楽器です。それを奏でながら、東京・新大久保でアイヌ料理店を営む宇佐照代さん。店には多様なルーツをもつ人びとが国内外から訪れ、つながる場となっています▼宇佐さんの伝承活動を追ったドキュメンタリー映画「そして、アイヌ」が公開されています。親をたどることで気づいた差別の悲しみ。大切な文化を多くの人に知ってもらい、次の世代に受け渡したい。そんな思いが伝わってきます▼映画では自分たちの言葉で話すことがはばかられるほど迫害されてきた朝鮮や琉球の人たちの姿も描かれています。それは過去のことではありません▼「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」。差別発言をくり返してきた杉田水脈・前衆院議員を、自民党は今夏の参院選比例代表の公認候補に決めました。法務当局から人権侵犯と認定されても無反省な人物を再び国会の場に送り出そうとする自民党と石破首相。欠如した人権感覚があらわに▼「アイヌ」という言葉は人間を意味します。宇佐さんは「ほかの人との区別をしていない」といいます。人間同士、なぜ差別しなければならないのか。今と未来に向けた問いかけです。