2024年11月16日(土)
全国都道府県委員長会議
田村委員長の報告
日本共産党が15日に開いた全国都道府県委員長会議で、田村智子委員長が常任幹部会を代表して行った報告は次の通りです。
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全国都道府県委員長会議へご参加のみなさん、またオンラインでご視聴のみなさん、おはようございます。総選挙でのみなさんの奮闘に心からの敬意を表します。常任幹部会を代表して会議への報告を行います。総選挙結果については、後でくわしく述べますが、日本共産党が、小選挙区では、沖縄1区で赤嶺政賢さんの「オール沖縄」の議席を守り抜いたことを、みなさんとともに喜び合いたいと思います。比例代表で9議席から7議席へと後退したことは、大変悔しい結果であり、責任を痛感しています。党内外からの意見に丁寧に耳を傾けて教訓をひきだし、来年の都議選・参院選挙で捲土(けんど)重来を果たす決意を述べるものです。
本日の会議の目的は三つです。第一に、総選挙の歴史的な結果と選挙後の情勢を大局的にとらえ、激動の情勢のもとでのわが党の基本姿勢を明らかにすること。第二に、わが党の選挙結果について常任幹部会としての中間的な総括を明らかにし、来年の都議選・参院選挙勝利に向けた活動に直ちに生かすこと。第三に、参議院選挙の目標を明確にするとともに、党建設と選挙勝利の活動をどうやって一体にすすめるかの意思統一をすることにあります。
1、「新しい政治プロセス」と日本共産党の基本姿勢
総選挙の歴史的結果と「新しい政治プロセス」を大局的にとらえる
まず選挙結果をどうとらえるかについてです。これは、10月28日の「常幹声明」と、これを受けて志位議長が横浜・千葉で行った演説とあいさつを基調とし、選挙戦の全体を大局的にとらえることが大切です。その中心点を述べたいと思います。
自民・公明政権への歴史的審判をわが党は心から歓迎する
第一は、総選挙全体の結果は、自民・公明政権に対して、国民が歴史的審判をくだしたものであり、この歴史的審判をわが党は心から歓迎いたします。そして、この歴史的審判をつくりだすうえで、日本共産党と「しんぶん赤旗」が大きく貢献したことを、誇りをもって確信にしていくことをまず訴えたいと思います。
国民がくだした審判は、何より裏金問題への怒りであることは明らかです。同時に、その根底には、暮らしの困難への無為無策、大軍拡には巨額の税金を使いながら暮らしの予算を切り詰めるなど、経済や外交・安全保障を含む自民党政治の全体に対する不信や怒りがあります。そして、この歴史的審判によって、改憲勢力が衆議院で3分の2を割ったことも重要な変化です。
いま全体として、わが党が歓迎すべき前向きの政治的激動が起こっており、この激動をつくりだすうえで、日本共産党と「しんぶん赤旗」が大きく貢献したことは、メディアや他党から「MVPは共産党と赤旗」など評されている通りです。選挙結果の報告での宣伝・対話では、有権者から「共産党のおかげだ。がんばってほしい」など、激励や温かい反応が相次いでいます。わが党が果たした役割に誇りをもち、大いに国民のなかに打って出ることが重要だということを強調したいと思います。
「自民党政治に代わる新しい政治」の中身について国民が結論を出したとは言えない
第二に、それでは「自民党政治に代わる新しい政治」の中身について、国民が今度の選挙で結論を出したかと言えば、その結論が出ているとは言えません。この点では、国民の選択が明確になったわけではないということをよく見て、今後の政治に対応することが求められます。
例えば、議席を伸ばした立憲民主党は、裏金政治を批判し「政権交代」を訴えたが、どういう日本をつくるのか、その路線的対抗軸を示したわけではありません。国民民主党は、「手取りを増やす」という、ワンイシューの政策で議席を伸ばしましたが、個々の政策の問題点とともに、内政・外交の基本路線で自公政権の補完勢力であることには、いささかの変わりもなく、国民の願いとの間には大きな矛盾が存在しています。
総選挙で、国民は、自民党に「ノー」の審判をくだしたが、自民党に代わる「新しい政治」の中身について何らかの選択を行ったわけではなく、そうした「過渡的段階」が始まったということです。
「新しい政治プロセス」のもとで各党の真価が試される
第三に、「常幹声明」では以上の点を踏まえて、「国民が自民党政治に代わる新しい政治を模索し、探求する、新しい政治プロセスが始まった」と述べました。この「新しい政治プロセス」に対するわが党の基本姿勢は、このプロセスを「国民が主人公」の政治の実現に向けて、国民とともに前に動かすということにあります。この基本姿勢を堅持し、意気高く新しい情勢にのぞむことが重要です。
「新しい政治プロセス」では、各党の真価が試されることになります。選挙で示された国民の民意のベクトルは、「自民党政治から抜け出して新しい政治をつくりたい」というところにあります。新しい政治が何かという中身については、まだ結論を出していませんが、ベクトルの向きははっきりしています。この民意に逆行する立場をとるならば、厳しい批判と審判がくだることになるでしょう。各党の全てが試されるし、わが党も試されるこのことを肝に銘じて奮闘していきたいと思います。
まず選挙後の特別国会で問われたのは、首相指名への態度でした。特別国会に向けて、わが党と立憲民主党との会談が行われ、野田代表から決選投票での協力を要請されました。私は、総選挙で示された民意にこたえ、裏金事件の真相究明と企業・団体献金の全面禁止が不可欠だと強調し、この点での一致を確認しました。また、一連の緊急の要求課題への対応についても、前向きな協議となりました。このことを踏まえて、首相指名の決選投票で、立憲民主党・野田佳彦代表に投票いたしました。結果は、無効票が80票を超え、石破茂自民党総裁が、過半数を大きく割り込む得票で指名されましたが、こうしたわが党の態度こそが、総選挙で示された「自公政権ノー」の民意に最も真剣かつ誠実にこたえるものであったことは、明らかではないでしょうか。
第2次石破政権は、極めて不安定な状況で国政運営を行わなければならず、今後、自民党はさまざまな策を弄(ろう)して野党の取り込みを狙うことになるでしょう。さまざまな局面で、各党が、国民要求にこたえるのか、それとも行き詰まった自民党政治の延命に手を貸すのかが、鋭く問われることとなるでしょう。
この「新しい政治プロセス」が今後どういう展開を遂げるかは、今から予断をもって言うことはできません。しかし大局的には、国民の認識が、さまざまな政治的体験をつうじて、日本の政治の「二つの異常なゆがみ」をただすというわが党の綱領路線に接近していく可能性、必然性をもっていることに確信をもって情勢にのぞむことが大切です。
同時に、「新しい政治プロセス」は自動的に前にすすむものではありません。これが新しい政治の実現に実を結ぶためには、国民的なたたかい、党の主体的・攻勢的なたたかいが決定的な意味を持つ――この立場でのぞむことが重要だということを強調したいと思います。
2007年参院選の自民党大敗と同じことの繰り返しではなく大きな違いがある
第四に、「新しい政治プロセス」という情勢の規定は、2007年参院選で自民党が大敗し、参院選で政権与党が過半数を割る「衆参ねじれ」が生まれた時に行ったことがあります。この選挙総括を行った24大会5中総では、「国民が、自公政治に代わる新しい政治の中身を模索する新しい時代、新しい政治プロセスが始まった」という規定を行い、「新しい政治プロセス」を国民とともに前に動かす政治姿勢を堅持して情勢にのぞもうという意思統一を行いました。
その後、2009年の総選挙によって民主党政権が誕生し、わが党は9中総で民主党政権について「過渡的な性格を持った政権」と規定し、この政権は対米従属と大企業中心という「二つの政治悪」から抜け出すという立場を持ってはいないが、国民要求を反映した前向きの要素もあるとして、「良いことには協力、悪いことには反対」という「建設的野党」として政治を前に動かす姿勢でのぞみました。民主党政権は途中から、辺野古新基地、原発再稼働、消費税増税、TPPなどの問題で自民党と同じ立場をとるようになり、国民の支持を失って崩壊し、自公政権が復活しましたが、そうした情勢の激動のなかで、一貫して国民とともに国民の気持ちに寄り添い政治を前に動かす立場を貫いてきた日本共産党に光が当たり、2013年、14年などの国政選挙での躍進として実りました。そして、わが党はこの躍進した力で市民と野党の共闘にとりくみ、大きなムーブメントをつくりました。共闘は2021年総選挙で、自民党などの攻撃によって阻まれましたが、わが党が「国民とともに政治を前に動かす」という姿勢を堅持した活動で、たたかいを大きく発展させたことは、わが党にとっても、また国民的にも重要な歴史的経験となったということを確信するものです。
2007年参院選の自民党大敗と同じようなことが、今回の総選挙でも起こりました。しかし、同じことの繰り返しではなく、大きな違いがあります。
一つには、自民党の政治的モラルの劣化、内政・外交での政治的行き詰まり、また政治的基盤の衰退が格段にすすんでいるということです。政治的基盤ということでいえば、21世紀に入ってからの自民党の絶対得票率をみると、2005年の25%がピークであり、2007年の参院選以降、20%に達したことはありません。今回の総選挙では14%と15%を割りました。今後、かりに自民党が補完勢力を引き入れて延命を図ったとしても、国民との関係では14%しか得票できていない、このことがベースとなって情勢が展開することになります。
二つには、「新しい政治プロセス」の扉を開けたのは、日本共産党と「しんぶん赤旗」であるということです。そういう党として、わが党はこの「新しい政治プロセス」を前にすすめる責任もあれば、権利もあるということを強調したいと思います。
三つめには、衆議院での自公少数への転落は、一歩、間違えば、内閣不信任案可決に直結するものであり、参院選での少数への転落とは比較にならないほど、自民党にとって深刻な事態だということです。
これらは、今回の「新しい政治プロセス」は、国民のたたかい、党のたたかいいかんで、政治を変えるさらに大きなムーブメントをつくる可能性をはらんでいることを示すものです。今回の総選挙での党の後退は、大変悔しく残念な結果ですが、それは「新しい政治プロセス」の最初の一断面であり、今後の奮闘いかんで、政治的力関係は大いに変わりうる。激動的局面は始まったばかりだということを、大きくとらえて奮闘しようではありませんか。
「新しい政治プロセス」を前にすすめるという党の任務を果たすべく、来年の都議選・参院選挙勝利という政治的躍進と、強く大きな党建設へと、決意を新たに立ちあがることを心からよびかけるものです。
「二重の構え」を貫こう――新たな情勢のもとでの日本共産党の基本姿勢
「新しい政治プロセス」を国民とともに前に動かすために、わが党の基本姿勢として「二重の構え」を貫くことをよびかけます。
国民要求にもとづく運動をあらゆる分野で起こし、その実現に力をつくす
一つは、直面する熱い問題で国民とともに要求運動にとりくみ、その実現へ全力をつくすことです。
「企業・団体献金の禁止」「選択的夫婦別姓制度」など、自民党だけが正面から反対して妨げてきた要求の実現へ、幅広い国民とともに運動を大きく広げていきましょう。
紙の健康保険証の廃止を凍結・中止させましょう。国民的な運動の広がり、またわが党も直接に要求するもとで、立憲民主党が「存続法案」を特別国会に提出しました。臨時国会での法案成立を求めていこうではありませんか。
来年の春、東大で大幅な学費値上げを行おうとしていることをはじめ、国立・私立大学での学費値上げが相次いでいます。総選挙では各党が「教育費無償」を掲げており、学費負担軽減は与野党を超えた公約です。学費値上げストップに必要な予算は、国公私立あわせても1000億円程度です。国の責任で、来年の学費値上げにストップをかける緊急の要求運動を、青年・学生とともに巻き起こしていこうではありませんか。
軍拡増税を許さないたたかい、消費税減税、インボイス廃止、政治の責任での大幅賃上げなど、各分野での要求を国民とともに大きく発展させていくことを心からよびかけるものです。
自民党政治に代わる新しい政治とは何かを綱領を手に語り合う宣伝・対話に挑戦しよう
「二重の構え」のいま一つは、自民党政治に代わる新しい政治とは何かを、国民の模索と探求にこたえ、綱領を手に国民と語り合う宣伝・対話運動にとりくむことです。
暮らしの要求、平和への願いを本格的に実現しようとすれば、財界・大企業優先、日米軍事同盟絶対という、日本の政治の二つのゆがみとぶつからざるをえません。切実な要求から出発し、新しい政治をともに考え語り合うなかで、二つのゆがみをただす綱領路線、日本の民主的改革の展望を広く国民に語ろうではありませんか。
例えば暮らしの問題では、国民の切実な要求を実現しようとすれば、その財源をどうするかにたちまちぶつかることになります。“財源などお構いなし”の議論は、一時的部分的な共感をえたとしても、新しい政治への展望とはなりえません。大企業・富裕層への税優遇、大企業がため込んだ巨額の内部留保に切り込むのか否か、財界・大企業の利益最優先という政治のゆがみをただすのか否かが焦点となってきます。さらに、アメリカ言いなりですすめられている大軍拡を続ける立場にたつならば、財源問題はまったく答えが出せなくなるでしょう。
直面する要求を実現することとのかかわりで、日本の政治の二つの異常なゆがみをただす、日本共産党の日本改革の展望を語り、ともに政治を変えようとよびかけていこうではありませんか。
「新しい政治プロセス」を前にすすめる推進力――党の政治的躍進と強く大きな党づくり
「新しい政治プロセス」を前にすすめる推進力は何か、日本共産党の政治的躍進と強く大きな党をつくることにあります。2007年に「新しい政治プロセス」が始まった時と比べても、わが党の政治的影響力、組織的力量はあまりにも小さいといわなければなりません。この推進力が小さいままでは、「新しい政治プロセス」を前にすすめることはできません。わが党の力が及ばなければ、この「新しい政治プロセス」がさまざまな逆行に直面することもありうるし、より悪い政治へと暗転する危険もあります。
都議選・参院選での躍進、強く大きな党づくりを、「新しい政治プロセス」を前にすすめる推進力として太く位置づけ、なんとしてもやりとげていこうではありませんか。
2、日本共産党の選挙結果についての中間的総括について
日本共産党の選挙結果と選挙のとりくみの総括については、都道府県委員長・地区委員長から寄せられた「総選挙をたたかっての感想」、各ブロックでの候補者会議で出された意見、党内外からお寄せいただいている意見などを詳細に検討して、4中総において行います。この会議では、常任幹部会としての中間的な総括の報告を行うものですので、ぜひ率直な議論をいただきたいと思います。
日本共産党の比例での得票は、336万3千票、得票率6・16%で、前回の総選挙(2021年)の416万6千票、得票率7・25%から後退し、9議席から7議席への後退となりました。
裏金問題の追及などで大きな役割を果たしながら、なぜ日本共産党の議席が後退したのか。常任幹部会では、第29回党大会決定の総選挙方針、「二つの政治姿勢」と「三つの突破点」に照らして率直な議論を開始しています。現時点で、間違いなく言えると考える点にしぼって報告したいと思います。
政治論戦はどうだったか――「二つの政治姿勢」にてらして
まず政治論戦がどうだったかについてです。
第29回党大会決定は、総選挙にのぞむ「二つの政治姿勢」として、第一に、国民の切実な要求と結び付けて、日本の政治の二つのゆがみを「もとから変える」、わが党の綱領的値打ちを太く押し出すこと、第二に、わが党の綱領と組織のあり方への攻撃を打ち破って、党への丸ごとの支持を広げ、積極的支持者を増やすことを提起しました。
第一の政治姿勢にもとづく論戦は、腐敗政治一掃、暮らし優先への政策転換、「戦争国家」づくりを止め外交の力で平和をつくる、気候危機の打開、ジェンダー平等など、どの問題でも、国民の利益にかなったものであり、それが伝わったところでは共感を広げました。
「賃上げと一体で労働時間の短縮を」という政策を新たに打ち出しましたが、会社員・公務員向けの宣伝で「自分の時間 足りていますか」と問いかけながら政策を訴えるフライヤーの受け取りが驚くほどよかったという声が全国から寄せられています。子育て世代の女性から「こういう政策を待っていた」という声が寄せられるなど、新しい層への反響を広げています。この新しい政策を、国民的議論とたたかいを通じて国民のものにしていくことは一大事業となりますが、日本社会が全体として抱えている「労働時間規制に対する歴史的立ち遅れ」に対して、正面からの政策提起を行ったことは、日本共産党ならではの先駆的提起だと確信しています。
また「日米同盟の4文字で思考停止となる政治でよいのか」という、日本の根本問題を正面から提起し、「東アジア平和提言」という対案を訴えぬいたことは、この問題でほとんどの政党が、何も語らないもとで、国民の平和の願いにこたえ、日本の国のあり方の根本を問うわが党ならではの重要な論戦であったと確信するものです。
第二の政治姿勢については、大会決定にもとづき、「共産主義と自由」を学び語り合う大運動にとりくんだことは、理論的にも、政治的にも、新しい画期的なとりくみでした。少なくない候補者のみなさんから、この問題でも自分の言葉で生き生きと語ったことが報告されていることは、たいへんうれしいことです。広く国民の中には、「社会主義には自由がない」「共産党はいいことをいうが名前が」という思いがあります。こうした誤解や不安に、正面からこたえているのが、第29回党大会の「未来社会論」であり、「共産主義と自由」の理論的な発展です。この挑戦は始まったばかりであり、さらに発展させ、とことんやりぬいていくことが重要だと考えています。
党大会後、党の組織のあり方に対する攻撃が行われ、わが党は、丁寧に反論を行ってきましたが、この問題での党への誤解や偏見を払拭し、党の本当の姿を伝える活動も、さらに発展させる必要があると考えています。
このように党の政治論戦は、全体として的確なものだったと考えます。問題は、その内容を多くの国民に伝えることができなかったということにあります。その根本的な原因は、後で述べるように、国民に伝える活動の総量が足りなかったことにあり、そして、その根本には党の自力の問題があることをまず強調しなければなりません。
同時に、活動の仕方――質を改革する必要があります。ある職場支部の班が、“共産党が果たした役割がこんなにも鮮明な選挙でなぜ前進ではなく後退したのか。私たちの活動をどうレベルアップさせたらよいのか”を議論し、「提案」を常任幹部会に届けてくれましたが、これはたいへん真剣で学ぶところの多い「提案」でした。とくに大事だと感じた点を紹介したいと思います。
「共産党を知ってもらうことの大事さは自覚しているが、活動量に見合った効果を発揮していない。自力を大きくすることの重要性に加えて、自力の活(い)かし方の重要性も共有しスキルアップしたい。知ってもらえば支持は広がる。間違いなく共産党はそんな政党です。今の時代にマッチしつつ、キャッチーな言葉で風をつかむだけにとどまらない、共産党ならではの豊かな発信方法、有権者へのコンタクトの仕方をつくりだしたい。私たちだからできる戦術を開拓したい。一筋縄ではいかない挑戦だからこそ全党で知恵を出し合いたい」
この同志が提起しているのは、「キャッチーな言葉で風をつかむだけにとどまらない」という言葉で明らかなように、「『ワンフレーズ』で風をつかもう」という提案ではないことを私たちは読みとりました。「真の解決策を提示できない政党が得た勝利は、いずれその輝きを失い『そういえばそんな政党もあったね』と語られる未来を迎える」。こういう指摘も提案ではなされています。
こうした意見も真剣に受け止めて、SNSの抜本的強化を含め、「共産党ならではの豊かな発信方法」をつくりだす改革をはかっていきたい。これはまさに「一筋縄ではいかない挑戦」だと私自身も痛感しています。それだけに、みんなで知恵を出し合っていきたい。みなさんの中でも議論をし、知恵を出しあって、中央に寄せていただきたいと思います。
「三つの突破点」にもとづく選挙活動に日常的にとりくむうえでの中央のイニシアチブの弱点
大会決定では、総選挙躍進への独自のとりくみとして「三つの突破点」で新しいたたかいに挑戦することをよびかけました。①「声の宣伝」を「全有権者規模」に大きく発展させる。②「折り入って作戦」を選挙勝利と党勢拡大の要の活動と位置づけ、大規模に発展させる。③「SNSに強い党」になり、ボランティア、サポーターが参加する選挙にする――ということです。「三つの突破点」にもとづく選挙活動は、どれも選挙間近になって始めればよいというものでなく、日常的にとりくんでこそ選挙勝利に結びつく活動となります。「三つの突破点」の活動を、日常的に推進するうえで、中央のイニシアチブに弱点があったことを率直に述べたいと思います。
「折り入って作戦」を選挙勝利と党勢拡大の要として早い段階からとりくむうえでの弱点
一つは、「折り入って作戦」を選挙勝利と党勢拡大の要の活動と位置づけ、日常的にとりくむうえでの中央のイニチアチブが弱かったことです。
第29回党大会決定では、「折り入って作戦」について、「『しんぶん赤旗』読者、『後援会ニュース』で結びついている後援会員を二度三度と訪問・対話して」とあります。本気で「二度三度」を実行しようとすれば、時期がわからない選挙とはいえ、早い段階からとりくむことが必要でした。選挙間近ではじめて二度三度は間に合わないことは明らかでした。この点での中央のイニシアチブは不十分だったと率直に反省したい。
SNSを選挙戦勝利の大戦略として、日常的に推進することの立ち遅れ
「SNSに強い党」になり、ボランティア、サポーターが参加する選挙に、という点でも、今回の総選挙では「始めたばかり」という段階にとどまりました。
中央としてのLINE活用のよびかけや講習会などにとりくみ、活用されたところでは、新たな対話・支持拡大の広がりをつくっているが、一部のとりくみにとどまりました。
党中央としての発信、候補者の発信も、ショート動画、ユーチューブ、インスタグラム、TikTokなどさまざまな挑戦が「始めたばかり」という段階にとどまっています。それぞれの媒体での登録者数、視聴数は、他党と比べても、大きく引き離されています。2013年の参院選で躍進をかちとった時には、わが党はネット戦略で「トップランナー」と言われました。ところが、現状は、大きく立ち遅れているということを、私たちは深く自覚する必要があります。
「SNSに強い党」になるということは、たやすいことではありません。これも選挙間際になってとりくみを開始しても追いつきません。いわば選挙をたたかうインフラ整備といえる準備ができていなかった。この点でも、中央としての戦略的なとりくみに立ち遅れがあったことを率直に反省し、ただちにとりくみの抜本的強化をはかりたいと考えています。
さきほど職場支部の同志からの「提案」も紹介しつつ、活動の仕方――質を改革すること、「共産党ならではの豊かな発信方法」をつくりだす改革の重要性を述べましたが、「SNSに強い党」になることは、そのなかでも中心的な挑戦課題であることを強調したいと思います。
根本的な弱点である自力の不足を直視し、覚悟を決めて打開を
日本共産党の得票と議席の後退の最大の原因は、自力の不足であることを直視しなければなりません。
私たちは、第29回党大会の最大の任務が「強く大きな党づくり」「世代的継承」にあることを繰り返し議論し、党建設の目標に照らして、「目標水準」の活動に発展するように努力してきました。特に今年前半での党づくりを強調し7月末までに「目標水準」を達成しようと奮闘し、達成にいたらないもとで、8・9月も党づくりの努力を貫きました。それは、2中総の「手紙」にあるようにわが党が求められる任務を果たすために、どうしても必要な活動でした。
このもとで、党大会後の9カ月間で3974人の新しい党員を迎えたことは、総選挙での大きな力となりました。長野県委員長からは、「新入党員を迎えた支部は、どこでも新入党員が宣伝・対話支持拡大などで力を発揮し、支部が元気になった」「11カ月連続全地区入党でたたかったことは正解だった」と報告されていますが、このことを全党の確信にしたいと思います。
しかし、党大会後に新たな党員を迎えた支部は15・5%にとどまっています。支部の困難が質的に極めて厳しいものとなり、選挙でのあらゆる活動に大きな影響をもたらしていることは、どの党組織も痛感している現実です。
全国的にも、対話数444万2千(参院比51・7%、21年総選挙比42・8%)、支持拡大393万2千(参院比60・4%、21年衆院比53・3%)、折り入っての働きかけ66万8千(69・2%、54・4%)にとどまりました。
今回の後退の根本的要因が、自力の弱さにあることは、全党の同志のみなさんが共通して痛いほど感じておられることだと思います。一部に「また自力か」「自力と言われるとつらい」という声もあります。しかし、この弱点から目を背けてはなりません。自力の不足を直視し、現状を打開する党建設に全力をあげてとりくむことが、来年の都議選・参院選勝利に不可欠であること、さらに綱領路線を実現する中長期の展望にたって党の未来を開くうえで死活的課題であることを、選挙戦の最大の教訓として銘記したいと思います。
3、都議選・参院選勝利をめざす活動と党建設を一体にすすめよう
次に、三つ目の柱、都議選・参院選勝利をめざす活動と党建設と一体にすすめる基本方針について報告します。
参議院選挙の目標と方針――「650万票、10%以上」の目標を堅持して勝利をめざす
参議院選挙の目標は、党大会で確認した目標を堅持して奮闘します。すなわち、「比例を軸に」を貫いて、「650万票、10%以上」、比例代表で改選4議席から5議席への議席増をめざします。選挙区では、東京(吉良よし子)、埼玉(伊藤岳)、京都(倉林明子)の現有議席を絶対確保し、議席増をめざします。今日あらたに4人区の神奈川(あさか由香)、愛知(すやま初美)、大阪(清水ただし)の選挙区候補を紹介します。
都議会議員選挙は、直後の参議院選挙との連続選挙となります。2010年代半ばのわが党の躍進は、2013年の都議選・参院選の連続選挙での都議選の勝利から始まりました。国政選挙での反転攻勢、新たな躍進に向けて、都議選勝利を全党的課題として位置づけ、現有19議席を絶対確保し、議席増に挑戦しましょう。
都議選・参院選勝利に向け、ただちに候補者を決定し、支部の得票目標・支持拡大目標を決め、候補者を先頭に都議選・参院選勝利を正面にすえた活動に踏み出すことを訴えるものです。
1月の北九州市をはじめ、政令市・県都をふくむ88市106町村の中間選挙が、来年夏までにたたかわれます。一つ一つの選挙で勝利する対策を強め、党躍進の新たな流れをつくりだそうではありませんか。また、新たな情勢のもとで早期の総選挙の可能性もあります。中央として、情勢を的確に分析し必要な判断をしていきたいと思います。
選挙勝利をめざす活動では、総選挙の中間的総括にたって、党大会決定の「三つの突破点」をただちに具体化、実践しなければなりません。
第一に、全有権者規模の宣伝に打って出ることです。「新しい政治プロセス」を前にすすめる「二重の構え」にたち、国民要求実現の活動におおいにとりくみつつ、「綱領を手に国民と語り合う大運動」として、「まちかどトーク」や「シール投票」、駅頭ロングラン宣伝などの対話型の宣伝にとりくみましょう。「共産主義と自由」「自由な時間」をテーマにした宣伝・対話にとりくみ、日本共産党がどんな党かを語っていきましょう。
第二に、対話・支持拡大をただちに開始し、選挙勝利と党勢拡大の要の活動となる訪問対話での「折り入って作戦」をスタートさせましょう。「第1次・折り入って作戦」として、2月までに300万人の後援会員・「赤旗」読者に1回目の働きかけを完了することを目標に、まず12月末までに100万人の働きかけをやりぬきましょう。中央として必要な資材の作成を急ぎます。宣伝・訪問対話でも日常不断にLINE交換で結びつきをつくり、候補者のLINE公式やJCPサポーターへの登録で協力を広げていきましょう。
第三に、「SNSに強い党」を今度こそ早い段階でつくりあげるということです。ここでも、国民要求にもとづくとりくみと、党の綱領・理念・歴史を伝えるとりくみを広げます。候補者にSNSサポートチームをつくり、とくに他党に後れをとっているユーチューブ、インスタグラム、TikTokを重視して議員・候補者のアカウントを育てていきましょう。中央としてSNS講座を開催します。都道府県・地域ごとのSNS講座にもとりくんでいきましょう。中央でも、地方でも、この問題での抜本的とりくみの強化方向を、4中総で提起できるよう、検討を開始したいと考えています。
党建設の目標――選挙勝利の最大の保障であるとともに党の命運がかかった死活的課題として
自力の不足は総選挙の最大の教訓であり、選挙勝利の諸課題とともに世代的継承を中軸とする党建設の現状を打開することは、都議選・参院選勝利にとっても最大の保障となります。
同時に、党建設の意義は、選挙勝利にとどまるものではありません。第29回党大会決定では、党員拡大の「空白期間」の問題に自己分析のメスを入れ、「新たな大会期を党づくりの後退から前進への歴史的転換を果たす大会期にしよう」と決意を固めあいました。4月の第2回中央委員会総会では、全党の支部・グループのみなさんへの「手紙」を出し、次期党大会をめざす2年間の党づくりの目標をやりきれるかどうかに党の命運がかかっていることを切々と訴えました。
この決意にいま一度たちかえり、党建設を、日本の社会変革の事業において党の任務を果たしつづけられるかどうかがかかった死活的課題と位置づけて力をつくすことを訴えるものです。
目標は、党大会でかかげた2年間の目標――①第28回党大会時の党勢――27万人の党員、100万人の「しんぶん赤旗」読者を必ず回復・突破すること、②第28回党大会で掲げた青年・学生、労働者、30代~50代での「党勢倍加」、1万人の青年・学生党員と数万の民青の建設をはかる「5カ年計画」の実現にむけ、2年後までの目標をもち、やりとげることにありますが、当面、この11月、12月は次の目標を必ず達成するために奮闘することを提起します。
党員拡大は、第29回党大会現勢の回復(3644人減)をめざし、少なくとも11月に1千人、12月に2千人の党員を迎え、現勢で必ず前進に転じるということです。世代的継承を中軸にすえ、青年・学生、労働者、30代~50代の入党者で6~7割以上をめざしましょう。
青年・学生分野では、12・1現勢調査が行われます。学生党員で4年連続となる現勢の前進をかちとりましょう。目前の民青全国大会へ、民青同盟は年間3千人の目標達成はもう目前となっています。この目標達成へ、さらなる同盟員の拡大へと援助を強めつつ、その発展を支えるため民青のなかでの党員拡大を重視しましょう。
読者拡大では、11月、12月で、第29回党大会時の読者数の回復(日刊紙4089部減、日曜版1万8144部減、日刊電子版748部増)をめざし、少なくともすべての都道府県が、日刊紙、日曜版とも2中総(4月1日)時点の読者数を回復・突破しましょう(日刊紙1656部、日曜版6727部)。すでに突破している県、地区は自主目標を決めることとしたいと思います。
目標をやりぬくうえでの強調点
11月、12月、いかにして目標をやりぬくか。選挙後の党勢拡大の新たな可能性・条件が生まれていることをまず強調したいと思います。選挙直後から「ありがとう赤旗」の声とともに、中央への「しんぶん赤旗」の購読申し込みが1900件以上寄せられています。日本共産党が議席を伸ばしてほしいという期待、「赤旗」への注目が広がっています。この情勢を攻勢的にとらえて、思い切った党勢拡大に踏み出そうではありませんか。
党建設と選挙勝利の課題を一体にすすめて目標を達成するために、以下の活動を強調したいと思います。
第一に、年内に100万人の後援会員・「赤旗」読者に働きかける「第1次・折り入って作戦」と一体に、党勢拡大の独自追求を強めるということです。
「折り入って作戦」のなかで広く「入党のよびかけ」を届けることで、入党対象者を広げるとともに、訪問先でのミニ「集い」や地区、自治体・行政区での「集い」にとりくみ、選挙勝利への協力のよびかけと入党の働きかけを一体にすすめましょう。全党の力で、青年・学生、労働者、真ん中世代の結びつきに光をあて、名簿化し、総あたりしていきましょう。
読者拡大では、「折り入って作戦」で必ず日曜版読者には日刊紙の見本紙を、支持者・後援会員には日曜版の見本紙を届け、選挙の協力と一体に日刊紙、日曜版の購読を訴えましょう。また、全有権者規模の「声の宣伝」と合わせて、広く国民に購読をよびかけようではありませんか。
第二に、各分野の切実な要求を実現する運動と結んで党勢拡大をすすめるということです。
総選挙の結果、「新しい政治プロセス」がはじまるもとで、党大会決定で示した国民運動のなかで党が果たす「四つの原則」がいよいよ力を発揮するときです。紙の保険証の存続、選択的夫婦別姓の実現、学費値上げストップなど、あらゆる分野で要求運動をおこし、支部の「政策と計画」にもとづく「車の両輪」の活動を発展させ、党勢拡大をすすめていきましょう。
第三に、選挙ボランティアを日常的に広くよびかけることと結んで、世代的継承を中軸とする本格的な党づくりに挑戦することです。
今回の総選挙でも全国で1650人を超えるボランティアが、ボランティアセンターや街宣場所に駆けつけ、党を押し上げようと応援してくれました。各県の報告によると、7割~8割が若い世代、真ん中世代であり、選挙後、全国各地でボランティアに参加したこの世代が入党しています。総選挙の出口調査では、若者のなかで自民党の支持が崩壊し、新しい政治への探求と模索はこの世代に集中的にあらわれています。「しんぶん赤旗」の申し込みの急増も、若い世代、真ん中世代の新鮮な注目によるものが多数となっています。
総選挙で生まれた新しい結びつきに働きかけるとともに、都議選・参院選にむけても日常的にボランティアをよびかけ、これと結んで党の世代的継承をすすめていきましょう。
第四に、党の質的強化をはかり、理論的・政治的に強い党になるということです。党大会決定の全支部討議、全党員読了に新たな決意にたって力をつくしましょう。党大会決定がよびかけた「党綱領、党規約、党史、科学的社会主義の一大学習運動」に新たな決意でとりくみましょう。新入党者教育を必ず行い、新しい党員の初心が生きる党活動を援助しましょう。
「共産主義と自由」を学び語り合う大運動をさらに発展させよう
3中総決定でよびかけた「共産主義と自由」を学び語り合う大運動は、総選挙までの課題にとどまるものではなく、日本社会の民主的改革、さらには社会主義的変革をすすめるうえでの文字通り戦略的課題です。『Q&A共産主義と自由』の本の学習、普及に全党がとりくみましょう。綱領を手に国民と語り合う宣伝・対話運動のなかに、党綱領のめざす社会主義・共産主義の魅力を大いに語ることをしっかりと位置づけてとりくむことを訴えたいと思います。
「手紙」と「返事」を貫き、「全国地区役員講座」を力に、全支部・全党員の活動に
参院選・都議選に勝利するうえでも、世代的継承を中軸とする党勢拡大の目標を達成するうえでも、全支部、全党員が活動に立ち上がることが、最大のカギとなります。
「わが党にとって歴史的な分かれ道となる2年間」という2中総の「手紙」の問いかけは、“わが支部のこと”として深く受け止められ、党づくりに真剣にむきあい、足を踏み出す力になってきました。昨年は「返事」が出せなかった支部が、「今度は出そう」と「返事」を出し、現状打開に踏み出しています。まだ「返事」を出していない支部には、今からでも「返事」を寄せていただき、「まずはここから」という活動から具体化し、実践に踏み出すことを心からよびかけたいと思います。
このとりくみを推進する党機関の役割はいよいよ大きくなっています。全国で約5200人の県・地区役員がリアルタイム視聴した9月7日の「全国地区役員講座」は、支部を直接指導・援助する地区委員会の固有の役割と、党大会決定の三つのスローガン(①「双方向・循環型で支部を援助する党機関になろう」②「政治的・思想的に強い党機関になろう」③「若い世代、女性役員が生き生き活動し成長する党機関になろう」)、これにもとづく機関活動強化への指針が深くつかまれ、総選挙の激務のなかでも、地区役員が献身的に支部に出かけ、支部を援助し、支部とともに奮闘をひろげる元気の源となりました。
すべての党機関が、「全国地区役員講座」の内容を自らの党組織に引き寄せて学び討議し、党づくりの目標達成と選挙勝利をやりとげる力にしていこうではありませんか。地区役員が一人残らずこの「講座」をあらためて視聴・読了することを特別に重視することをよびかけるものです。
全国の都道府県委員長のみなさん、報告を視聴いただいたみなさん。今はじまった「新しい政治プロセス」のもとで、日本共産党のあらたな任務が鮮明になってきていると思います。「国民とともに」をつらぬき、「国民が主人公」の政治の実現へ、あらたな決意をともに誓いあい、大きな奮闘をただちに開始して、来年の都議会議員選挙、参議院選挙で必ず躍進をかちとりましょう。私もその先頭に立つ、その決意を申し上げて報告としたいと思います。ともにがんばりましょう。