2024年9月28日(土)
石破新総裁で自民党政治は…
行き詰まり変わらず
27日の自民党総裁選で石破茂元幹事長が新総裁に選ばれました。石破氏は「国民を信じ、勇気と真心を持って真実を語り、日本をもう一度みんなが笑顔で暮らせる安全で安心な国にする」などと表明。しかし、政治モラルの崩壊、大企業本位の経済政策、日米同盟絶対の戦争する国づくりという行き詰まった自民党政治を打開する方策は、これまで何一つ示していません。看板の付け替えだけでは、自民党政治のゆがみを変えられません。政治の抜本的転換を訴える日本共産党との違いは鮮明です。
くらし・経済
生活守る具体策なし
「岸田政権の取り組んできたことを引き継ぎ、実現が早まるべく努力したい」―。新総裁に選ばれた石破氏は、岸田政権の経済政策を継承する立場を明確にしています。
岸田政権が掲げてきた、物価上昇を上回る賃上げと設備投資の後押しで「成長と分配の好循環」を成し遂げるなどと主張。「失われた30年」といわれる長期の経済停滞をもたらしてきた、自民党政治を続けようとしています。
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法政大学の五十嵐仁名誉教授は、これまでの自民党の経済政策に対する反省がないことが「決定的な問題だ」と指摘し「アベノミクスからどう抜け出し、今の物価高を引き起こした異次元の金融緩和やコストカット型経済の問題をどう解決するのか。何も展望が示されていない」と強調。「『国民を守る』と強調しながら、『国民の生活を守る』とは言わず、軍事的安全保障に偏り、生活を守る点での具体策が欠けている。経済無策の継承だ」と批判します。
一方で、石破氏は、総裁選の中で年間所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の打破を巡り、金融所得課税を「実行したい」と主張したことも。しかし、党内からの批判が相次ぐと、翌日には「金融所得全てに課税強化するという考え方には反対だ」と発言を修正。すぐに腰砕けとなりました。
岸田首相も就任当初、「新自由主義からの転換」「新しい資本主義」を打ち出し、「金融所得課税の見直し」を公約しましたが、財界・大企業からの反発を受け、取り下げた経緯があります。大企業・財界の利益最優先の自民党政治では、行き詰まった経済政策を転換することができない姿があらわになっています。
消費税増税に賛成してきた石破氏は、総裁選の中でも「引き下げは今考えていない」と主張。将来的な増税についても「党税調で議論する」と否定していません。原発については、利活用を掲げ「リプレース(建て替え)や小型の原発の可能性も追求していかなければならない」「原発のウエートを下げること自体が目的ではない」と原発活用を進める立場を示しています。
日本経済を立て直すには、大企業・財界の利益最優先の政治を根本から転換することが必要です。日本共産党は、暮らし応援に徹して経済を立て直す「経済再生プラン」とともに、賃上げと一体に、労働時間を1日7時間週35時間への短縮を推し進める「自由時間拡大推進法」を提唱。働く人が人間らしい生活を営む「収入」とともに、「自由な時間」を持つことができる社会を訴えています。
外交・安保・沖縄
「辺野古」容認を強要
「日米同盟を新たな高みに引き上げた」―。岸田文雄首相が事実上の退陣表明を行った8月14日、バイデン米大統領は同日発表した声明で、引き続き日米同盟を深化させていく考えを強調しました。
安倍政権下の2014年に集団的自衛権の行使容認の閣議決定、翌15年の安保法制=戦争法の強行によって大転換が始まった日本の安全保障政策。岸田政権では5年間で43兆円という異次元の大軍拡を推進するとともに、米軍と自衛隊の指揮統制の枠組み強化にまで踏み込みんでいます。
「戦争国家」への道を突き進む自民党政治を石破茂新総裁も継承し、日米軍事一体化の大軍拡路線のさらなる強化を狙っていることは、これまでの言動からも明らかです。
石破氏は、総裁選で日米地位協定の見直しや「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の必要性を主張。日米同盟にとどまらず、多国間による異次元の軍事同盟強化を掲げています。
核兵器を「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」とする非核三原則の「持ち込ませず」の見直しを強調。米国の核兵器を日本で運用する「核共有」について検討に前向きな姿勢を見せるなどタカ派色の強い姿勢が浮き彫りになっています。
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石破氏は13年、普天間基地の「辺野古移設」を巡り、「県外移設」を公約としていた自民党の沖縄選出国会議員に容認を強要し、「平成の琉球処分」と批判されました。沖縄国際大学の前泊博盛教授は「彼は辺野古移設に反対した国会議員たちを脅して、民意をねじ曲げた前科がある。そうした人物が総裁になることに沖縄の人にとっては、また新たな『琉球処分』を食らうのではないかと不安が広がっている」と話します。
さらに、「台湾有事が日本有事となった場合にどうするのかを私たちは考えておかなければならない」と「中国脅威論」を口実にした軍拡路線を強調してきた人物が新総裁となることに、前泊氏は「石破氏イコール軍事オタクの印象は国際的にも非常に強い。日本が軍事に力を入れているという誤ったメッセージになりかねない」と懸念を示します。
憲法の平和原則を覆し、「戦争する国」への暴走が止まらない自民党政治からの脱却は、誰が新総裁になっても期待できません。真の「平和国家」に転換していくためには、「東アジアの平和構築への提言」など平和外交の対案を持つ日本共産党の躍進しかありません。
裏金・統一協会
崩壊する政治モラル
国民の怒りの集中点は自民党の政治モラルの崩壊です。そもそも岸田首相が政権を投げ出し、総裁選不出馬に追い込まれた最大の原因は、自民党派閥の裏金事件や統一協会との癒着を巡って「国民の不信を招いた」ことへの責任です。
ところが、総裁選の最中にも、統一協会との癒着では2013年の参院選を前に安倍晋三首相(当時)が協会会長らと面談していたことが発覚。裏金問題では堀井学前衆院議員が略式起訴され、さらに麻生派での裏金づくりも新たに明らかになりました。
新総裁の石破氏は、統一協会との癒着の再調査について消極姿勢を取り続けています。石破氏の推薦人には協会や関連団体との接点があった議員が4人。石破氏自身も過去に関連団体の定例会で講演したり、協会系の日刊紙の元社長から10万円の献金を受けたことを明らかにしています。
裏金事件については「報告書の訂正で人々は納得しない。ならば、公認権者である総裁がきちんと確認し、説明する」と述べるだけで再調査は明言していません。裏金議員の選挙での公認を巡っては、当初「非公認」の考えを示唆していましたが、その後、「新体制になってからどうするのか決める」と事実上発言を取り下げる始末。裏金の原資となった企業・団体献金の禁止にも背を向けています。
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裏金問題を告発してきた神戸学院大学の上脇博之教授は「そもそも自民党は調査期間を『5年』に限定するなど本気で全容解明する気がない。ここまで再調査を拒否するのは自分たちにとって不都合なものは終わったことにしようとしている」と指摘します。
さらに上脇氏は「石破氏は過去に党幹事長を務め、政策活動費を億単位で受け取っている。そういう意味では石破氏もどっぷり金権体質に漬かっている。裏金議員と本質は同じだ」と強調しました。
腐敗政治のおおもとにある企業・団体献金の全面禁止、政治を堕落させる政党助成金は全面廃止―この本物の政治改革を掲げ続けてきた政党は日本共産党だけです。腐敗政治を一掃し、政治に信頼を取り戻す、日本共産党の躍進はそのための“特効薬”です。
9条改憲
自衛隊を「国防軍」に
石破氏は自民党きっての改憲タカ派です。総裁選では各候補が憲法9条への自衛隊明記で「早期の改憲発議」「国民投票の実施」を主張。石破氏も「在任中の改憲」を明言するなど改憲の“強い意志”をむき出しにしています。
石破氏はこれまで、自著でも「国の自衛権を体現する実力組織は国際的に『軍』です」と述べ、戦力不保持と交戦権を否認した憲法9条2項を削除し、自衛隊を「国防軍」にせよと主張してきました。
一方、今回の総裁選では持論を封印。自民党・憲法改正実現本部の会合で改憲に向けた「論点整理」が決まったことを踏まえ、「議論を振り出しからしてもしょうがない」と、自衛隊明記論で足並みをそろえました。
今回の総裁選は岸田首相が改憲について「新総裁にも引き継ぐ申し送りをし、さらなる議論につなげていく」と述べたことから、石破氏をはじめ各候補が呼応し、「早期改憲発議」の大合唱となりました。一方で直近の世論調査(「朝日」14、15両日実施)では、新総裁・次の首相のもとでの改憲について「急ぐ必要はない」との回答が55%、自民党支持層でも52%で過半数に上っています。
法政大学の五十嵐仁名誉教授は「石破氏は9条への自衛隊明記にすら異論を持っていた人物だ。明文改憲への意欲は強く9条を巡る攻防はさらに激化するだろう。危険なリーダーが登場したと思う」と語りました。