2024年7月18日(木)
主張
統一協会最高裁判決
高額献金強要の違法性を提起
統一協会(世界平和統一家庭連合)への高額献金をめぐり、元信者の女性の遺族が協会側に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が11日、最高裁第1小法廷で行われました。判決は、元信者が協会側に▽返還請求をしないこと▽損害賠償を求める訴訟を起こさないこと―などを記した「念書」について「公序良俗に反し、無効」と断じました。
そのうえで、原告が敗訴した二審判決を破棄して東京高裁に差し戻し、統一協会による献金勧誘行為の違法性について審理を尽くすよう求めました。高額献金強要の違法性と協会側の責任を問う重要な判断です。
■不安をあおり勧誘
元信者の女性は2004年から長野県内の協会関連施設に通い始めました。統一協会は、親族の病気や自殺、離婚などは怨恨(えんこん)を持つ霊によって引き起こされたという教理で女性の不安をあおり、霊の影響から脱して幸せに暮らすためと称して、くり返し献金を勧誘しました。
その結果、09年までに十数回にわたり合計1億円余を献金させました。また08年以降、土地を合計3回、7268万円で売却させ、うち480万円を献金させました。さらに、残りのお金を協会に預託させ、その中から15年までに2066万円を献金させました。
1億円を超える高額献金の事実を女性が親族に語ったことを知った協会側は15年11月、返金を求められることを懸念し、女性に返還請求や損害賠償請求を一切行わないと約束する「念書」を書かせました。さらに、女性が返金手続きをする意思はないと語るビデオまで撮影していました。
女性は「念書」を書いた時には86歳で、半年後にアルツハイマー型認知症と診断されました。また、韓国での「先祖解怨(かいおん)」儀式に何度も参加し協会の「心理的な影響の下」にありました。そこで判決は、「念書」が「合理的に判断することが困難な状態にあることを利用して…(女性に)一方的に大きな不利益を与えるもの」と認定したのです。
統一協会は長年、信者に高額の壺(つぼ)や印鑑などを買わせる「霊感商法」を主な資金源としてきました。しかし、09年に協会傘下の印鑑販売会社「新世」が摘発され、2度にわたり「コンプライアンス宣言」を出さざるを得なくなりました。
表立って「霊感商法」をやりづらくなった統一協会は、信者に高額献金を強要する方向を強めました。消費者契約法などの網にかかりにくいからです。そして返金リスクを避ける目的で信者に「念書」を書かせる手法を広げました。今回の判決は「念書」で献金強要の責任追及を逃れようとする統一協会の悪質な手口を封じる意義をもちます。
■被害者救済を急げ
最高裁判決は、統一協会の反社会的本質を改めて浮き彫りにしました。これまで統一協会の不法行為を見過ごしてきた行政や司法の姿勢が問われます。何より統一協会と長年癒着してきた自民党の責任を厳しく指摘しなくてはなりません。
統一協会の違法な活動の全容解明と、さらなる対策強化が急がれます。被害者救済は待ったなしです。政府が東京地裁に請求した教団の解散命令の発令も速やかに行われるべきです。