2024年7月12日(金)
“返金求めぬ”念書は無効
統一協会勝訴の二審破棄
最高裁初判断
統一協会(世界平和統一家庭連合)の信者だった女性(2021年に死去)の高額献金被害で、長女の中野容子さん(仮名)が協会側に6580万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が11日、最高裁第1小法廷でありました。同協会の献金問題で最高裁が判断を示すのは初めて。堺徹裁判長は、統一協会の不法行為による献金だとした中野さん側の主張を大筋で認め、協会側が勝訴した二審判決を破棄して審理を東京高裁に差し戻しました。(関連記事)
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中野さんの母親は生前、夫の資産を使い込み、果樹園を売るなどして統一協会に1億円を超える献金をさせられました。判決は、高裁が違法性に関する審理を尽くさなかったと指摘。協会側に返金請求をしないこと、損害賠償を求める訴訟を起こさないことを記した「念書」について「公序良俗に反し無効」としました。
念書は15年11月に作成され、協会の婦人部長が母親に“返金請求をしない意思”を確認するビデオ撮影もしていました。
二審の判断を「是認できない」とした理由について判決は、信者の主導で念書が作成されたのは母親が86歳のときで、約半年後にはアルツハイマー型の認知症と診断されたことに触れました。
また、母親が「1億円を超える多額の献金」や6年間で13回も韓国に渡って先祖解怨(かいおん)の儀式等に参加するなど、統一協会の「心理的な影響のもとにあった」とし、献金を求められた際に「冷静に判断することが困難な状態にあったというべきだ」と判断。念書の作成も「合理的に判断することが困難な状態にあることを利用し、一方的に大きな不利益を与えるものだった」としました。
自身の土地を売って献金を行うのは「異例」で、金額も「将来にわたる生活の維持に無視しがたい影響を及ぼす程度のものだった」と断定。本人と配偶者の資産や生活状況を含め、多角的な観点での慎重な検討を求めました。
中野さんは判決後の記者会見で、念書は無効だと認めた点を評価して「やっとまっとうな判決が出た」と語りました。