2023年10月14日(土)
主張
統一協会解散請求
被害救済と癒着解明を進めよ
文部科学省が統一協会の解散命令を東京地裁に請求し、受理されました。同省は、統一協会の業務や活動について宗教法人法が解散命令の要件と定める「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当すると判断しました。統一協会による被害の拡大を防ぎ、違法・不法な活動を社会から一掃するための重要な一歩です。被害者の救済も加速させる必要があります。なにより、被害を深刻化させる大きな要因となった自民党を中心とする政治家との癒着を徹底解明することが重要になっています。
長期間の組織性と悪質性
文科省は請求の理由で、統一協会が遅くとも1980年ごろから長期間にわたり継続的に財産的利得を目的に献金獲得や物品販売を行ったことを挙げました。「正常な判断が妨げられる状態で献金または物品の購入をさせて、多数の者に多額の財産的損害、精神的犠牲を余儀なくさせ、その親族を含む多数の者の生活の平穏を害する行為をした」と認定しました。
被害規模は統一協会に損害賠償責任を認めた民事判決が32件あり、示談を含めると被害者は約1550人、解決金の総額は約204億円に上ります。被害は「相当甚大」と文科省は指摘しました。
文科省所管の文化庁は、全国霊感商法対策弁護士連絡会や170人超の被害者らから情報収集などの調査を行ってきました。解散命令請求に至った力は、元信者2世をはじめとする被害者らの勇気ある告発、弁護士、支援者らの長年の運動、国民世論です。
岸田文雄政権は当初、民法上の不法行為は解散命令請求の要件にならないとしていました。野党が国会で追及する中で、組織性・悪質性・継続性が確認できれば民法上の不法行為も要件に含むとの政府解釈が示されたことが、今回の解散命令請求につながりました。
裁判所の審理を経て解散命令が確定すれば、統一協会は法人格を失い、税制上の優遇が受けられなくなります。被害者らは解散命令が速やかに出されることを切実に願っています。統一協会は裁判で争うとしていますが、到底許されません。全被害者に向き合い、謝罪と賠償に応じるべきです。
統一協会の財産を保全する措置が急がれます。解散命令が確定するまでに統一協会が財産を隠したり、韓国に送ったりすれば、被害者の救済にあてられません。被害者や弁護団は、統一協会の財産を管理・保全する特別措置法の制定を求めています。法整備を含め、統一協会の財産保全を行うことは政府の責任です。
幕引きの動き許されない
解散命令請求を受け、自民党内から「幕引きに向けた大きな動きだ」(「読売」13日付)などの声が上がっていることは重大です。長年にわたる被害を拡大させたのは、自民党の有力政治家が統一協会と強く結び付き、「広告塔」の役割を果たしてきたからです。
岸田政権はそのことに反省がありません。癒着の中心にいたとされる安倍晋三元首相、細田博之衆院議長らの調査は拒否したままです。9月の内閣改造・役員人事では統一協会との接点のある議員を相次ぎ登用しました。解明を求める世論に背を向け続ける姿勢を直ちに改めなければ、国民の信用も信頼も失うばかりです。