2023年7月8日(土)
主張
安倍氏銃撃1年
「深い闇」の解明は終わらない
安倍晋三元首相が参院選の遊説中に奈良市内で銃撃され、死去してから8日で1年です。街頭演説のさなかに政治家が銃で襲撃された事件は内外に衝撃を広げました。このような凶行はどのような理由があろうと、正当化できません。自由な言論活動を暴力で封殺することは民主主義を破壊する最も憎むべき犯罪です。暴力で言論を封じるいかなる行為も許さない社会をつくるために日本共産党は力を尽くします。
統一協会との深刻な癒着
安倍氏の銃撃事件は、統一協会と自民党との長年にわたる深刻な癒着の闇を浮き彫りにしました。
殺人罪などで起訴された山上徹也被告の母親は統一協会の信者で、多額寄付が原因で家庭は崩壊しました。安倍氏は2021年の統一協会関連団体の集会に「敬意を表します」と語るビデオメッセージを送っていました。山上被告は安倍氏と統一協会の関係を知り、犯行を計画したとされます。
統一協会は正体を隠して信者を集め、高額献金や霊感商法などの被害を引き起こしている反社会的カルト集団です。安倍氏ら多くの自民党政治家が統一協会と親密な関係を築き、「広告塔」になってお墨付きを与えたことが、被害拡大につながったことは明らかです。銃撃事件を機に、統一協会と政治の癒着の徹底的な解明と関係の断絶を求める世論が高まりました。
ところが岸田文雄政権は国民の声に背を向けました。自民党は統一協会との接点確認を議員任せにし、党が責任を持つ調査を拒みました。安倍氏は“故人で調査に限界がある”と対象外でした。19年に統一協会系の行事でスピーチした細田博之元幹事長については衆院議長として「党籍離脱中」を理由に点検を求めませんでした。
自民党と統一協会の半世紀に及ぶ関係の中心にいたのは、安倍氏や細田氏が会長を務めた派閥「清和会」です。統一協会と表裏一体の「国際勝共連合」を1960年代末に日本に引き入れ、活動を支えたのは安倍氏の祖父・岸信介元首相らです。
安倍氏については国政選挙で自民党候補者に統一協会の票を差配した疑いも浮上しています。世論の批判を浴びた細田議長は今年1月、議院運営委員会理事らとの質疑に応じ、自らの癒着を否定する一方、安倍氏については「大昔から関係が深い」と語りました。疑惑はますます深まります。
統一協会の名称変更が2015年の安倍政権下で文化庁に認められた経過も不明のままです。数々の疑念は払しょくされていないにもかかわらず、岸田政権が幕引きに動いていることは重大です。
被害の根絶と救済を急げ
統一協会系行事に頻繁に参加したことが問題になって経済再生担当相を辞任した山際大志郎氏を自民党は次の衆院選で公認するとしています。無反省を象徴しています。統一協会との癒着を政治から一掃することは日本の民主主義に関わる大問題です。曖昧にすることはできません。
昨年の臨時国会で不当寄付勧誘防止法が成立しましたが、深刻な被害に照らせば極めて不十分で、実効性ある救済制度の創設が急務です。統一協会の解散命令の手続きも足踏みしています。被害の根絶と救済に政治は今こそ真剣に取り組まなければなりません。