2023年1月14日(土)
自民と統一協会 癒着未解明
問われる岸田政権の“甘さ”
安倍氏殺害 容疑者起訴
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安倍晋三元首相に対する殺人罪で13日に起訴された山上徹也被告(42)。安倍氏が関係した統一協会(世界平和統一家庭連合)への深い恨みが事件の発端ではないかと推察されています。動機などの解明は今後の刑事裁判に委ねられます。ただ政府、国会が独自に解決すべき大きな課題があります。反社会的団体である統一協会と癒着した政党・政治家の責任追及や被害者の救済です。(統一協会取材班)
昨年7月の参院選挙で統一協会から、「賛同会員」として全面的な支援をうけた自民党の井上義行参院議員。同氏のインタビューが「朝日」ネットサイト(11日付)に掲載されると、信者2世ら被害者から怒りの声が湧き上がりました。
開き直る井上氏 信者2世の怒り
統一協会から選挙支援を受けたことを事件後にまずいと思わなかったのか、という問いに井上氏はこう答えました。「特に何も思いませんでした。選挙中に関わった教団側の人たちは皆優しかったです。必ず集合時間の30分前に集まり、まじめでもありました」
井上氏は第1次安倍政権で首相秘書官を務めた安倍氏の側近。統一協会からの支援も安倍氏の口利きがあったとされています。
信者2世の作家、冠木結心(かぶらぎ・けいこ)さんは、「反省しているとは到底思えません」として、こう批判します。「選挙支援をしてもらう団体が、どのような団体であるかを認識することなく、駒として信者を利用したことは悪質です」
山上被告は事件前に知人へ宛てた手紙で、信者の母親が1億円を超える高額献金をさせられたことで家庭が崩壊し、「私の一生を歪(ゆが)ませ続けた」とつづっていました。この体験に対しても井上氏は「40歳にもなって、親の財産のことで苦しむなんて、甘ったれるな」と言い放っています。
冠木さんは「本人がいくら努力したとしても、うまくいかないこともあります。政治家としての発言ならば、そういう人たちを救えなかった政治の在り方を反省すべきではないでしょうか」と言います。
きちんと調査し説明責任果たせ
井上氏が開き直れるのは、岸田文雄首相が統一協会と関係した議員に甘い態度をとっているからです。自民党は各議員に「自主点検」を求め、180人の議員が協会と何らかの関係があったことを公表しています。ただ議員名まで明らかにしたのは、「選挙支援を受けた」場合などに限定。このため協会と深い関係にあった議員が処分もされず放置されています。
統一協会のダミー団体「天宙平和連合」の集会にビデオメッセージを送った安倍元首相については、亡くなったことを理由に点検を回避。細田博之衆院議長は協会から選挙支援を受けていましたが、党籍を離脱していることを理由に「自主点検」の対象にすらなっていません。山際大志郎前経済再生担当相は申告していなかった協会との関係が次々に発覚して、閣僚辞任に追い込まれました。
統一協会の信者2世である鈴木みらいさん(仮名)は、安倍氏ら政治家が協会にメッセージを送ることで「信者は正しいことをやっていると協会への信頼を増す」と指摘します。「安倍氏をはじめ、統一協会との関係を隠している議員はきちんと調査し公表すべきです。山際氏については閣僚辞任後も説明責任を果たしておらず議員辞職が必要です」と強調します。
被害者救済も急務
統一協会被害者の救済も急務です。山上被告による安倍氏銃撃事件で、信者2世の苦しみが社会的に注目されました。
本紙の調べでは、統一協会の信者2世は約8万人いるとみられます。信者2世の苦難には、三つの特徴があります。(1)高額献金の強要で家計が困窮している(2)両親が協会活動にはまり込み虐待やネグレクト(育児放棄)が起きる(3)教義に基づき集団結婚を強要される―です。
昨年末に臨時国会で成立した不当な献金の強要を規制する法律(救済新法)は、対象を献金被害に限定しています。しかも親の高額献金について2世が返金請求できてもごく一部であるなど、被害回復には極めて不十分な内容です。
現在、信者2世たちは統一協会の解散を求めるとともに、協会を離れた被害者たちの経済的、精神的支援を求めています。また過度な献金で貯蓄がない高齢の両親の行く末に頭を悩ませています。
統一協会の信者2世で宗教2世問題ネットワーク副代表の山本サエコさん(仮名)は、こう指摘します。「現在の統一協会の姿勢を見る限り解散しかないと考えます。また被害救済のために新法をより実効性あるものにする必要があります。教義の強要や虐待で精神的なダメージを受けている2世も多く、宗教問題の知識があるカウンセラーの配置など適切な支援体制が求められています」