2022年12月14日(水)
主張
統一協会と自民党
癒着の闇 解明終わっていない
先週閉会した臨時国会では、重要課題となった統一協会問題をめぐって被害者救済法が成立しました。同法は、深刻な被害実態に照らせば極めて不十分です。直ちに見直し実効性ある救済制度をつくることが必要です。
同時に、絶対に曖昧にできないのは、統一協会と自民党の深い癒着の究明です。岸田文雄首相は、同協会との関係調査について議員任せの態度を改めず、解明を求める世論に背を向けました。被害拡大の背景に、長年にわたる両者の密接な関係があったことは明白です。癒着の闇を洗いざらい明らかにすることは政治の責任です。
調査に背を向けた首相
岸田首相は臨時国会冒頭の10月の所信表明演説で、統一協会との関係について「国民の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために、各般の取り組みを進める」と述べました。しかし、実際の首相の姿勢は、この言明とは正反対のものでした。
統一協会との関係については、自民党としても政府としても責任を持った徹底調査を拒みました。自民党は各国会議員に「自主点検」を求め、その集計結果を9月に公表しましたが、その後、報告していなかった接点が判明する自民党議員や閣僚らが相次ぎ、個人任せの点検では真相解明に程遠いことが浮き彫りになりました。
重大なのは、統一協会と最も深い関係にあった安倍晋三元首相について、故人だから限界があると調査対象から除外していることです。安倍氏は、2021年の統一協会関連団体の集会に、「敬意を表します」と語るビデオメッセージを送るなど、広告塔の役割を果たしてきました。参院選比例区で安倍氏が統一協会の組織票の差配をしていたという証言が、自民党国会議員経験者から出ています。
自民党と統一協会が半世紀以上もの深い関係を築いてきた中心にいたのは、安倍氏が会長だった自民党安倍派(清和会)の流れです。統一協会と一体の「国際勝共連合」を日本に引き入れたのは、安倍氏の祖父・岸信介元首相でした。
「毎日」11月7日付は統一協会創始者の文鮮明が1989年、安倍派を中心に国会議員との関係を強化するよう信者に語っていた発言録を報じました。安倍氏と統一協会の関係を徹底して調べることは、自民党が根深い癒着に対して真剣に反省しているかどうかの試金石です。安倍派元会長で関係の深さが指摘されている細田博之衆院議長の調査も不可欠です。
選挙の際に、統一協会側と「推薦確認書」を交わした自民党国会議員が少なくない問題も放置したままにはできません。
政権担当の資格問われる
行政がゆがめられた疑惑の調査もこれからです。文化庁が安倍政権下の2015年、従来の立場を変えて統一協会の名称変更を認めた経過は依然不明です。文化庁を担当した当時の下村博文文部科学相(安倍派所属)も説明責任を果たしていません。名称変更は被害を拡大させた契機にもなっているだけに、幕引きはできません。
統一協会との関係で批判を浴び辞任に追い込まれた山際大志郎前経済再生担当相に続き、秋葉賢也復興相も同協会側への資金支出で疑惑が浮上し進退が問われています。国民の信頼を失った首相に政権を担当する資格はありません。