2022年12月2日(金)
徹底追及 統一協会
被害者救済新法 「政府案では救われない」
家族被害に課題 2世憤り
政府は統一協会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案(救済新法)を1日、閣議決定しました。統一協会の信者2世たちからは「政府案では救われない」と、実効性がある法律にするよう求める声が上がっています。(統一協会取材班)
政府案は、▽自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状態に陥らないようにする▽寄付者や配偶者、親族の生活の維持を困難にしないようにする―などを「配慮義務」としています。
禁止にして
「配慮ではなく、『禁止』にしてほしい」。両親が統一協会信者の鈴木みらいさん(仮名)は、そう要望します。
両親は統一協会に約1・6億円も献金しました。鈴木さんは両親にかわって返金交渉を繰り返したものの、協会側は「本人の自由意思で献金した」「本人でないと返金交渉はできない」と言うばかりでらちがあきません。
鈴木さんは両親に返金を求めるよう説得し、やっと3000万円が戻されました。「ただ、そのお金をまた献金するのではないか」と懸念します。
統一協会は、世界中の人と財物はすべてサタンが支配しており、それを神の側(開祖文鮮明、韓鶴子夫妻)に取り返すことが世界平和につながると信者をマインドコントロール(洗脳)します。「返金は親からすれば、せっかく神にささげたお金をサタンに戻すことに見えるのです。マインドコントロールによる献金を禁止すべきです」と鈴木さんは強調します。
範囲が限定
大きな問題になっているのが、信者2世ら家族被害の救済です。政府案では子どもや配偶者がうけた被害について、取り戻せる範囲が養育費などに限られ、金額も少なすぎるなどの課題があります。
同じく両親が信者だった山本サエコさん(仮名)は「政府案では2世が救済されない」と憤ります。祖父母が自身に残してくれた進学費用を両親は統一協会に献金したといいます。
両親は統一協会の職員でしたが、突然解雇されました。「退職金をもらえず、失業手当も受け取れませんでした」と山本さん。進学で借りた奨学金は、家族の生活費に回しました。「私が親を扶養していました。政府案だと私が統一協会へ返金請求できる金額はごくわずか。この先、高齢でお金がない親の世話は協会がすべきです」
政府は法案を国会に提出し、10日までの会期内に成立させたい意向です。鈴木さんはこう批判します。「政府は法案成立を急ぎすぎています。被害者救済のためではなく、法律を作ったことで被害者を封じ込め、黙らせようとしているのでは。憤りしかない」