2022年9月21日(水)
自民・統一協会が全面推進 各地で家庭教育支援条例
保護者に圧力 全戸訪問も
自民党と統一協会の深い癒着に関心が集まる中、両者が全面的に推進してきた家庭教育支援条例が改めて注目されています。北海道旭川市では、同条例制定の推進団体で、統一協会の信者や市長、自民党の国会・地方議員などでつくる「家庭教育を支援する会」が、今月突然解散しました。実際に条例ができたところではどんなことが起きているのか、聞きました。(染矢ゆう子)
自治体名 | 公布年 | 提案者 |
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都道府県 | ||
熊本県 | 2012年 | 議員 |
鹿児島県 | 2013年 | 議員 |
静岡県 | 2014年 | 議員 |
岐阜県 | 2014年 | 議員 |
徳島県 | 2016年 | 議員 |
宮崎県 | 2016年 | 議員 |
群馬県 | 2016年 | 議員 |
茨城県 | 2016年 | 議員 |
福井県 | 2020年 | 議員 |
岡山県 | 2022年 | 議員 |
市町村 | ||
石川県加賀市 | 2015年 | 市長 |
長野県千曲市 | 2015年 | 議員 |
和歌山市 | 2016年 | 市長 |
鹿児島県南九州市 | 2016年 | 市長 |
愛知県豊橋市 | 2017年 | 議員 |
埼玉県志木市 | 2018年 | 市長 |
同条例は全国10県6市で制定されています。統一協会と一体の反共謀略団体「国際勝共連合」の幹部である青津和代氏が、全国地方議員研修会を開くなどして、全国展開を図ってきました。
「愛情による絆で結ばれた家族」といった、個人の内面に触れた文言が多いことが特徴です。親が子どもに生活習慣や自立心などを教えれば、虐待やいじめなど子どもをめぐる問題は解決すると、学校や地域で保護者に圧力をかけるものです。
青津氏は各地の講演で、同条例によって家庭教育支援員による全戸訪問ができると強調しています。国も、入学前に全戸訪問をした町を表彰するなどして推進しています。
2014年に、自民党議員による議員立法で条例が制定された岐阜県。毎月第3日曜日が「家庭の日」とされています。
小学生の長男(10)と高校生の長女と3人で暮らす大垣市在住の女性。「ストレスの種は、『家庭の日』をテーマにした『わが家のふれあいアルバム』作成という学校の宿題」だといいます。優秀作品は表彰されます。
“家族の絆”言うだけメールに怒り
「本当に切実なこと周知に力を」「親が安心して休める社会こそ」
岐阜県大垣市の女性の小学生の長男は「意味がわからない」と「わが家のふれあいアルバム」を書くのを嫌がります。「昨年度は毎月提出しないといけなかったので、嫌がる長男に『やりなさい』と言い続けることがストレスでした」と女性。
今年度は毎月の提出はなくなり、長男は1回も書いていません。しかし、年度末には提出が求められます。「毎月、特別なイベントができるとも限らないし、家でゴロゴロしていたと書くわけにもいかない。親子の争いのもとだし、展示されていた優秀作品も保護者が作っているのではないかと思うようなものでした。必要ないと思います」
要望は応えず
同市教育委員会からは今月、「家庭の日」と8のつく「早く帰る日」に家族の絆を深めましょうとメール配信がありました。しかし、「本当に切実なことは周知してくれない」と女性。
3年前、新型コロナで学校が全国一斉休校となった際、仕事を早退し、賃金は半減しました。保護者の生活を保障する小学校休業等対応助成金を会社が使わなかったため、生活は困窮。会社を通さずに使える制度への改善を国に求めるとともに、一斉メールで保護者に対して制度を周知するよう県や市に要望してきました。しかし、いまだに実現していません。
「保護者が安心して働き、生活できる制度を整え、使えるようにすることに行政は力を尽くしてほしい」
意味ない情報
同県の他の自治体に住む女性には、小学生から中学生まで3人の子どもがいます。毎週金曜日には教育委員会から家庭教育に関わる情報が配信されます。内容は17年前に少年犯罪が増えていた、など2010年度の国の「家庭教育手帳」事業のものです。「古すぎて意味がない。“子どもがうまく育つかは親子関係が鍵を握っている”みたいな表現。いい親であれ、みたいな文章が多い」
小中学校は前期後期の2期制で、10月に1週間程度の秋休みがあります。学校から「この休みをいかに家庭内で有意義に使うかが大事。親は休みを積極的に取りましょう」という資料が配布されました。
「さまざまな働き方をしている親がいることをまったく想像していない。非正規で有休すらなかったり、休んだら暮らしが厳しくなるなど、さまざまな問題がある。親が安心して休めるような社会にしていくことが必要なのでは」と女性は話します。
聞こえはいいが“家庭介入”
大阪府で維新の会が主導する家庭教育支援条例案を白紙撤回させた大前治弁護士
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家庭教育支援とは聞こえがいいですが、実際は家庭への介入です。いったん制定されれば、予算がつき、研修会やメール、文書頒布などで国や自治体の方針に沿った指導が行われ、考え方や個人の自由がしばられる危険があります。
そのねらいは両性の平等をうたう憲法24条を否定し、男尊女卑や「産めよ増やせよ」など戦前回帰のような価値観の押し付けです。公教育の責任を放棄して家庭に責任を負わせ、忍耐と感謝を美徳として社会や政治への不満を抑える面もあります。
大阪では「発達障害は親の愛情不足」とする条例案の非科学的な文面に批判が集まりました。最近は、条例制定の理由として「虐待防止」といっていますが根は同じです。くたくたになるまで働かされる労働環境や女性に育児や家事が押し付けられている現状に目を向けず、親の心構えで解決するとしています。
保護者が早く帰宅するには、長時間労働の抑制や所得向上などの運動と要求実現が大切です。統一協会と自民党らがつくった条例を撤回させ、教育や保育の充実など家庭・子育て支援を行わせていきましょう。