2022年7月29日(金)
徹底追及 統一協会
人欺いた活動を後悔
元信者が本紙に証言
印鑑を40万円で売る 選挙で自民党を応援
安倍晋三元首相が銃撃された事件の山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で逮捕=は、旧統一協会(世界平和統一家庭連合)信者の母親が「多額の寄付をして破産させられた」と供述したとされます。旧統一協会の活動の実態はどうだったのか―。2000年代に脱会した元信者の大野光男さん(40代)=仮名=が本紙に証言しました。(統一協会取材班)
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「『無料で姓名判断をします』という誘い文句のハガキを送り、ヒスイの印鑑を40万円で売った。『霊界で苦しんでいる先祖を解放しなければ』と不安をあおると、信じてしまう人がいた」
正体隠し関係を
信者グループの中心的な存在だったという大野さん。旧統一協会の霊感商法にかかわっていました。
「1軒ずつ訪ねて『福祉のためになります』とでたらめを言い、100円のハンカチを5000円で売り歩いたこともある。そんなことを日常的にやっていた」と振り返ります。
大野さんは「うそをついて人を欺く反社会的活動だった。ものすごく後悔している」と今の胸中を打ち明けました。
入信のきっかけは、私立大学に通っていたとき、駅前で同世代の信者から話しかけられたことでした。数日間のセミナーで旧統一協会の開祖・文鮮明を「救世主」とする教義を脳内にたたき込まれ、その流れで献身(出家)させられました。
その後、大野さんは東京都内にある「ホーム」と呼ばれる旧統一協会の寮に入り、大学生ら30人ほどで共同生活を送るようになりました。
「ホームの隊長に預金通帳を取り上げられ、毎月1万円しか支給されなかった。そこから10%の会費を納めるので、9000円しか手元に残らない」。そうした状況で、大野さんたちは朝から晩まで「伝道」(信者の勧誘)に駆り出されました。
大野さんは「地方出身の大学生など、都会で孤独を感じやすい人に狙いを定め、正体を隠して友人関係をつくった」と明かします。
活動を続けるうちに、大野さんはこんな体験もしました。
「亡くなった父から相続した土地があることを身近な信者に知られ、群がるように献金を要求された。その土地を2000万円で売り、全額を旧統一協会に寄付させられた。お父様(文鮮明)にジェット機を買うためだと説得されて寄付したこともある」
信者は多額の寄付をすれば「次の代まで救われる」と言われ、走り回って寄付金を集めるとも。総額3000万円の寄付をした信者の「表彰」もあり、その金額を目標とする人もいたといいます。
カルトに票求め
旧統一協会は、反共主義を掲げ、自民党などの国会議員を支援してきました。
「選挙では自民党の候補者を応援するのが当たり前で、とにかく票を入れろと言われた。街頭演説会に動員されたこともある。宗教法人として認められた自分たちの活動をしやすくするため、政権与党を支援することが重要だと考えていたのではないか」
大野さんは強調します。「旧統一協会は社会常識に反した活動をするカルト団体。その実態を知らずに関連団体の行事に参加・賛同する政治家もいれば、選挙の票を求めて協会側と付き合う政治家もいる。そうした問題を追及することも必要だ」
略称は「統一協会」 旧統一協会は発足時「世界基督教統一神霊協会」という名称で、略称は「統一協会」となります。「しんぶん赤旗」はこの略称を一貫して使っています。キリスト教系の宗教であるかのように装っていましたが、全く無縁です。正体を隠してさまざまなダミー団体を使い、違法な伝道方法や霊感商法などが社会的批判を浴びたため、1997年ごろから名称変更を申請。文化庁は2015年、それまで認めてこなかった「世界平和統一家庭連合」への変更を認証しました。