2022年5月26日(木)
2022年度補正予算案
志位委員長の代表質問 衆院
田村副委員長の代表質問 参院
2022年度補正予算案に対して25日、日本共産党の志位和夫委員長が衆院本会議で、田村智子副委員長が参院本会議でそれぞれ行った代表質問は次の通りです。
志位委員長の代表質問
なぜ物価高騰か――「アベノミクス」の失政の責任を認め、金融政策の見直しを
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私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。
なぜいま物価が高騰しているのか。原因は「新型コロナ」と「ウクライナ侵略」だけではありません。「アベノミクス」の「異次元の金融緩和」が、異常円安と物価高騰を招いたことは、誰もが認めている事実です。総理、この重大な失政の責任を認め、金融政策を根本から見直すべきではありませんか。
新自由主義が、国民の生活苦の根本にあるという事実を認めるか
物価高騰で、どうしてこうも暮らしが苦しいのか。労働法制の規制緩和で非正規雇用が4割近くに増え、「賃金が上がらない国」になってしまっているからではありませんか。社会保障の連続削減で、この10年間で公的年金が実質6・7%も減らされているからではありませんか。
総理、弱肉強食の新自由主義が、日本経済を「冷たく弱い経済」にしてしまったことが、国民の生活苦の根本にあるという事実を、お認めになりますか。答弁を求めます。
消費税を緊急に5%に減税し、インボイスの中止を
物価高騰から暮らしを守るためには、小手先の対策でなく、新自由主義を終わらせて、「冷たく弱い経済」から「やさしく強い経済」への抜本的転換が必要です。具体的に5点、提案します。
第一は、消費税を緊急に5%に減税し、インボイスを中止することです。
政府の物価対策は、ガソリンなどごく一部です。しかし物価高騰は全般に及び、とくに食料品や水光熱費などの生活必需品の上昇率は、前年比4・8%にも達し、所得の少ない人は、打撃は深刻です。消費税減税こそ、物価高騰から暮らしを守るうえで、最も効果的な対策であることは明らかではありませんか。答弁を求めます。
円安のもと大企業の利益は過去最高です。富裕層も資産を大きく増やしています。大企業と富裕層に応分の負担を求め、消費税を減税することは、税の公正という観点からも、当然のことではありませんか。答弁を求めます。
「賃金が上がる国」に――大企業の内部留保課税で賃上げの促進を
第二は、「賃金が上がる国」にするために、政治が責任を果たすことです。
大企業の内部留保は、「アベノミクス」の8年で130兆円も増え、466兆円にも達しています。40兆円もの大企業減税が行われてきたことが、その一因となっています。
日本共産党は、「アベノミクス」で増えた内部留保に、毎年2%、5年間で10兆円の時限的課税を行うことを提案しています。これは、大企業への行き過ぎた減税の不公平をただす。適切な控除を設けることで「賃上げ」と「グリーン投資」を促進する。10兆円の税収を中小企業への支援にあてて最低賃金を時給1500円に引き上げる――という「一石三鳥」の効果があります。
大企業の利益や内部留保を賃上げや設備投資に還流させることの重要性は、総理も強調しています。ならば大企業の内部留保課税を実行し、政治の責任で賃上げを推進すべきではありませんか。
年金削減中止、大学学費を半分に、国の制度として義務教育の給食無償化を
第三は、社会保障と教育予算を経済力にふさわしく充実することです。
6月から年金の支給額がさらに減額されます。物価高騰時に年金を下げる。総理、あまりにも理不尽だと思いませんか。「持続可能にするため」と言いますが、現役世代の年金不信をひどくするだけではありませんか。年金削減を中止し、低すぎる年金の底上げをはかることを強く求めるものです。
大学の学費を半分にし、入学金制度を廃止し、給付奨学金を抜本的に拡充することを求めます。憲法26条は、義務教育の無償化をうたっていますが、給食費負担が重すぎます。国の制度として給食無償化を進めるべきではありませんか。
気候危機打開へ――100%国産の再生エネの大規模な普及を
第四は、気候危機打開の本気のとりくみです。
日本のエネルギー自給率は10%程度。先進国で最低水準です。原油価格高騰は、いつまでもエネルギーを外国に頼る危うさを示しているという認識はありますか。
日本共産党は、2030年までに、省エネルギーと一体に、再生可能エネルギーで電力の50%をまかない、二酸化炭素を最大60%削減する「2030戦略」を提案しています。100%国産の再生可能エネルギーの大規模な普及をはかるべきではありませんか。そのためにも原発即時ゼロ、石炭火力撤退の政治決断が必要ではありませんか。答弁を求めます。
農業再生は持続可能な社会のカギです。37%まで落ち込んだ食料自給率をさらに引き下げる水田活用交付金の削減は中止すべきであります。お答えください。
ジェンダー平等――男女の賃金格差をなくす責任を果たせ
第五は、ジェンダー平等の視点を貫くことです。
日本共産党は、生涯賃金で1億円にものぼる男女の賃金格差をなくすために、企業に格差公表を義務づけることを求めてきました。
総理が、男女の賃金格差の公表を義務づける方針を表明したことは一歩前進です。公表を徹底するとともに、企業に格差是正計画の作成を義務づけ、国がその実施を促す仕組みをつくることを強く求めます。いかがでしょうか。
補正予算案を撤回し、出し直しを求める
政府提出の補正予算案は、物価高騰から生活を守るうえで、あまりに不十分で、かつ、予備費の積み増しなど財政民主主義に反するものです。これを撤回し、わが党の提案を踏まえて出し直すことを強く求めて、質問を終わります。
田村副委員長の代表質問
ウクライナ侵略――「ロシアは国連憲章を守れ」の一点での共同を
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私は日本共産党を代表し、2022年度補正予算案について、岸田総理大臣に質問いたします。
ロシアによるウクライナ侵略戦争を一日も早く終わらせてほしい、日本と世界の人々の切実な願いとなっています。わが党は、「国連憲章違反を糾弾する」という一点で、国際社会の一致結束をよびかけてきました。
国連では140を超える国と地域、国家体制も宗教や文化も異なる国々が、ロシア非難決議に賛成しました。この「国連憲章守れ」の団結をさらに広げる外交こそ、最も求められているのではありませんか。それは、東アジアの平和と安定にも大きく寄与すると考えますが、総理の認識をお示しください。
バイデン米大統領は、「民主主義対専制主義のたたかい」と表明し、岸田総理は「価値観を共有するG7主導の秩序の回復」と繰り返しています。
英国のミリバンド元外相は、米CNNの討論番組で、ウクライナ問題は欧州の安全という枠を超えて、世界の秩序をどうするかの問題だと指摘し、「西側は民主対専制という構図をとるべきではない」と警告しています。また、シンガポールの元外務次官キショール・マブバニ氏も、ロシアの侵略反対では「非常に大きな国際的一致」があるのに、西側の構図を押しつけてしまえば途上国は「ついていけない」と批判しています。
総理は、これらの指摘をどう考えますか。日本政府が行うべきは、あれこれの「価値観」で世界を分断することではなく、中国を含むアジアの国々に「ロシアは国連憲章を守れ」という共同を広げることではありませんか。
戦争のない東アジアへ平和の枠組みを――「拡大抑止」「防衛費の相当な増額」では、平和の枠組みは構築できない
戦争の心配のない東アジアをどう実現するかが、問われています。
23日に発表された日米首脳共同声明では、日米同盟の強化として、米国の「拡大抑止」が強靱(きょうじん)なものであり続けることを確保する、としています。「拡大抑止」とは、日本の安全保障のためには米国の核使用を認めるということでしょうか。それは、広島・長崎の惨禍を再び引き起こすことではありませんか。また、「拡大抑止」は核軍拡を招くものであり、総理のいう「核兵器のない世界をめざす」ことと矛盾するのではありませんか。
共同声明では、岸田総理が「防衛費を相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領は、これを強く支持した」とあります。「相当な増額」とは一体、いくらの増額ですか。5年以内にGDP比2%以上の防衛予算という、自民党の提言を政府の方針とするのですか。その財源は、消費税増税ですか、社会保障予算の抑制・削減ですか、それとも国債発行で、安倍元首相が「政府の子会社」と称した日本銀行に引き受けさせるのですか。財源についてノーアイデアで、米国と約束するなどありえません。明確な答弁を求めます。
「核兵器には核兵器」「軍事には軍事」のエスカレーションでは、東アジアの平和を構築することはできません。ASEAN10カ国と、米国・中国・日本・韓国など8カ国は「東アジアサミット」という平和の枠組みをつくっています。この活用・強化を、わが党の志位和夫委員長がNHK日曜討論で提案し、総理は「平和の枠組みは重要」と応えました。では、東アジアに、分断・排除ではなく包摂的な「平和の枠組み」を構築するため、どのような外交努力をするのでしょうか、お答えください。
物価高騰への対策(1)――消費税5%に減税を
物価高騰への対策として、補正予算案がようやく提出されましたが、具体の施策は実質、ガソリン元売り価格の抑制だけです。食用油39%、生鮮食料品12%、電気代21%など、生活に不可欠な品目ほど値上げ幅が大きいのに、これで物価高への対策になるのでしょうか。
第一にやるべきは、消費税5%への減税とインボイス中止です。
消費税減税は、所得の少ない人ほど効果が大きく、中小企業・業者ほど税負担の軽減につながります。物価高騰への最も有効な政策ではありませんか。それを拒否するならば、生活必需品全般にわたる物価高騰に、どのような対策をとるのでしょうか。
くらしの危機の一方で、大企業は円安の恩恵などにより、軒並み史上最高益となっています。3月期決算では、連結純利益上位30社のうち22社が史上最高益、株主配当も大きく増加しています。読売新聞の世論調査では、政府が優先的に取り組むべき対策として「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」と答えた人は50%にのぼります。大企業・富裕層に応分の税負担、消費税は減税、これこそが国民が求める公正な税制のあり方ではありませんか。
物価高騰への対策(2)――本気の賃上げこそ
第二に、本気の賃上げを政治の責任で行うことです。
大企業の空前の利益によって、このままではまた内部留保が大きく積み増すことになります。わが党が提案した、内部留保課税は、アベノミクスで積み増した内部留保に年間2%で5年間課税し、中小企業の賃上げを直接支援するというものです。その際に、内部留保から人件費とグリーン投資にあてた分を控除することも提案しています。課税することで、内部留保積み増しではなく、利益を賃上げに回すというインセンティブにもなります。
総理は、466兆円にも達した大企業の内部留保について、どういう認識をお持ちですか。人件費やグリーン投資へと回す仕組みをつくることこそ、経済の好循環に寄与すると考えますが、いかがですか。
米国では、政権与党である民主党が、最低賃金時給15ドル、日本円で1950円へ、50%の引き上げ法案を検討、ドイツでは7月1日から14・8%の引き上げで12ユーロ(1620円)、イギリスは4月から6・6%の引き上げで9・5ポンド(1520円)の最低賃金を実施しています。物価高騰への対策として、日本でも最低賃金の大幅引き上げを決断すべきではありませんか。
物価高騰への対策(3)――家計を直接応援せよ
第三に、年金引き下げの中止、教育費負担の軽減などにより、家計を直接応援することです。
年金引き下げの根拠は、コロナ危機により現役世代の賃金が減少したことです。これが、物価高騰のさなかに来月から年金減額を行う理由になるのでしょうか。2019年の世論調査で、すでに公的年金制度が「信頼できない」は65%にのぼっていることを、総理はどう思われますか。
食材の高騰は、学校給食に影響を与えます。給食費無償の要求に、政府は地方創生臨時交付金を使えるといいますが、これは、1年限りの交付金です。憲法制定後の1951年、わが党議員の質問に政府は「教科書、学校用品、学校給食」などを無償とすることが理想と答弁しています。いまだ実現していないことが問題です。無償化に向けて、ただちに、給食費負担軽減を全国どこでも実施すべきではありませんか。
物価高騰への対策(4)――気候危機打開を産業と経済成長の大戦略に
第四に、気候危機打開を、日本の産業と経済成長の大戦略にすることです。
原油高によって、エネルギーの自給率が問われています。純国産エネルギーである再生可能エネルギーを2030年に50%、50年に100%の目標をもち、実現への戦略をただちに持つべきではありませんか。
1980年ごろまで、日本は、太陽光発電、風力発電とも世界のトップランナーでした。なぜその技術・製品開発が衰退したのか、政府はどのように分析していますか。石炭火力や原発にしがみつき、これ以上、再生可能エネルギーの普及で世界に後れをとることは、日本の経済・産業の発展に大きなマイナスとなることは明らかですが、総理にその認識はありますか。
物価高騰への対策(5)――ジェンダー平等を経済政策に貫け
第五に、ジェンダー平等の視点を経済政策に貫くことです。
わが党は、男女賃金格差の公表を企業に義務づけることを、国会質問で繰り返し要求し、政府は実施を表明しました。さらに一歩進めるために、格差是正の目標を政府がもち、企業に格差是正の計画策定とその実施を求めることが必要ではありませんか。
以上、総理の答弁を求め、質問を終わります。