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2022年4月1日(金)

英海運大手 800人解雇

労組「事前協議なく違法」

「解雇そして再雇用」全面禁止する法律必要

 【ベルリン=桑野白馬】英国の大手海運会社「P&Oフェリー」が、新型コロナウイルス感染拡大による経営不振を理由に、船員800人を一方的に即時解雇し、低賃金の外国人派遣労働者に置き換えたことに社会的批判が集まっています。労働組合は、労組との事前協議義務を無視した違法な解雇だと批判。英政府は、会社側に解雇の再考を求めるとともに、「法的措置を取る」(ジョンソン首相)と厳しい姿勢で臨んでいます。


 P&Oは、中東ドバイの港湾企業DPワールドの子会社で、英国、フランス、アイルランドや北欧を結ぶフェリーを運航しています。コロナ禍で旅客が激減し、2021年に1億ポンド(約160億円)の損失を出したことをリストラの理由にしています。

 同社の幹部は17日、録画した映像で800人に即時解雇を通告。再雇用の提案を別途メールで送るので検討してほしいなどと言い放ちました。同社のピーター・ヘブレスウェイト最高経営責任者(CEO)は24日、大量解雇にあたって義務づけられている労組との事前協議を行わなかったことで法律違反を犯したことを自ら認めました。

閣僚も「阻止」と

 この不当解雇に怒った海運労働者らは、国内のフェリー港で18日、ストを決行。以来、抗議行動が続いています。

 英国では4月から最低賃金が時給9・5ポンド(約1530円)に引き上げられる予定です。ところが、同社が派遣会社から受け入れた代替要員の最賃はわずか時給5・5ポンド。海外の船籍登録となっているフェリーが、英国の雇用法の適用外となることを見越した対応です。

 シャップス運輸相は28日、ヘブレスウェイトCEOに宛てた書簡で、英国の港で運航するすべてのフェリー会社に対し、最賃支払いを義務付ける新たな法律を導入すると表明。同社による最賃以下の労働者へ置き換える手法を「阻止するつもりだ」と警告しました。

 海事沿岸警備庁(MCA)は、新たに導入した乗組員で運航しようとした同社のフェリー2隻を乗組員の慣熟訓練が不十分だとして、拘束しました。

劣悪条件提示に

 鉄道海運運輸労組(RMT)は29日、「解雇された、正しく安全確保のできる経験豊富な従業員が復帰するまで、社の業務を全面的に停止する対応が必要だ」と表明しました。

 英労働組合会議(TUC)は、コロナ禍の業績不振を理由に従業員を一方的に解雇し、劣悪な条件で再雇用を提示する企業が後を絶たない、と非難。根底に、保守党政権が労働法制の雇用保護を骨抜きにしてきたことがあるとして、「解雇そして再雇用」のやり口を全面禁止する法律を制定すべきだと主張しています。


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