2022年3月16日(水)
主張
広島県議らの起訴
買収資金の出所徹底解明せよ
2019年の参院選広島選挙区での河井克行元法相・案里元参院議員による大型買収事件で、検察当局は被買収で広島県議と同市議ら9人を在宅起訴し、25人を略式起訴しました。検察は受領側100人全員をいったん不起訴にしましたが、検察審査会が「起訴相当」などと議決したため、再捜査してきました。略式起訴の県議と市議らは公職を辞すなどしています。一方、総額約2870万円にのぼる買収資金の出所は未解明です。自民党本部から提供された1億5000万円から支出された疑いが消えていません。岸田文雄首相は説明責任を果たすべきです。
選挙の公正破壊する犯罪
金で票を買う買収は、民主主義の根幹である選挙の公正を破壊する極めて悪質な犯罪行為です。公職選挙法では、金を渡した側も受け取った側も罪に問われます。買収した側の河井夫妻は有罪が確定しました。2人は国会議員を辞職しましたが、事件の経過や背景などをまともに説明していません。
金を受け取った地方議員らについて検察は昨年7月、不起訴にしました。被買収側を免罪した検察の不当処分に批判が広がり、市民の申し立てを受けた検察審査会は今年1月、「起訴相当」35人、「不起訴不当」46人とする議決書を公表しました。検察は今回、「起訴相当」のうち体調不良1人を除く34人の処分を決めました。在宅起訴の議員は違法性を否認しており、裁判が行われます。略式起訴は公判がありませんが、罰金刑以上が確定すれば公民権は停止されます。検察審が「不起訴不当」と議決した46人全員を再び不起訴にしたことなど問題を残しました。
買収資金の出所解明も必要です。元法相らは原資は「手持ち資金」などと主張します。しかし、具体的裏付けを示しません。元法相の公判では、党本部の資金が選挙運動員買収に使われたとする調書が明らかになりました。
元法相らが現金を渡す際、「安倍(晋三)さんから」などと首相や二階俊博・自民党幹事長の名前を出したと証言した地方議員もいます。案里氏を候補者に担ぎ出したのは、安倍首相や菅義偉官房長官ら官邸だと言われています。党本部からの1億5000万円の資金提供は、別の自民党候補者の10倍とされます。これほど巨額な資金は、安倍氏や二階氏らの意向がないと動かすことができないと指摘されています。
しかも8割にあたる1億2000万円は政党助成金です。国民の税金が買収の資金になっていたとすれば、言語道断です。安倍氏、菅氏、二階氏は経過を全て国民に説明する責任があります。
再調査を拒む首相の責任
岸田首相は昨年5月、広島県連会長時代に二階幹事長に、党として説明責任を果たすことを求めました。しかし、総裁選出馬後はトーンダウンし、首相に就任すると、元法相側の説明をうのみにして「説明は果たされた」と再調査を拒否しています。
自民党の国会議員が選挙の前に地方議員らに金を渡した疑惑は、京都府連でも浮上し、刑事告発されています。新潟県でも同党国会議員が選挙前に県議から裏金を要求されたと証言しました。国・地方ぐるみの金権選挙は自民党の体質ではないのか。疑惑にフタをすることは許されません。