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2022年2月22日(火)

主張

北京冬季五輪閉幕

厳しく問われた人権への姿勢

 北京冬季オリンピックが20日閉幕しました。開催国、中国政府による重大な人権侵害に世界から批判が集まった異例の大会でした。国際オリンピック委員会(IOC)は是正を働きかけるどころか、中国政府擁護に終始しました。スポーツを利用して権力に不都合な事実を覆い隠す「スポーツウオッシュ」という言葉もかつてなく聞かれました。ドーピングの根深さも浮き彫りになりました。

中国の抑圧不問のIOC

 「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」。五輪憲章が掲げる目標です。中国の現状がこの理念を踏みにじっていることは明らかです。新疆ウイグル自治区での民族抑圧、香港の民主化運動弾圧は重大な人権侵害です。中国は批判を拒否する一方、聖火リレーの最終走者にウイグル族の選手を起用して融和を演出しました。批判をかわすために選手を利用することは許されません。

 IOCは2020年3月に「人権戦略のための勧告」を公表し、中国の人権状況の深刻さに言及していますが、具体的な行動はとりませんでした。

 プロテニス選手、彭帥(ほう・すい)さんが張高麗前副首相からの性暴力を告発した問題でIOCは究明に動くどころかバッハ会長がテレビ電話や会食で彭さんの無事な様子を確認したと発表するなど、中国政府の隠蔽(いんぺい)に加担したとしか思えない対応でした。

 北京五輪組織委員会が、中国の法律や規則に反する選手の言動が処罰の対象になるとの方針を発表したことに対しても、IOCは口をつぐみました。

 人種差別や社会の不正に選手が抗議の意思を示すことは、人権を重視する五輪憲章に照らして当然の行為です。しかしIOCは意思表示の場を試合前に限定し、表彰式や選手村での行動を禁止しています。アスリートから解禁を求める声が上がっていることをIOCは受け止めるべきです。まして開催国が選手に圧力をかけることを不問に付してはなりません。

 ロシア・オリンピック委員会のフィギュアスケーター、ワリエワ選手のドーピング疑惑への対応も大きな問題となりました。違反が確定していないとはいえ、禁止薬物に陽性反応の出た選手の出場を、年齢の低さを理由に認めるというスポーツ仲裁裁判所の裁定に批判、疑問が出たのは当然です。

 ドーピングは競技の公平さを損ねるとともに、選手の心身を傷つける人権侵害です。ロシアは組織的ドーピング違反によって制裁を受け、違反歴がないなど条件を満たした選手が個人資格で出場を認められています。その中でまた違反が問題になったことは深刻です。根絶に向けた取り組みを徹底すべきIOCがロシアに毅然(きぜん)とした態度をとらないことが解決を遅らせる一因となっています。

憲章に立ち返ってこそ

 人権が軽視され、金もうけ第一の商業主義や国威発揚が横行することは五輪そのものへの不信を強めています。アスリートからも改善を求める声が上がっています。

 何のための誰のための五輪なのか―「人間の尊厳」をうたう五輪本来の理念に立ち返る必要があります。それを保障するため健全な五輪を求める選手、関係者の意思に基づいて運営を改善していくことが求められます。


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