2022年2月5日(土)
北京五輪開幕 人権こそ中心課題
スポーツ部長 和泉民郎
北京冬季五輪が4日、開幕しました。華やかで明るい演出の開会式。そこでは世界に見せたいものと、見せたくない暗部を浮かび上がらせた気がします。
見せたくないものは、この国の人権侵害・抑圧の現実です。
大会前、式典に政府代表派遣をやめる各国の動きがありました。新疆ウイグル自治区の抑圧政策や香港の民主化運動の弾圧、中国のプロテニス選手が前副首相から性暴力を受けたとの告発が厳しい批判を浴びたからです。
「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」。五輪憲章を引くまでもなく、人権侵害と五輪は両立できません。中国がこれに向き合わない姿は、開催国の資格すら問われます。
人としての根源的な権利が侵された場所が“人間賛歌”の舞台としてふさわしいのか。開催地を選べない選手にも不幸な事態です。
国際オリンピック委員会(IOC)が「政治的中立」を理由に中国に追随していることも問題です。
2020年3月、「IOCの人権戦略のための勧告」が公表されました。バッハIOC会長の求めで国連の人権部門にいた専門家がまとめたもので、北京大会への言及もあります。
「北京冬季五輪の大会に関する人権上の影響は深刻であり、対処は依然として難しい努力を要する」
しかし、IOCに努力の形跡はありません。この点で中国に何も改善を求めないばかりか、勧告の実施を北京後に“先送り”するありさまです。
勧告が浮き彫りにしたのは、人権問題はIOCが取り組むべき、猶予なき中心課題という点です。
これと真摯(しんし)に向き合うことで、商業主義のゆがみから選手を守り、スポーツ組織の健全な運営、五輪に人権を位置付けるなど、変革の梃子(てこ)となる中身が含まれています。勧告は訴えます。IOCには「『責任ある自治』が期待されており、それは国際的な人権基準を尊重することです」。
世界に広がる五輪への不信や懸念をどう払しょくするのか。北京を踏まえ、人権尊重の「責任ある自治」の姿を示し、実行する以外にありません。
本紙は、この立場から今大会を報じていきます。