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2022年2月2日(水)

主張

北京冬季五輪

開催国にふさわしく人権守れ

 北京冬季オリンピックが4日から20日まで開かれます。中国政府が行っている人権侵害は人間の尊厳を掲げるオリンピック憲章の根本原則と相いれません。国際的な批判が強まり、欧米諸国や日本などが式典に政府代表を派遣しない異例の大会となります。開催国にふさわしく、国際的な人権保障の取り決めと五輪憲章を守ることは中国が果たすべき責任です。

いかなる差別も許されぬ

 新疆ウイグル自治区でのウイグル族抑圧は国際社会で大問題になっています。国連人種差別撤廃委員会は2018年、最大100万人が刑事手続きなしに強制収容所に入れられている可能性を指摘し、中国政府に是正を勧告しました。収容体験者は拷問や民族、宗教に対する抑圧を証言しています。少数民族を差別、虐待することは、少数者の権利保護を定めた国際法の義務をふみにじるものです。

 香港では国家安全維持法の施行によって民主化運動への弾圧が急速に強まり、活動家の大量逮捕や民主化団体の解散が相次いでいます。中国が世界に公約した「一国二制度」をほごにする行為です。

 中国のプロテニス選手、彭帥(ほう・すい)氏が張高麗前副首相から性行為を強要されたと告発した後、消息不明になったことも深刻な人権侵害です。女子テニス協会(WTA)は中国でのすべての試合開催を停止して抗議しました。

 これらの人権侵害・抑圧は、中国政府が賛成してきた世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言など国際的な人権保障の取り決めに反しています。

 五輪憲章は「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」を五輪の目的に掲げています。また、憲章が定める権利と自由は「いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」と明記しています。

 この点で北京五輪組織委員会が1月19日、中国の法律や規則に反する選手の言動は処罰の対象となるとの方針を明らかにしたことは見過ごせません。アスリートが試合開始前に片ひざをつくなどして人種差別に抗議する行動が最近各国で広がっています。組織委の方針は、中国の法規による処罰に言及することで選手の正当な意思表示を萎縮させかねません。

 国際オリンピック委員会(IOC)はさまざまな条件を付けつつ選手が反差別の意思を表すことを限定的に容認しています。いかなる種類の差別も許さないことは五輪憲章に明記されています。人権擁護など憲章に基づく選手の表現の自由をIOCと中国当局は保障しなければなりません。

IOCの姿勢が問われる

 IOCが中国の数々の人権侵害に沈黙し、彭氏の告発に関しても実際上、中国政府を擁護し、隠蔽(いんぺい)に加担するに等しい行動をとっていることは五輪の意義を損なうものです。IOCは、五輪憲章をはじめ人権重視を定めた自らの原則に立ち戻り、開催国として憲章を順守し人権侵害を是正するよう中国政府に働きかけるべきです。

 日本政府は北京五輪の式典に政府代表を送らない対応にとどまらず、国際法にもとづく冷静な批判によって人権侵害の是正と五輪憲章の順守を中国に求める必要があります。


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