2022年1月9日(日)
カザフスタン 許されぬ人権無視の弾圧
カザフスタン政府は反政府デモへの対応を「対テロ作戦」と正当化しますが、治安当局によるデモ参加者への発砲や拘束は、国際人権ルールに反する重大な弾圧です。
燃料価格の統制を政府がやめ高騰した価格に人々が抗議し、さらに政治改革を求めて声を上げたことは、当然の権利です。デモ参加者の中に暴力的な人物がいたとしても、全員がテロリストであるはずもなく、治安当局には人々の平和的集会の権利を保護する義務を守りながらの対応が求められます。いわんや警告なしの発砲など認められません。
国連が採択した「法執行官による力および火器の使用に関する基本原則」は、治安部隊が武力行使をする前に「非暴力的な手段を用いる」こと、「十分な時間をかけて銃器使用の意図を明確に警告する」ことを強調しています。
殺害された26人や数千人の拘束者が本当に「外国で訓練されたテロリスト」なのか、無辜(むこ)の市民の犠牲はなかったのか。証拠も示さず一方的に決めつけての鎮圧に、国際的な懸念と批判が広がっています。
カザフスタン政府が旧ソ連6カ国でつくる軍事同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)に部隊派遣を要請したこと、応じたロシアなどが多数の兵士を送ったことも問題です。中国は、習近平主席がトカエフ大統領に「果敢な措置で、事態を迅速に鎮静させた」と支持を表明。新疆ウイグル自治区で「テロ対策」と正当化する抑圧を想起させる態度です。
カザフスタンは、ソ連崩壊の1991年に独立後、全方位的な外交をすすめ、核兵器禁止条約にも参加。国際人権規約も批准しています。カザフスタン政府は、自ら認めている国際人権ルールを順守し、人権無視の弾圧をただちにやめ、国民の批判や抗議には対話など平和的対応をとるべきです。
(田川実・党国際委員会事務局長)