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2022年1月6日(木)

被害者補償など3.6兆円

先住民差別の「児童福祉制度」めぐり

カナダ

 【ワシントン=島田峰隆】カナダ政府が1950年代から先住民に対して進めてきた児童福祉制度をめぐり、トルドー政権は4日、親から強制的に引き離されて里子に出された先住民の人々への補償と児童福祉制度の改革に総額で400億カナダドル(約3兆6000億円)を支払うことで先住民団体と原則合意したことを明らかにしました。


 先住民団体は2007年、児童福祉制度における先住民の子どもの扱いが差別的だとして、カナダの人権裁判所に提訴。同裁判所は16年、差別を認定し、政府に補償金の支払いを命じましたが、政府が異議申し立てを行っていました。

 ハイドゥー先住民サービス相は4日、「政府はあまりにも長い間、先住民の家族や子どもの健康に適切に資金を投じ、支援することをしてこなかった」と表明。「どんな額の補償も被害者のトラウマ(心の傷)を埋め合わせることはできない。しかしこの原則合意は、被害者とその家族が受けた差別による被害と痛みを認識するものだ」と述べました。

 現地からの報道によると、政府は被害者への補償として200億カナダドルを支払います。対象者は21万5000人を超えるとみられます。また元の家庭に戻る里子への支援を含めた児童福祉制度の改革に200億カナダドルを拠出します。

 先住民団体側の弁護士、デービッド・スターンズ氏は4日、「補償金がいくらかの慰めとなり、人生を再建するうえで助けになることを願う」と語りました。一方、先住民団体は「重要な最初の一歩だが、拘束力のない合意だ」と指摘。政府に対し拘束力のある合意を結び、迅速に補償するよう求めました。

 カナダ政府は先住民同化政策の一環として、19世紀前半から、先住民の子どもを親元から引き離して、寄宿学校に入れる制度を実施。これが20世紀半ばに縮小される中で、非先住民の家庭に里子に出す児童福祉制度を新たに実施してきました。

 その結果、子どもたちは家族とのつながりや文化的伝統を継承する機会を奪われました。里親による虐待や、18歳になった里子が支援もなく放り出される例もありました。

 カナダのメディアによると、先住民の子どもはカナダ全体の子どもの8%未満にすぎませんが、里子に出されている子どもの半分以上は先住民です。


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