2021年12月23日(木)
岸田政権の新たな危険浮き彫り 国民の切実な願い迫る
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第207臨時国会が21日に閉会しました。岸田文雄内閣の発足後、初めての本格的な論戦の場となった臨時国会で、日本共産党は、衆参の本会議、予算委員会などで国民の切実な願いを掲げて論陣を張り、岸田内閣の新しい危険を次々と暴きだしました。日本共産党の論戦を振り返ります。
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敵基地 攻撃能力
全面戦争に発展の恐れ
岸田首相は6日の所信表明演説で、歴代首相の所信表明で初めて「敵基地攻撃能力」保有の検討を明言し、軍事費は補正予算、本予算と合わせて6兆円超を計上しました。日本共産党は、戦争につながる新たな危険性が現れたと厳しく追及しました。
志位和夫委員長は9日の衆院本会議の代表質問で、「敵基地攻撃能力の保有」に関して、歴代政権が「憲法違反」としてきた解釈を変更するのかと追及。岸田首相は「憲法解釈の変更をするつもりはない」と述べながら、ミサイル技術の進化を理由に「敵基地攻撃能力の保有も含めあらゆる選択肢を排除せず、現実的に進めていく」と表明しました。
小池晃書記局長は17日の参院予算委員会で、「敵基地攻撃のオペレーション(作戦)はどのようなものか」と質問。岸信夫防衛相は、他国領域の制空権を一時的に確保した上でミサイル発射機を破壊するなどの攻撃を行うという一連のオペレーションだと説明し、岸田首相も「これらは一例だ」と認めました。
小池氏は、一発ミサイルを撃つ話ではなく相手領域まで乗り込み、ミサイル基地をしらみつぶしに攻撃する、まさに全面戦争に発展するものだと告発しました。その上で、敵基地攻撃能力の保有に踏み出せば歯止めなき軍拡競争、軍事対軍事の悪循環となり、危険な状況になっていくと批判。「軍拡で国民生活を支える予算も圧迫される」として「憲法の平和主義・立憲主義の破壊を断じて許さない」と主張しました。
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改憲策動
憲法の破壊を許さない
岸田政権の危険性は改憲策動でも現れました。岸田首相は所信表明演説で、「国会で積極的な議論が行われることを心から期待する」と改憲議論を呼びかけました。さらに14日の衆院予算委員会で、9条改憲をはじめとする自民党の「改憲4項目」を中心に改憲の議論を進めたいと述べました。
これに対して志位氏は「海外で戦争する国づくりへの暴走を許してはならない。安保法制に続く立憲主義の破壊、9条改憲をはじめとする自民党改憲4項目に断固として反対を貫く」と表明しました。立憲民主党の泉健太代表は8日の本会議で、改憲ありきの自民党の姿勢を批判し、「現行憲法に真剣に向き合っていただきたい」と迫りました。
一方、自民党の茂木敏充幹事長は、新型コロナ感染症の感染拡大の危機に乗じ「緊急事態への切迫感も高まっている」と述べ、改憲に前のめりの姿勢を示しました。日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「今国会は、憲法改正に向けた議論が軌道に乗るか否かの重大な試金石になる」とし、国民投票の日程や改憲スケジュールの設定を岸田首相に迫るなど、改憲論議をあおり加速させる姿勢を示しました。
このもとで、市民の9条改憲阻止に向けた新たなたたかいが始まっています。日本共産党国会議員団は7日、改憲問題対策法律家6団体連絡会と懇談。穀田恵二国対委員長は、「草の根からの運動が重要だ」と呼びかけ、ともに運動を広げていくことを確認しました。いま、「憲法改悪を許さない全国署名」の取り組みが広がりつつあります。
新しい資本主義
新自由主義転換求める
自民党総裁選で「新自由主義からの転換」を表明し、「新しい資本主義」を掲げた岸田首相。しかし、新自由主義路線からの転換、格差と貧困の是正を求める日本共産党の論戦で、「新しい資本主義」が新自由主義路線の継続・強化であることが浮き彫りになりました。
志位氏は、補正予算に半導体製造大手の台湾企業に4000億円もの補助金がつぎ込まれ、過去最大の軍事費7738億円が計上され当初予算とあわせて初めて6兆円を超えていることを告発。「大企業と軍事費への異常な大盤振る舞いをやめ、コロナで苦しむ国民の暮らしにあてるべきだ」として、富裕層・大企業に応分の負担を求め、消費税を5%に減税するよう要求しました。しかし、岸田首相は冷たく背を向けました。
田村智子副委員長は10日の参院本会議で、岸田政権が言う新自由主義的な政策とは何かと追及。小泉改革以降、労働法制の緩和が非正規雇用を増やし、年収200万円に満たないワーキングプアを生みだしたことなどをあげ、「この規制緩和路線を転換するのか」と迫りました。岸田首相は、規制緩和に触れず、無反省な姿勢を示しました。
小池氏は、欧米ではコロナでも最低賃金の水準が引き上げられていることを参考に直ちに時給1000円を実現し、1500円を目標に中小企業支援を行うように要求。さらに地域別最賃制度は世界で4カ国しかないとして、全国一律最賃の実現を迫りました。
岸田首相はいずれも言い訳を重ねて、明確に答えませんでした。
コロナ対策
病床削減の撤回を主張
新型コロナウイルス対策に逆行する政府の姿勢が、日本共産党国会議員団の論戦で浮き彫りとなりました。
欧州を中心に急拡大するオミクロン株への懸念が高まるなか、医療体制の確立は待ったなしです。志位氏は、政府が第6波に向けた病床確保を求めながら、「地域医療構想」の名のもと436の公立・公的病院の統廃合を含む再編、20万床もの急性期病床の削減を進めようとする矛盾した政策を改めるよう要求しました。
小池氏は、岸田首相が「病床削減・統廃合ありきではない」と繰り返すのに対して、「統廃合ありきではないなら数値目標を撤回するべきだ」と主張。「医療提供体制に余裕がないと感染症有事には備えられないというのは医療界の一致した意見だ」として、計画撤回を求めました。
給付金でも、国民の暮らしと営業を守るには程遠い実態をあらわにしました。志位氏は、政府案の個人向け現金給付案は住民税非課税世帯に限定され、東京23区の単身世帯の場合、年収200万円以下の人でさえ対象外だと指摘。岸田首相が「コロナでお困りの方々への給付金」とうたった公約との矛盾を鮮明にし、現金給付案の抜本的な見直しを要求しました。
志位氏は、事業者向けの事業復活支援金は持続化給付金の半分にすぎず、1~10月は対象外だとして、「事業復活支援金を少なくとも2倍にし、家賃支援給付金を再支給し、国民への公約を果たすべきだ」と迫りました。
田村氏は、生活保護世帯への給付金が収入認定から除外されることを認めさせました。
ジェンダー平等
実現を あらゆる課題で
選択的夫婦別姓の実現、性暴力の根絶、男女賃金格差の是正―。日本共産党はさまざまな課題で「ジェンダー平等の実現」を求めました。岸田首相はどの課題でも後ろ向きな姿勢を示しました。
志位委員長と小池書記局長は、選択的夫婦別姓の実現を求めました。
志位氏は、夫婦別姓反対は自民党衆院議員の28%(候補者アンケート)にすぎないとして「たったの28%のために先送りしていいのか」とただしました。
小池氏は、地方議会からの意見書が307件に達していることや、政府が力をいれる「通称使用」拡大の問題を指摘。岸田首相が自民党の夫婦別姓を早期に実現する議員連盟の呼びかけ人だったことを示し、「早期実現を呼びかけた責任を果たすべき」だと求めました。岸田首相は「国民みんな理解しているか確信が持てない」と答弁。小池氏は、世論調査では6割以上の国民が賛成だとして、国会で早く結論を出すよう迫りました。
「性暴力をなくし、互いの性を尊重する人間関係を築くために、科学的・包括的な性教育が必要だ」―。静まった参院本会議に響いたのは田村智子副委員長の声。性交や避妊に関する科学的情報を教える重要さを指摘するユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に学び、公教育での性教育の実践を求めました。
岸田首相はユネスコのガイダンスは承知していると述べながら「学習指導要領に基づき指導する」と包括的な性教育には背を向けました。
山添拓議員は20日の参院予算委員会で、生涯で1億円にも上る男女賃金格差の是正を求めました。後藤茂之厚生労働相は、正規・非正規とも女性の賃金は男性より2割も低いのにまるで高い水準かのように答弁。山添氏は、男女格差14%のEU(欧州連合)で賃金透明化の指令案を発表したことを示し、「日本は正社員同士でも25%も格差がある。透明化は日本こそ必要だ」と求めました。しかし、岸田首相は「情報公表のあり方を考えたい」と述べるだけでした。
気候危機打開
削減目標 引き上げ要求
11月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、「グラスゴー気候合意」で世界の気温上昇を1・5度に制限するための決意を参加国の総意として確認しました。世界的に石炭火力発電の全廃が焦眉の課題になるもと、日本共産党は、気候危機打開にむけて論戦を繰り広げました。しかし、岸田政権はここでも後ろ向きの姿勢を鮮明にしました。
志位氏は「日本が2030年度も電源の19%を石炭火力発電に頼り、九つもの石炭火力発電の新増設を進めることは、1・5度以下と根本的に矛盾する」と迫りましたが、岸田首相はまともに答えませんでした。
また田村氏は、COP26で46の国と地域が石炭火力の「廃止宣言」に賛同したとして早急な廃止を要求。しかし、岸田首相は「日本は日本の取り組みを進めている」と開き直りました。
宮本徹議員は15日の衆院予算委員会で、世界が10年度比で45%の二酸化炭素(CO2)削減目標を掲げる中、日本が13年度比の数値を使っていることを追及しました。山口壮環境相は「10年度比に直すと41・6%になる」と答弁。宮本氏が削減目標の引き上げを迫ると、岸田首相は「全ての国に等しく対応を求めているものではない」と居直りました。
沖縄県民の願いを代弁
強権的政策の転換 基地縮小・撤去を
「県民は平和憲法の下で基本的人権の保障を願望し、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでいる」―。14日の衆院予算委員会で赤嶺政賢議員の声が響きました。1972年の沖縄の本土復帰を前に、当時の琉球政府(屋良朝苗主席)がまとめた「屋良建議書」の一節です。赤嶺氏は、戦後米軍占領下で住民の土地を強制的に奪ってつくられた国際法違反の米軍基地が今に引き継がれ、県民の命と安全を脅かしていると追及し、基地の縮小・撤去は政府の責務だと岸田首相に迫りました。
赤嶺氏は、沖縄県の玉城デニー知事が辺野古新基地建設の軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更を不承認としたことに対抗し、防衛省沖縄防衛局が国土交通相に行政不服審査を請求した問題を追及しました。岸信夫防衛相が、国交省から防衛省に12月現在で10人、延べ35人の職員が出向していることを明らかにしたことに、赤嶺氏は「中立公正な審査が行われるはずがない」と批判しました。
赤嶺氏は、戦没者の遺骨が眠る土砂を埋め立てに使い、801億円という巨額の埋め立て工事費を補正予算に計上していることを批判。安倍・菅政権以上に強硬な姿勢だとして、強権的な沖縄政策を転換し基地の縮小・撤去に取り組むよう求めました。