2021年12月10日(金)
主張
スーチー氏ら判決
民主主義を葬る弾圧許せない
ミャンマー国軍が設置した特別法廷は6日、国民民主連盟(NLD)政権の指導者アウンサンスーチー氏とウィンミン大統領に禁錮4年の有罪判決を言い渡しました。クーデターで権力を握った軍事政権とたたかう指導者に対する無法な弾圧です。国連のバチェレ人権高等弁務官が「政治的動機に基づく見せかけの裁判」と非難したのをはじめ各国政府や人権団体が厳しく批判しました。選挙で選ばれた正統な政権を葬ろうとする暴挙を許すことはできません。国際世論をこれまで以上に高めていく必要があります。
ミャンマー国民に連帯を
両氏は2月のクーデターで国軍に拘束されました。「罪状」は、軍事政権の不承認を国際社会に呼びかけて社会不安をあおったとすることなどです。武力による政権転覆への抵抗を有罪とする不当な判決です。裁判は非公開で、スーチー氏らの証言を含め審理の内容は一切明らかにされておらず、裁判の体をなしていません。
スーチー氏は、コロナ対策を怠った罪でも有罪とされたほか、無線機を違法に輸入した罪や汚職にも問われ、10件以上の訴追を受けています。今後次々に有罪判決を受ける恐れがあります。最高刑を合計すると禁錮100年以上になると伝えられ、政治生命を断とうとする狙いは明らかです。
判決の前日には最大都市ヤンゴンで、軍事政権に抗議するデモに軍の車両が突っ込み、多数の死傷者を出しました。国軍はこれまでも平和的なデモに発砲して市民の命を奪ってきました。人権団体の集計によると、クーデター後、1万人を超す市民が逮捕され、1300人以上が殺害されています。
軍事政権は、NLDが圧勝した昨年11月の総選挙の無効を宣言し、NLDを解党する方針です。すでにNLD政権の幹部らに禁錮75年、20年など異常な長期刑が言い渡されています。
しかし、手段を選ばない弾圧にもかかわらず市民の抵抗はやみません。ミャンマー国民のたたかいに国際社会が連帯を強めていくことが重要です。
国連安全保障理事会は先月、総選挙1年にあたって報道機関向けの声明を発表し、直ちに暴力を停止し市民の安全を確保するよう求めました。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、事態解決に向けた仲介に協力しない軍事政権首脳が10月の首脳会議に出席することを認めませんでした。孤立は明らかです。国軍はただちに弾圧をやめ、NLD政権の原状回復を求める国民の意思に従って平和的解決に踏み出さなければなりません。
日本はODAを中止せよ
援助の実態が不明な中国を除けば日本はミャンマーにとって最大の経済援助国です。国際世論を強める上で役割は重要です。
日本はクーデター後、新規の政府開発援助(ODA)を停止しましたが、実施中のODAは中止していません。政府は「このままの状況が続けばODAを見直さざるを得ない」との姿勢ですが、いつまでも判断を先延ばしすることは軍事政権に手を貸す行為です。
ミャンマーのODA対象事業では国軍系企業が利益を得ています。弾圧を続ける国軍に日本の公的資金が流れることがあってはありません。実施中の事業を含めてODAを停止すべきです。