2021年12月7日(火)
中国 独自の民主主義 強調
「人民が判断」というが…
中国政府は、米国が9日からの「民主主義サミット」に台湾を招待したことに「一つの中国」の原則に背くと反発するとともに、民主主義について独自の考えを展開しています。
中国政府は4日、「中国の民主」と題した白書を公表しました。同白書は「中国式民主主義」の特色と成果を強調する内容。国務院新聞弁公室の徐麟(じょ・りん)主任は同日の記者会見で、米国の「民主主義サミット」について「米国は自らを『民主主義の指導者』と呼んでいるが、実際にはさまざまな制度の国を抑圧している」などと批判しました。
習近平国家主席は10月に開かれた党中央の会議で、「民主主義は全人類の共同の価値だ」と強調。一方、ある国が民主かどうかについて、(1)「人民に投票権があるかどうか」よりも、「人民が広く参加する権利を持っているかどうか」を見るべきだ(2)「権力の運用プロセスが民主的かどうか」よりも、「権力が人民の監督や制約を受けているかどうか」を見るべきだ―などの独自の基準を示しました。その上で、「ある国が民主主義かどうかは、その国の人民が判断する。少数の国が判断すべきものではない」と西側諸国をけん制しました。
4日発表の白書も習氏の演説内容を盛り込み、「民主は多様であり、中国の民主の花はきらびやかに咲き誇っている」などと自賛しました。
厳しい監視下
中国のある元大学教員は習氏の発言について「民主主義が全人類の共同の価値と認めざるを得なくなったことは重要だ」としながら、「中国の民主主義は、党や政府によるコントロール下での民主主義だ。厳しく管理・監視されている。また、『人民が判断する』というが、中国の現状の民主主義が、本当に中国人民が求めているものなのか、検証する方法すらない」と指摘します。
11月に北京で実施された地方人民代表(地方議員に相当)選挙は、制度として18歳以上のすべての市民に選挙権がありました。ただ、立候補者は事実上、中国共産党や関連団体の推薦を受けた市民に限られました。政党などの推薦を受けない「独立候補者」14人が立候補を宣言したものの、当局から行動制限などの圧力を受け、選挙活動もできず、立候補申請すらできませんでした。
立候補できず
選挙後、独立候補者の1人は本紙に「人民代表選挙の候補者は事前に選ばれており、人民はそこから投票する仕組みだ。独立候補者は人民のために働こうと立候補を宣言したが、申請することすらできなかった。人民が政治に参加する権利があるとは思えない。どこに民主主義があるのか」と憤りました。
米国の「民主主義サミット」は、米国と世界の「民主主義の回復」を掲げるバイデン大統領が主催。2月の外交政策演説で表明していました。トランプ前政権下で低下した米国の国際的地位の向上を目指すとともに、専制政治を強めるロシアや中国への対抗が念頭にあります。11月に110の招待国・地域を発表。米国の勝手な招待基準で異例の国際会議ともいわれています。
(北京=小林拓也)