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2021年11月22日(月)

主張

介護保険の負担増

痛みを強いる改悪を中止せよ

 特別養護老人ホームなどの利用料が8月から跳ね上がった高齢者が相次いでいます。介護保険の仕組みが改悪され、低所得者が対象の食費・居住費の軽減措置が縮小されたためです。費用が2倍になった人も少なくありません。コロナ禍で暮らしが傷んでいるさなかに、容赦なく負担増を強いるやり方に利用者・家族の不安と怒りが広がっています。経済的理由から施設に入ることをあきらめる人が続出するおそれもあります。安心の介護の土台を掘り崩す制度の改悪は中止・撤回しかありません。

低所得者の暮らしを直撃

 改悪されたのは、住民税非課税世帯の人の食費・居住費を軽くする「補足給付」制度です。

 改悪の一つは、食費負担の引き上げです。特養や老人保健施設、介護療養型医療施設などに入所している低所得者(年金収入月10万円超)の負担を月2万円から4万2千円に引き上げました。ショートステイの食費負担は、全ての住民税非課税世帯で1・5~2倍に値上げとなりました。

 もう一つの改悪は、資産要件の見直しです。「補足給付」の対象となる預貯金額を「1000万円以下」から、収入の区分に応じて「500万~650万円以下」に変えました(単身の場合)。「補足給付」を利用できなくなると、年金収入80万円以下の場合、食費・居住費の負担が月6万6千円も一気に増えることになります。厚生労働省によれば、改悪の影響を受ける人は約27万人にのぼります。

 「補足給付」は2005年の介護保険の改悪で、食費・居住費を全額自己負担にした時、厚労省が「低所得者に配慮」するといって導入した仕組みです。ところが、自民・公明政権は使える要件を厳しく絞り込む改悪を繰り返し、利用者・家族に経済的な苦難を押し付けてきました。「配慮」という言葉は完全に消えうせています。

 負担増になった人の家族からは「月約10万円の母の年金がなくなってしまう」「生活費の負担も増えるなか、どこを削ればいいのか」と悲鳴が上がっています。コロナ禍で仕事を失ったり、収入が減ったりした人の中には、親を施設で介護している人が数多くいます。苦境にある人に追い打ちをかける「補足給付」改悪に全く道理はありません。岸田文雄政権は、中止・撤回に踏み切るべきです。

 介護保険では、改定のたびに上がる保険料が国民を苦しめています。厚労省は今月、保険料滞納によって預貯金などを差し押さえられた65歳以上の人が2万1578人にのぼり(19年度)、初めて2万人を超えたことを発表しました。年金を年18万円以上受け取っている65歳以上の人は年金から保険料が天引きされるため、滞納して差し押さえとなった高齢者の圧倒的多数は、無年金者や極めて少ない年金の受給者です。

利用料・保険料の軽減を

 保険料を滞納した場合は、原則1割の利用料負担がいったん全額自己負担になるなど過酷な罰則があります。経済困難にある人が必要な介護を受けられない仕組みは見直さなければなりません。

 利用料負担も収入によって最大3割まで引き上げられ、国民は保険料・利用料の双方に苦しんでいます。負担増を許さず、引き下げへの道を開くとともに、減免制度の拡充・創設が緊急に必要です。


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