2021年11月4日(木)
主張
文化の日
苦境打開へ政府は責任果たせ
きのうの「文化の日」は、映画館や劇場、コンサート会場に足を運んだ人も多いのではないでしょうか。けれども新型コロナ危機のもと、日本の文化・芸術は戦後最大の困難に直面しています。
昨年2月の安倍晋三首相(当時)によるイベント「自粛」要請以後、音楽や演劇、伝統芸能をはじめ多くのジャンルで公演の中止や延期を強いられました。公演を再開してからも入場者数や収容率の制限がかけられたため、芸術家や芸術団体の収入は激減しました。
使い勝手悪い政府の対策
文化・芸術関係23団体でつくる「文化芸術推進フォーラム」が今年2~4月におこなった調査によると、2020年の芸術活動による事業収入は、19年と比べ、実演芸術のほとんどのジャンルで50~80%の減少でした。映画界も20年の1年間の興行収入は、19年比で45・1%減となりました。
苦境は今も続きます。ぴあ総研が9月末に発表したライブ・エンターテインメント市場規模の推計によると、21年も19年比で56%減の2787億円にとどまる見通しです。音楽は19年比で62%減、演劇やダンスなどその他のステージも42%減の見込みです。
文化芸術推進フォーラムのアンケートでは、21年の活動について、35・4%の芸術団体が「見込みが立たない」と答えています。芸術家やスタッフは絶望のふちに立たされています。
演劇関係の32団体で構成する「演劇緊急支援プロジェクト」が20年12月末から21年1月上旬におこなったアンケート調査では「コロナ禍で死にたいと思った事はありますか」という問いに32・5%が「ある」と答えています。
コロナ対策として、20年度の第2次補正予算や第3次補正予算でそれぞれ数百億円規模の補助金が支出されました。当初予算と合わせて年間2000億円規模になったのは初めてのことです。関係者の運動の成果であり、声を上げれば政治は動くことを示しました。
しかし、新たなイベントの開催が助成の条件であり、ある程度の体力がないと申請できず、使い勝手の悪さも指摘されてきました。
なかでも「継続支援事業」は、今年3月、審査中だった8600件のうち6000件が一気に不交付になりました。感染状況の悪化でキャンセルが相次ぎ、多額の払い戻しが必要になった例もあります。新たな公演を企画したことが逆に致命的な打撃となる本末転倒の事態が生じています。
どうしてこんなことが起きるのか。自公政権が「自粛」による損失への補償という考え方を拒んでいるからです。背景には第2次安倍政権以来の「稼ぐ文化」論があります。稼ぐ力のある文化・芸術だけを支えるなら、文化の多様性は損なわれます。新型コロナ危機から文化・芸術を守るために、政府は責任を果たすべきで、新自由主義路線からの転換は急務です。
支援の抜本的強化を
日本共産党は、さきの総選挙政策で「文化・芸術関係者に対して、新たなイベントへの支援にとどめず、『場と担い手』への支援を行うとともに、国費を数千億円単位で支出して『文化芸術復興創造基金』を抜本的に強化します」と訴えました。文化・芸術に携わるみなさんと力をあわせて、この公約実現のために全力をあげます。