2021年10月17日(日)
主張
米中対立と日本
緊張高める軍拡路線の転換を
目前に迫った総選挙(31日投票)では、米国と中国の対立激化をめぐり日本が進むべき針路が争点の一つとして問われています。自民党・公明党政権はバイデン米政権に追随し、日米同盟と日本の軍事力を一層強化し、中国に力で対抗する姿勢を鮮明にしています。中国が台湾周辺や尖閣諸島をはじめ東シナ海や南シナ海で執拗(しつよう)に繰り返している覇権主義的行動は断じて許されません。しかし、軍事と軍事の対決は軍拡競争の悪循環を招き、不測の衝突などから破滅的な戦争を引き起こしかねません。
「臨戦態勢の軍事行動」
今月2日と3日、日米英など6カ国の艦艇が沖縄南西の海域で共同訓練を行いました。米原子力空母ロナルド・レーガンとカール・ビンソン、英空母クイーン・エリザベスのほか、「ヘリ空母」と呼ばれる海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦「いせ」などが参加しました。米英の空母3隻が集結するのは異例です。これに対し中国は1日から4日に戦闘機など延べ約150機を台湾の防空上の監視空域(防空識別圏)に侵入させました。
沖縄の地元紙は、これらの動きを「沖縄周辺の海と空で、臨戦態勢と言えるほどの軍事行動が繰り広げられている」(琉球新報7日付)と指摘しました。
日米英など6カ国は4日から9日まで南シナ海に場所を移し、別の共同訓練も実施しました。岸信夫防衛相は、米英の空母などとの訓練は「『自由で開かれたインド太平洋』の維持・強化に向けた結束が不可逆的であることを示すもの」と強調し、「引き続き活発に共同訓練する」と表明しています(5日の記者会見)。
加えて重大なのは、3日に、「空母化」の改修を進めている海自のヘリ搭載型護衛艦「いずも」で、米海兵隊のステルス戦闘機F35Bの発着艦試験が行われたことです。岸防衛相は「日米の相互運用性の向上に資するもので、日米同盟の抑止力・対処力の強化にもつながる」(同)と述べ、米海兵隊のF35Bが空母化される「いずも」を使用することを明らかにしました。
自民党の選挙公約は、中国に対抗して「防衛力を大幅に強化する」とし、GDP(国内総生産)の2%以上という目標も念頭に軍事費の増額を目指すとしています。「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力」=敵基地攻撃能力の保有も進めるとしています。岸田文雄首相はすでに、「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の改定論議を始めるよう関係閣僚に指示しています。
岸田氏をはじめ自公政権内では、米国の戦争に自衛隊が参加・協力する安保法制を「台湾有事」で発動する可能性も公然と語られています。憲法違反の安保法制の廃止、敵基地攻撃能力の保有にもつながるF35など米国製兵器の大量購入や「空母化」などの大軍拡から軍縮への転換は喫緊の課題です。
憲法9条生かした外交へ
中国の覇権主義的行動に対しては、国際法に基づく冷静な外交的批判が何より重要です。「中国包囲の軍事的なブロックをつくるという排他的アプローチではなく、中国も包み込む形で地域的な平和秩序をつくっていく包括的なアプローチが大切」であり、「地域と世界の平和に貢献する、憲法9条を生かした外交」(日本共産党の総選挙政策)こそ必要です。