2021年10月14日(木)
主張
首相の国会答弁
疑惑にフタの姿勢変わらない
3日間にわたる衆参両院本会議の代表質問で、金権腐敗疑惑や政治モラル崩壊に向き合わない岸田文雄首相の姿勢が浮き彫りになりました。岸田氏は所信表明演説で一連の疑惑には一言も触れませんでした。代表質問で具体的に追及されても再調査などを拒み続けました。安倍晋三元政権から菅義偉前政権に続く国政私物化や「政治とカネ」の問題の解明は、民主主義と政治の信頼に関わる大問題です。真相解明を求める世論に逆らう岸田政権には、国民の願う政治は実現できません。
「森友」再調査を否定
国有地が破格の安値で払い下げられ、それに絡んで公文書の隠蔽(いんぺい)や改ざんが行われた「森友学園」疑惑は、安倍政権時代の国政私物化の象徴です。公文書改ざんを強いられ自死に追い込まれた近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻・雅子さんは、「真実が知りたい」と裁判を起こしています。
代表質問で日本共産党の志位和夫委員長や小池晃書記局長をはじめ野党議員は、雅子さんが再調査を求めて首相に送った手紙を取り上げ、認識をただしました。首相は、「拝読した」とはいったものの、再調査をするとは明言しませんでした。それどころか、財務省の調査は徹底的に行われ、同省は非を認めたなどと主張しました。
財務省が2018年にまとめた調査報告書は、不十分な内容で、真相解明にはほど遠いものです。今年開示された俊夫さんが残した「ファイル」には、当時の理財局長・佐川宣寿氏が直接改ざんを指示したなどと、報告書にはない新事実がありました。再調査を受け入れない理由は全くありません。
岸田首相は、加計学園の獣医学部開設問題についても、「オープンなプロセスで検討が進められた」と正当化しました。安倍元首相が関わる「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)問題でも、再調査を拒否します。甘利明自民党幹事長が口利き・金銭疑惑について国会での説明を拒んでいることについては「自身が判断すべき」と人ごとです。河井克行元法相夫妻の大規模買収事件で自民党本部が提供した1億5000万円の巨額資金についても再調査には応じません。
岸田首相は、自民党総裁選の際、「森友」疑惑について再調査を示唆しましたが、すぐに引っ込めました。安倍氏への忖度(そんたく)が指摘されています。実力者の顔色をうかがう首相を国民は信頼できません。
岸田氏は総裁選で「信なくば立たず」と繰り返しました。しかし、重大疑惑にフタをし続ける岸田首相の態度は、「安倍・菅政治」と1ミリも変わりません。「民主主義の危機打開」など実現できません。
政権交代で政治刷新
岸田内閣の支持率は、政権発足後、歴代政権に比べて低迷しています。なかでも甘利幹事長の起用を評価しないとの回答が54%を占める(「毎日」)ように、政権への不信はあらわです。
いま国民が望んでいるのは「安倍・菅政治」の「負の遺産」の清算です。野党の共通政策は、「権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する」を柱の一つにして、真相究明を行うことを明記しています。政治の中身を変えるには、政権交代を実現するしかありません。