日本共産党の志位和夫委員長が12日の衆院本会議で行った、岸田文雄首相に対する代表質問は次のとおりです。
森友疑惑の再調査、学術会議の任命拒否――総理の政治姿勢の基本を問う
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私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。
総理は、所信表明で「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、丁寧な対話をしていく」とのべました。そこで伺います。
森友疑惑で公文書改ざんを苦に自ら命を絶った赤木俊夫さんの妻・雅子さんは、10月7日、総理に手紙を送り、「正しいことが正しいと言えない社会はおかしい」と訴え、「第三者による再調査で真相を明らかにしてください」と求めています。総理は、この声をどう受け止めますか。再調査をかたくなに拒否している理由は何ですか。
日本学術会議の梶田隆章会長は、9月30日、談話を発表し、6名の任命が拒否され、理由さえ説明されない状態が長期化していることは、「科学と政治との信頼醸成と対話を困難にする」と訴えています。総理は、この声をどう受け止めますか。違憲・違法の任命拒否を続ける理由を説明していただきたい。
自分にとって都合の悪い声を無視する態度では、「信頼と共感」の政治をつくることは決してできません。答弁を求めます。
新型コロナ――従来の対応の厳しい反省と切り替えを求める
この間、新型コロナの感染爆発、医療崩壊が起こり、多くの人々の命が失われました。総理は、「これまでの対応を徹底的に…検証します」とのべましたが、私は、次の三つの点で、従来の対応の厳しい反省と切り替えが必要だと考えます。
科学を無視した対応を根本から改めよ
第一は、科学を無視した対応を根本から改めることです。
厚生労働省は、昨年5月、「PCR検査を広げると医療崩壊が起こる」という内部文書をばらまいて、検査を抑制してきました。しかし、検査を怠り、とくに無症状の感染者に対する検査戦略を持たなかったことが、医療崩壊につながったことは明らかではありませんか。
オリンピック・パラリンピックの開催強行は、科学を無視した政治の最たるものです。一方で、人類最大のお祭りをやりながら、他方で、国民に自粛を求めても説得力はありません。五輪開催を強行したことが感染爆発の一因となり、多くの犠牲者を出したことへの痛切な反省が必要ではないでしょうか。
新規感染者が減少している今こそ、ワクチン接種と一体に、大規模検査によって感染の火種を消していく、科学の基本に立った取り組みが必要です。「誰でも、何度でも、無料で」PCR検査が受けられる体制をつくることこそ、コロナから命を守りながら、経済・社会活動を再開する最大のカギだと考えますが、いかがですか。
「医療・公衆衛生 再生プログラム」を提案する
第二は、40年来の医療と公衆衛生を切り捨ててきた政治を、根本から切り替えることです。日本共産党は、医療崩壊を二度と繰り返さないために、次の「医療・公衆衛生 再生プログラム」を提案しています。
この間、感染症の入院ベッドも、保健所も、半分に減らされてしまったことが、医療崩壊につながりました。国の予算をそれぞれ2倍にして、抜本的拡充に切り替えるべきではありませんか。
医師数の抑制を続けた結果、日本の医師数は先進国の平均に比べて14万人も足りません。医師削減計画を中止し、増員に切り替えるべきではありませんか。
政府は、全国400の公立・公的病院をリストアップして統廃合を進め、消費税増税分を財源にして、20万人分の入院ベッドを削る、とんでもない計画を進めています。きっぱり中止し、拡充に切り替えるべきではありませんか。
コロナで傷ついた事業と暮らしへの支援を
第三は、コロナで傷ついた事業と暮らしを支援することです。まともな補償が行われなかったために、コロナによる倒産と廃業が急増し、飲食業、宿泊業の3割以上が廃業を検討しているという深刻な実態が明らかになっています。政府の責任はきわめて重いと考えますが、総理にはその自覚はありますか。
持続化給付金・家賃支援給付金の第2弾を支給し、コロナ終息まで継続的に支給することを強く求めます。
コロナで収入が減った方々を、中間層も含めて広く対象にして、1人10万円を基本に、「暮らし応援給付金」を5兆円から6兆円の規模で支給することを提案します。
総理の答弁を求めます。
弱肉強食の新自由主義をやめ、命と暮らしを何よりも大切にする政治へのチェンジを
総選挙で、日本共産党は、自公政治は終わりにして、国民みんなが安心して希望をもって暮らせる新しい日本をつくるため、四つのチェンジを訴えてたたかいます。
第一は、弱肉強食の新自由主義をやめ、国民の命と暮らしを何よりも大切にする政治へのチェンジです。
「トリクルダウン」から「ボトムアップ」への根本的な切り替えを
総理は、「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」を唱えていますが、そもそも「成長と分配の好循環」というスローガンは、安倍首相が幾度となくこの場で繰り返してきたスローガンであり、「アベノミクス」の三番煎じのスローガンではありませんか。
「アベノミクス」がもたらしたものは何だったか。貧富の格差の劇的な拡大でした。この9年間で日本の大富豪の資産は6兆円から24兆円に4倍に膨れ上がりました。一方、働く人の実質賃金は22万円も減りました。大金持ちがもうかれば庶民にまわってくるという「トリクルダウン」は起こらなかったのです。総理はこの事実をお認めになりますか。
「ボトムアップ」=庶民の暮らしの底上げで経済を良くしていく道への根本的な切り替えが必要だと考えますが、いかがですか。
最賃1500円、人間らしく働けるルール、学費半減、消費税5%への減税を
中小企業への十分な支援とセットで、最低賃金を時給1500円に引き上げ、全国一律最賃制を確立するべきではありませんか。
派遣・パート・アルバイトで働く人がコロナで切り捨てられ、とくに女性と若者がひどい犠牲を強いられています。1990年代以来の労働法制の規制緩和を根本的にあらため、人間らしく働けるルールをつくるべきではありませんか。
多くの学生が食事にも事欠くような困窮に陥っています。高すぎる学費を半分にし、返済不要の奨学金を抜本的に拡充し、入学金制度は廃止すべきではありませんか。
富裕層と大企業に対する優遇税制を廃止し、法人税率を中小企業をのぞいて安倍政権以前の28%に戻し、所得税・住民税の最高税率を65%に引き上げるべきです。そして消費税は5%に減税することを強く求めます。
「新自由主義からの転換」という総理の言葉が本物ならば、どれもこれも当たり前のことばかりではありませんか。答弁を求めます。
気候危機を打開し、地球を守る政治へのチェンジ
第二は、気候危機を打開し、地球を守る政治へのチェンジです。
世界でも日本でも、気候危機は待ったなしの大問題です。危機感をみんなで共有して緊急に行動しなければ地球の未来はありません。総理にその認識はありますか。
政府は、「2050年カーボンゼロ」を掲げていますが、肝心の2030年度までの二酸化炭素の削減目標は10年度比で42%、世界の先進国の50%~60%削減という目標に比べて、あまりに低すぎると思いませんか。
この期に及んで九つの大規模石炭火力発電所の新増設を進めているのはどういうわけか。30年までに石炭火力はゼロにするべきではありませんか。
原発頼みを続けていることも重大です。一たび大事故を起こせば最悪の環境破壊を引き起こす原発を、環境を口実に続けるほど愚かな政治はありません。原発をただちにゼロにする政治決断が必要ではありませんか。
日本共産党は、「気候危機を打開する2030戦略」を発表し、省エネルギーと再生可能エネルギーの普及で、2030年までに二酸化炭素を最大60%削減する大改革を提案しています。この道を進めば、新たな雇用を増やし、日本経済を持続的に発展させることもできます。わが党の「2030戦略」に対する総理の見解を求めます。
ジェンダー平等の日本へのチェンジ
第三は、ジェンダー平等の日本へのチェンジです。
コロナ危機は、「ジェンダー不平等・日本」の矛盾を浮き彫りにしました。非正規で働く多くの女性が仕事を失い、ステイホームが強いられるもとでDV被害が急増しました。ところが総理の所信表明には、驚くことに、この大問題への言及が一言もありませんでした。これは一体どういうわけか。
日本の男女賃金格差は世界でも異常です。政府統計をもとに試算をすると、生涯賃金で1億円近い格差があります。企業に男女別平均賃金の公表と、格差是正計画の策定・公表を義務づけ、政治の責任で格差を解消すべきだと考えますが、いかがですか。
日本は世界でただ一つ、法律で夫婦同姓を強制している国です。選択的夫婦別姓は急務です。総理は「引き続き議論する」と言いますが、選択的夫婦別姓反対の急先鋒(せんぽう)に立つ人物を党の政調会長につけました。選択的夫婦別姓を実現する意思があるのか、ないのか、はっきり答弁していただきたい。
憲法9条を生かした平和外交へのチェンジ
「核抑止」という虚構から抜け出し、核兵器禁止条約に署名・批准を
第四は、憲法9条を生かした平和外交へのチェンジです。
総理は、「核兵器のない世界を目指す」と言いながら、核兵器禁止条約を拒否する態度をとっています。政府は、「核抑止の信頼性を損なう」ことを拒否の理由にしていますが、「核抑止」とは何か。それはいざという時には、核兵器を使用することを前提にした議論です。いざという時には、広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすこともためらわないという議論なのです。唯一の戦争被爆国の政府が、こんな議論にしがみついているのは、あまりにも恥ずべきことだと考えませんか。
日本共産党は、「核抑止」という虚構から抜け出し、核兵器禁止条約に署名・批准することを、強く求めるものであります。
「普天間基地の早期返還」という言い分は崩壊――辺野古新基地建設の中止を
総理は、沖縄辺野古への米軍新基地建設を推進するとのべました。
しかし、軟弱地盤の存在により、政府の試算によっても工期はさらに12年、実際にはどれだけかかるか誰にもわかりません。政府は昨年4月、沖縄県に設計変更を申請しましたが、さらなる環境破壊をもたらす設計変更が承認されるはずもありません。「普天間基地の早期返還のため」という政府の言い分は完全に崩壊しているのであります。総理、この現実を直視するべきではありませんか。
沖縄県民はこの四半世紀、一貫して新基地建設に反対の意思を示し続けてきました。「国民の声を真摯に受け止め」るというなら、辺野古新基地建設は中止し、普天間基地の無条件撤去に取り組むべきではありませんか。
総選挙で、政権交代を実現し、新しい政権をつくるために全力をあげる
四つのチェンジを実行するためには、政権交代が必要です。
日本共産党は多くの国民のみなさん、他の野党のみなさんと力をあわせて、総選挙で、必ずや政権交代を実現し、新しい政権をつくるために全力をあげる決意を表明して、質問を終わります。