2021年9月29日(水)
主張
緊急事態宣言解除
今こそ命守る備え抜本強化を
政府は、27都道府県に出されていた新型コロナ感染症対策の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を30日の期限をもってすべて解除することを28日に決めました。菅義偉首相は同日、衆参両院議院運営委員会にようやく出席しました。しかし、東京五輪開催を強行して感染「第5波」を招き、医療崩壊を起こした自らの失政に何の反省も述べず、無責任さが際立ちました。
専門家は冬に感染が急増する「第6波」を警告しています。感染爆発を引き起こさない備えを強める政治の実現が急がれます。
医療崩壊起こさぬために
退任間近となった菅首相は議運委で、ワクチン接種の進展を自慢するばかりでした。五輪中止を求める医療関係者の声を無視し、根拠のない楽観論を振りまいて感染を急拡大させた責任は重大です。
医療体制のひっ迫に際して菅政権が打ち出した「原則自宅療養」の方針は、患者を自宅に放置する医療放棄そのものです。多くの人が病院に入れず、自宅で亡くなりました。
菅首相は28日の議運委でもこの方針の撤回を表明しませんでした。命を軽んずる姿勢です。
症状に応じて必要な医療をすべての患者に提供する体制を整えることが政治の責務です。そのために政府がイニシアチブを発揮して、臨時の医療施設を大規模に増設することが急務です。
新規感染者数が減少傾向にある今こそ、二度と医療崩壊を起こさない施策を講じる時です。入院病床をさらに確保し、在宅医療を支える体制を強めることは緊急の課題です。医療機関への減収補填(ほてん)と財政支援、保健所の体制強化も欠かせません。
検査能力に余裕が生まれているこの時期に、ワクチン接種と一体に、大規模検査を具体化することが大切です。企業、大学などが行う自主的検査に国が補助金を出して支援することが求められます。
飲食店に出されていた酒類提供の一律停止(宣言地域)などの営業制限について政府は段階的に緩和する方針です。まともな補償がない営業制限が長期にわたり、飲食店、宿泊業者の多くが廃業を検討しています。制限の緩和をもって支援を縮小することは許されません。
コロナ危機で影響を受ける中小・零細事業者が営業を続けられる十分な補償をただちに行うことも政治の責務です。持続化給付金、家賃支援給付金はコロナ危機を乗り越えるまで継続的に支給すべきです。コロナで生活が困窮している人への一律10万円の給付も実施して傷ついた営業と暮らしを立て直すことが不可欠です。
新しい政治への転換こそ
コロナ危機に際して国民の声を聞かず、国民に説明しない菅政権の態度は常軌を逸しています。緊急事態宣言の発令、延長などに際して菅首相が国会に報告すべき機会は今年20回以上ありましたが、首相が議運委に出席したのは今回を含めて3回だけです。
菅政権は、野党が憲法53条に基づいて要求した臨時国会の開催を拒み続け、補正予算を組んで対策を強めることを怠りました。自民党総裁選の4人の候補者はいずれも菅政権のコロナ大失政に反省がありません。命を守る新しい政治へ転換が必要です。