しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年9月10日(金)

「従軍慰安婦」の「従軍」削除

政府の圧力のもと変更

中学・高校の歴史教科書記述

 中学・高校教科書の「従軍慰安婦」や「強制連行」などの記述について教科書会社5社が訂正を申請し、文部科学省が承認したことが9日までに分かりました。自公政権は4月にこれらの用語は適切でないとする政府答弁書を閣議決定し、それに基づいて教科書記述を書き換えるよう圧力をかけていました。


写真

(写真)「いわゆる従軍慰安婦」との記述がある現行の中学歴史教科書。訂正によりこの言葉がなくなります

 訂正申請があったのは中学・高校の歴史教科書など計29点。「従軍慰安婦」の「従軍」を削除したり、「強制連行」の用語を変えたりしました。文科省は8日付で承認しました。

 ある社は、「いわゆる従軍慰安婦」の言葉を残し、注記に「日本政府は、『慰安婦』という語を用いることが適切であるとしている」と書く訂正をしました。同社は当該の記述について「外務省公式文書からの引用などであるため、注記での対応で問題ないと判断した」としています。

 政府は4月、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の質問主意書に対する政府答弁書で、「従軍慰安婦」の「従軍」という言葉や、朝鮮人の「強制連行」「強制労働」という用語は適切でないと閣議決定。その後、国会での維新議員の教科書記述に関する質問に、萩生田光一文科相は「今後そういった表現は不適切になる」「検定基準に則した教科書記述となるよう適切に対応する」などと答えていました。

 これを受け、文科省は5月、関係する教科書会社を対象にオンラインで「説明会」を開き、事実上、訂正を求めていました。

 教科書検定基準は2014年の改悪で「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的見解」に基づいた記述を合格条件にしています。

学問の自由踏みにじる

 子どもと教科書全国ネット21の鈴木敏夫事務局長の話 教科書会社が自主的に訂正した形をとっていますが、国会での政府答弁や文科省の臨時説明会などの圧力によって訂正させられたのは明らかです。歴史用語までを政府が決定して教科書に押し付けるのは学問・研究の自由を踏みにじるものです。教科書は学問の成果と教育的見地から書かれるべきで、政府が政治介入して書き換えさせるなど許されません。政府見解に基づく記述にすべきとした教科書検定基準は撤回するべきです。

軍の関与・強制性の否定狙い

政府答弁書

 政府が4月に閣議決定した答弁書は、「従軍慰安婦」という用語は「軍により『強制連行』された」という「誤解を招くおそれがある」とし、「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」としました。日本軍「慰安婦」への軍の関与・強制性を否定しようというものです。しかし、軍の関与や強制性はこれまでの研究によって明らかになっています。答弁書で政府が「継承している」とした1993年の河野官房長官談話も、軍の関与と強制性を認めています。

 政府は別の答弁書で、朝鮮人の「強制連行」「強制労働」についても、「『強制連行』又は『連行』ではなく『徴用』を用いることが適切」、「『強制労働』と表現することは、適切ではない」としました。


pageup