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2021年8月21日(土)

主張

パラ・学校観戦

子どもたちを危険にさらすな

 24日からの東京パラリンピックで、小中高生らが学校ごとに観戦する「学校連携観戦プログラム」を実施できるとした政府や東京都などの方針に批判が相次いでいます。東京五輪の際、コロナ感染の広がりで緊急事態宣言が出された都内などでは学校観戦は中止されました。コロナ感染状況は、五輪時よりはるかに深刻化しており、子どもを競技会場に動員するリスクはいっそう高まっています。菅義偉政権や小池百合子都知事は、子どもの命と健康を危険にさらす方針を撤回すべきです。

教育委員が反対を表明

 学校観戦をめぐる方針は16日、政府、都、大会組織委員会、国際パラリンピック委員会の4者協議が決定しました。「保護者等の意向を踏まえて自治体や学校設置者が希望する場合」は実施が可能というものです。一般の観客については、コロナ感染の急増をうけて「無観客」を決めました。なぜ子どもについては観戦可能なのか、納得できる説明はされていません。

 東京五輪開幕日の7月23日に1359人だった都内の新規感染者は、いまや5000人を超えています。専門家は「制御不能」と危機感を示しています。学校観戦を機にクラスターが発生しない保証はどこにもありません。

 18日の都教育委員会の臨時会では、都の方針に対して出席した委員4人全員が反対を表明する異例の事態となりました。感染者急増のもとでのリスクを懸念する意見や、外出や帰省の自粛が呼びかけられているのに、学校観戦はマイナスのアナウンス効果になるとの指摘が出されたといいます。

 政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長も「五輪開始時と比較すると今の方が、(感染の)状況はかなり悪くなっている。観客を入れるとはどういうことかを考えていただければ、当然の結論になる」(18日の参院内閣委員会)と学校観戦に疑問を示しています。

 ところが、菅政権も小池知事も実施する考えを変えません。「しっかりした対策を講じる」とし、貸し切りバス利用や「密」を避ける座席配置などを徹底するとしています。しかし、多くの子どもを一堂に集めて移動させること自体、人との接触機会を減らすことが必要な感染対策とは逆方向です。

 これまでかかりにくいとされた子どもへの感染拡大も顕著です。変異したデルタ株の影響とみられます。学校でのクラスター発生も少なくありません。夏休み明けの感染の広がりが心配され、首都圏では夏休み延長を決めたり、学校行事の延期や中止を求めたりする動きも出ています。デルタ株への警戒と対処が極めて重要な時期に、学校観戦の実施は構わないというのは、事態を楽観視させる誤ったメッセージに他なりません。

 学校観戦をキャンセルする自治体も次々生まれています。しかし、参加の是非を自治体や学校、保護者に委ねるとしているのは無責任です。政府として学校観戦の取りやめを決定すべきです。

パラ大会中止の決断こそ

 感染爆発の中でのパラリンピック開催はあまりに無謀です。政府は、期間中に1日最大270人の医師・看護師の体制を想定しており、コロナ対応の医療に負荷をかける危険も明らかになりました。パラリンピックは中止し、コロナ対策に力を集中すべきです。


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