2021年8月19日(木)
アフガン 人権後退懸念
国際刑事裁、管轄権行使も
女性・子どもへの暴力拡大の報告
イスラム組織タリバンがアフガニスタンの実権を掌握し、かつての人権侵害がまかり通る統治体制への後戻りに国際的な懸念が高まっています。タリバンは首都制圧3日目となる17日、初の記者会見を開き、懸念の払拭(ふっしょく)を図りました。一方、国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)は、処刑や女性・子どもに対する迫害など暴力の拡大が報告されていると指摘しています。(鎌塚由美)
ICCのカーン主任検察官は17日、アフガン情勢について声明を出し、暴力の激化に懸念を示し、全ての当事者に国際人道法の順守を訴えました。
同検察官は、暴力の主体については触れませんでしたが、拘束者や投降者が裁判を経ないで処刑される報復殺人や、女性や少女への迫害、子どもに対する犯罪が報告されていると指摘。これらの事件は、国際条約ローマ規程に基づく「国際人道法違反となる可能性がある」と述べました。
またアフガンでの戦争犯罪に関する捜査の実施を認めたICCの決定(2020年3月)に触れ、主任検察官は03年以降の「アフガン領内でのジェノサイド(集団虐殺)や人道に対する罪、戦争犯罪への法適用や捜査ができる」と改めて表明。必要に応じて管轄権を行使する考えを強調しました。
カーン氏は、「アフガンの人々はあまりに長く、不安定と危険な情勢に苦しんできた」と述べ、人命を守るあらゆる努力を訴え。イスラム教の聖典コーランの教えにも言及し、全ての紛争当事者に民間人の保護を含む、国際人道法の順守を求めました。
アフガンは03年にICCに加盟。20年のアフガンでの戦争犯罪捜査に関する決定では、タリバン、アフガン治安当局、米軍と米中央情報局(CIA)が捜査対象となりました。ICC非加盟のトランプ前米政権はその後、ICCのベンスダ主任検察官(当時)を制裁対象に指定し、報復しました。