2021年8月14日(土)
不安続きの自宅療養
子どもみながら妻看病し、自分も陽性…
新型コロナウイルス感染症の感染爆発に伴い、自宅療養を余儀なくされる人が急増しています。神奈川県川崎市の太田真さん(38)=仮名=の妻(40)は5日に新型コロナの陽性判定を受けて、自宅療養を続けています。真さんと7歳、8歳の2人の子どもは濃厚接触者に。真さんは子どもをみながら、妻を看病してきましたが、自らもせきなどの症状が出て10日に受けたPCR検査で陽性と分かりました。
妻に微熱や、のどの痛みなどの症状が出たのは4日。翌朝には40度を超える高熱が出て、その日近くのクリニックで受けた抗原検査で陽性でした。夜9時ころに保健所から電話があり、数分ほど体調について聞かれました。「細かいことは明日以降に」といわれたまま、6、7日と連絡がありませんでした。
その間、妻は解熱剤をのんでも熱は38~39度を推移。全身の痛みや呼吸のしにくさなどでぐったりして、水分をとることもままならない状態でした。
「血液中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターもなく、様子をみていて大丈夫なのか分からず、ずっと不安だった」と真さん。
6日には自身が入浴後に激しいめまいと吐き気で救急車を呼ぶ事態に。「自分が倒れるといろいろなことが手遅れになるかもしれない」との思いでした。救急隊員の診察を受け、疲れなどが原因では、といわれました。
自宅療養者の実態知って
医療の支援はなし 想定外連続にずっと不安
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妻の発症日から丸4日の8日。太田真さんは保健所からの電話を待っていられず自分から連絡しました。妻の容体を話し、パルスオキシメーターはいつくるのか聞くと、「これから手配する」と。
真さんは6日には、陽性者登録に必要な情報を自分で検索し、妻のLINE陽性者登録をすでにしていました。「結局、保健所が聞き取りをして正式に手続きしないと事が進まないことが分かった」といいます。
パルスオキシメーターが届いて、血中酸素飽和度を測ると入院が必要な「88」でした。あわてて「コロナ119番」にかけると、看護師につながるまでに1時間半。「妻の体を起こして壁に寄りかかると94」と伝えると、看護師から「一人でトイレに行けるか」と聞かれました。行けると答えると、「搬送は難しいので家でみてください。93以下になったら直接119番にかけて」といわれました。
真さんは「妻は軽症とされて、解熱剤、抗生剤をもらっただけ。他の医療の支援はなく、頼れる先もない。すごく心配だった」と話します。
その後、布団で山をつくり、上体を起こしてあおむけに寝かせると、数値は95から96で推移。熱は39度を超えるときもありますが、ほぼ37~38度。ゼリー飲料やおかゆなども少しずつとれるようになりました。2人とも嗅覚障害が出ているといいます。
10日に真さんが検査を受けたとき、医師から2人の子どもは、「症状がないと保険適用にならない」といわれ、検査を断念。子どもの検査について保健所は、医師と相談するようにと話しました。
「子どもは濃厚接触者なので、症状がなくても検査を受けられるようにすべきではないか」と真さん。11日には1人の子どもが38度の熱を出し、続いています。
この間の経過を振り返って「いろいろ困っても相談先が分からず、自分で調べてあれこれの窓口に連絡しましたが、どこもほぼ機能していない状態」と真さん。「自分が新型コロナにかかったらどういう扱いになるか、想定外の連続でした。思っていた以上に回復までの期間は長くかかり、体力も使います。想像しているようなサービスは受けられない現状です」
スマホの接触確認アプリ「ココア」についても、「私はずっと看病のため妻のいる部屋を出入りしていますが、ココアで接触ありとされたのは発症から3日目以降の6日と7日だけ。その有効性に疑問を感じている」と話します。
真さんは「行政には、自分たちのような状況に置かれている人への対応状況を細かく記録にとり、人数の発表だけではなく具体的な内容を情報開示するよう求めたい。その実態を多くの人に知ってほしい」といいます。
「国には、感染爆発の厳しい状況にあることを国民が広く共有できるように、真剣にとりくんでほしいです」
(西口友紀恵)