2021年8月12日(木)
香港の教員組合解散
中国政府の圧力受け
【北京=小林拓也】香港最大の教員組合で、民主派団体の「香港教育専業人員協会(教協)」は10日、解散を発表し、48年の歴史に幕を閉じました。7月末から中国の官製メディアなどが教協を攻撃する評論を次々と発表するなど圧力を強めたことが背景にあると見られています。
香港メディアによると、10日の記者会見で解散を発表した教協の馮偉華(ふう・いか)会長は「近年の社会や政治状況の変化と、最近の急変により、巨大な圧力を受け、厳しい危機に直面した」と指摘。「継続に向けて最大限の努力をしたが、前途が見えず、継続が難しくなった」と語りました。その上で、会員に対し長年の支持に感謝を表明し、「これからも教育の分野で貢献してほしい」と呼びかけました。
教協は、香港の中国返還前の1973年に、教員の権利を守るための団体として創設。民主派団体として、香港や中国本土の民主化運動を支援してきました。2012年に、政権側が中国国民としての愛国心を育成する「国民教育」の導入を狙った際には、学生と連帯して反対活動を行い、撤回に追い込みました。14年の雨傘運動や19年の反政府運動では、教育界によるストライキやデモを呼びかけるなど重要な役割を果たしました。
中国政府は、「学生らを洗脳して反政府活動に駆り立てた」などと教協を敵視。7月31日、中国の国営新華社通信や中国共産党機関紙・人民日報が「教協というがんを取り除かなければならない」と題する論評を発表。「反中と香港の混乱を助長」し、「香港に災いをもたらす震源地だ」などと批判しました。同論評を受け、香港政府教育局は教協との関係を停止すると発表するなど圧力を強めていました。
民主派政党・民主党の羅健熙(ら・けんき)主席は香港メディアに「教協の解散は非常に残念だ。教育界への過去の貢献に感謝する」と表明。香港記者協会は「香港が教協を失うことは痛恨の極みだ」と述べました。
香港中文大学の蔡子強(さい・しきょう)高級講師は「連鎖反応が起き、他の組織も解散を決めるかもしれない。市民社会の弱体化につながってしまう」と懸念しました。
人民日報系の環球時報は11日、教協の幹部らが警察の調査を受け、立件される可能性もあると報じました。