2021年8月2日(月)
主張
ミャンマー軍政
事態は深刻 直ちに原状復帰を
2月1日のミャンマー国軍によるクーデターから半年がたちました。人権団体によると国軍の弾圧による市民の死者は1000人近く、逮捕者は約7000人にのぼります。軍政下の混乱で行政や医療機関が機能を失い、新型コロナウイルスの感染が深刻さを強めています。国民民主連盟(NLD)政権の原状復帰には、もはや一刻の猶予も許されません。
国際社会の結束が急務
国連機関によると、国軍と武装抵抗勢力の武力衝突で住居を奪われた国内避難民は6月末までに23万人近くにのぼります。1カ月間で2倍近くに増えました。
コロナ感染者は6月下旬以降、急増し、国際的研究機関の集計で感染者は累計約30万人、死者は約9000人とされます。実態は把握できておらず、さらに悲惨とみられます。酸素濃縮器や救急車も不足しています。国際社会による国民への人道援助が急務です。
国軍は軍政の既成事実化を進めています。クーデター後、勝手に作り上げた「選挙管理委員会」は7月26日、昨年11月に行われた総選挙に不正があったとして無効を宣言しました。武力で選挙結果を否定した国軍に不正などと言う資格はありません。選管はNLDを解党する方針も示しています。
総選挙では与党のNLDが議席を増やし、改選議席の8割以上を獲得しました。軍政が長く続いたミャンマーでは2011年の民政移管後も、国軍が「指導的役割」を果たすとした憲法はそのままになっています。NLDは、国軍の特権を規定した憲法の改正を掲げて選挙に臨み、圧倒的な支持を得ました。民意は明確です。
民主的選挙で選ばれた政権をクーデターで転覆することは重大な国際問題です。国際社会が強い姿勢であたることは当然です。国連総会は6月18日にクーデターを強く非難する決議を採択しました。ミャンマーへの武器流入停止も各国に呼びかけました。
しかし一致した取り組みは実現していません。国連安全保障理事会は国軍の暴力を非難する議長声明を発表しましたが、法的拘束力を持つ安保理決議は中国、ロシアなどが同意せず、採択されていません。欧州連合(EU)は中ロが安保理の統一した対応を妨げたと批判しています。中ロはクーデターを非難せず、国連総会決議にも棄権しました。
中ロを含め一部の国が「内政不干渉」の名のもとにミャンマーへの踏み込んだ対応を避け、国際社会の足並みがそろっていないことは、国軍が無法行為をエスカレートさせる背景となっています。
軍を利するODAやめよ
日本はクーデター後、新規の政府開発援助(ODA)を停止しましたが、実施中のODAは続行しています。国軍系企業はODAの事業で利益を得ています。
茂木敏充外相が5月に「このままの状況が続けばODAを見直さざるを得ない」と述べたものの、その後も菅政権は様子見の姿勢を続けています。ミャンマーへのODA供与は「当該国における民主化、法の支配および基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う」とした政府の「開発協力大綱」にも反しています。菅政権は国軍のクーデターと人権弾圧を許さない断固とした態度を表明し、国際社会の結束に貢献すべきです。